現役時代×退職後 第13回 ■退職して気づいたこと
「何か新しいことをやろう。今までできなかったことをやろう。仕事に関係すること、趣味のことなんでもいい。」退職前にはそんなことを漠然と考えていた。そんな中、すでに退職していた友人や先輩にその後の生活についていろいろ話を聞く。いくつかの例を挙げてみよう。
「シニアボランティアで塾の教師になる人、現役時代に培ったマネジメント能力を買われて教師全員のまとめ役もこなしている。」
「趣味と健康維持を兼ねてゴルフ場のグリーンキーパーになる人、早朝からゴルフコースに出て健康的な生活を送っている。」
「現役時代からいろいろな資格取得に挑戦し、退職前に保育士の資格を取り保育園で働く人。」
「語学力を活かし前職とは無関係の外資系企業で働く人、建設現場勤務の経験を活かし海外で現地の施工会社を取り仕切る。」
「新たな体験を得るためにテーマパークのカストディアルキャスト(園内の清掃員で10代から60代と年齢層も幅広い)になる人、来園者から感謝されることもあり仕事に喜びを感じている。」
「現役時代にコツコツ貯めた知識をもとに本を執筆する人、すでに三作目を出版し文芸家として活動している。」
「旅行会社を通さず自力で海外旅行をする人、東南アジアなどを路線バスや鉄道を乗り継ぎ諸国を移動する。」
また本格的に趣味に勤しむ人も多い。ピアノ、バイオリン、フルートなど退職後初めて楽器を手にする人、大学でもう一度勉強をし直す人、料理や家事を夫婦で楽しむ人もいる。もちろん親の介護や孫の世話をする人など列挙すればいとまがない。
私の場合どうであろう。退職したからといって、すぐに人に言えるような生活が送れるわけではない。準備をしていなかったから、考えてみれば当たり前である。
現在は70歳になっているが、かつての仕事仲間からの紹介、依頼があり、街づくりに携わった経験を活かせる職を得ている。とはいっても仕事は現役時代とは大きく異なり自由になる時間がある。であればフルタイムで働いていた時と同じような生活をしていては余りにももったいない。
多くの人の話を聞いて感じたことがある。特別なことをするか否かには関係なく日常の中に何らかの新たな気づきがあること。また新しいことを始めるにしても過去の価値観や経験にとらわれず取り組むことが楽しいということである。そうか。毎日の生活の中でできることをやってみる。特別なことをやらなくても得ることも楽しみもあるはずだ。
これからは自分のペースでやればいい。大切なことは健康であること。いろいろなことに好奇心をもつこと。そして物事に対して謙虚な気持ちを持ち続けることである。現役時代に3K「きつい、汚い、危険」と言われてきた土木エンジニアの退職後の3K「健康、好奇心、謙虚」である。
2024.03.25 執筆Y