第4回 社会情勢の影響・働き方変化・リスキリング【2022年度シビルエンジニアの定年退職後の活動に関する意向・実態調査結果】
皆様こんにちは。
2007年度から5年ごとに継続して共通の設問を中心に調査してきましたが、それぞれの時代に合わせて追加した設問があります。今回は、2022年度調査で追加した設問の結果をお知らせします。
分析対象者
分析対象は、2022年度調査の全回答者です。
2022年度に追加した新たな設問と結果
前回調査は2017年度ですので、それから5年の間に社会情勢が大きく変化しています。
2018年、2019年と大きな台風や豪雨被害が続きました。気候変動の影響は今年の猛暑や山火事にも表れていますね。2019年末から世界に拡大した新型コロナウイルス感染症、2020年春には日本でも感染者が増え外出自粛になりました。2020年に予定されていた東京オリンピックは1年延期になりました。まだ感染症拡大がおさまらない中、2021年に東京オリンピックが開催されました。そして、昨年2022年2月、誰もが予想しなかったロシアのウクライナへの侵攻。現在もなお戦争状態が続いています。これらに伴い社会や経済も様々な影響を受けました。
ということで、「昨今の社会経済情勢変化の影響」を問う設問を追加しました。また、新型コロナウイルス感染症の影響で、外出や面会の自粛など社会生活にも大きな制限がありましたね。働き方もリモート会議やテレワークなど出勤せずに業務を行うような変化がありました。こちらについても「働き方の変化」の設問を設けました。
そして、ダボス会議(世界経済フォーラム年次会議)や岸田総理の発言でも話題になった「リスキリング(技術革新などに対応するため学ぶこと)」に関する設問を追加しました。
昨今の社会経済情勢変化の影響
社会経済情勢の変化による影響を業種別に見てみましょう。
どの業種も最も影響が大きかったのは「新型コロナウイルス感染症の拡大」でした。おおよそ3割が影響を感じています。ついで、「資材価格の高騰」となっています。「資材価格の高騰」や「円安」など経済への影響は、業務に直接関連がありますから無視できませんね。「ロシアのウクライナ侵攻」や「気候変動」の影響も共通して1~2割みられます。
一方、「影響がない」との回答も1~2割ほどありました。学校は企業や官庁より影響が小さいようで、「影響なし」の割合が3割です。
働き方の変化
働き方の変化を業種別、職種別にみてみました。
テレワークの実施割合で0以上を入力した方をテレワーク実施者とみなし、回答者数に対するテレワーク実施者数の割合をテレワーク実施率として計算しました。また、テレワークの実施割合を週5日に対する実施割合に換算しました。
どの業種、職種でもテレワークが実施されています。業種では、コンサルタント、鉄道、官庁・独立行政法人が多くなっています。職種では、研究職、行政職、企画職、技術職などが多くなりました。業種の建設業、職種の現業は、他の選択肢に比べて少なくなりました。また、テレワークの実施割合は、全体として週1回前後というところでした。業務の形態や仕組みなどから土木業界のテレワークの難しさが感じられます。
リスキリングへの対応
まず、リスキリングに対する意識を年齢別、業種別に見てみましょう。
年齢別では、35歳以上の方は半分以上が「多少」あるいは「とても意識している」という回答で、何らかの意識をしているようです。若年層では「リスキリングを知らない」が、70歳以上の高齢者では「全く意識していない」の回答が増えてきます。
業種別では、「意識している」方の割合は5割前後で大きな差はありませんでした。「リスキリングを知らない」との回答も2~3割ほどみられました。昨年2022年の新語・流行語大賞の候補になりましたが、まだ浸透していないようです。
リスキリングは、企業や組織が従業員に対し職業能力の再開発を行うことですので、企業・組織のリスキリングの実施状況はどうなっているでしょうか。また、あわせて個人のリスキリング実施状況を聞いてみました。
電力、ガス、道路などのその他の企業・組織では半数弱が実施しているようですが、建設業、コンサルタント、鉄道では3~4割程度の組織がリスキリングを実施しているようです。組織の実施に対して個人の実施率は半分程度になりました。組織内での実施がない企業・組織でも個人で実施している割合も1割程度見られました。
全体に、リスキリングへの対応は、これからのようです。
まとめ
今回の分析では、社会経済情勢の影響、働き方の変化、リスキリングへの対応を取り上げました。
土木技術者は、感染症や円安の影響を受けている、テレワークは実施されているが頻度はそれほど多くない、リスキリングへの対応はあまり進んでいないことがわかりました。
今回の調査分析が、皆様の参考になれば幸いです。
2023.●.● 執筆:たま
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