DXプロジェクトを進めるためのピースと役割分担
デジタル技術で業務オペレーションを最適化・効率化するDXプロジェクトは業務部門と開発部門のどちらがリードすれば成功率が上がるのか?というテーマは非常に良く耳にする議題ですが、様々な現場を見てきた結果、良い仕事をするには対立せずにそれぞれが得意なことを仕事にして団結して進めることがベストだと思い至るようになりました。デジタル開発の技術まわり(D)をリードするチームと、技術を触媒として業務変革(X)をリードする業務部門のマネジメントのツートップ体制が理想的だということです。
「DXプロジェクト」にアサインされるとデジタル系の知識経験の深さを求められる感じがしますが、業務部門が担う役割は技術を通した「生まれ変わり」なので、そこまで深い専門性は要りません。できあがった技術が現場にとって慣れない道具の押し付け合いの様相にならないように進化圧と業務変革のプログラムを創り、情報技術を使って少しずつオペレーションを変革していくマネジメントを行うことが役割です。大きく、現場業務を知り尽くしているか、技術解決でやりたいことへの意識が高いWanna Be系のタイプが船頭に向いていると思います。
一方日本企業のデジタル開発プロジェクトの現場に目を向けると、高額投資や秘匿性の高い情報を伴う案件であっても、開発経験や資格を持たない社員がPMになれる謎の実態があります。その結果、ハイリスクで現場で使いにくい仕組みができ上がってしまうことが少なくありません。「餅は餅屋」で、QCD(品質・コスト・納期)をマネジメントしながら新たな業務に通用する質の高いシステムを創ることが、技術リーダーの責任範囲となります。
DとXのマネジメントには協調・依存関係がある―このことは、技術導入と成果の実感までにはタイムラグがあることを意味します。ちょうど初期に想定した機能開発がひと段落し、支払額が大きくなるタイミングあたりから業務部門が利用のコツを掴み価値を実感し始めることが多いので、周囲から「プロジェクトが上手くいっていないのでは」という妙な誤解がされないよう、少なくとも時間差が発生することは意識しておくとよいと思います。
最後に、プロジェクトオーナーの役割について触れておきます。
プロジェクトオーナーはこうしたプロジェクトやプログラムが進んでいる間、政治的な後ろ立てをするのはもちろんのこと、「ルールの変化」に目配せをします。デジタル社会の変化は急速です。生活者の価値観、業界ルール、どこかに「大きなルールチェンジ」の芽が隠されています。
現場が目の前の物事に夢中になっている中でその兆しを見つけ、新たなルールに対応していくことが経営層・プロジェクトオーナーの役割になります。
DXが全社ゴトってどういうこと?ということについて、少し解像度を上げてみました。