Chat GPTは「エンゲルスの休止」を再現するのか
Chat GPTという単語を見ない日はない、というくらい盛り上がりを見せてますね。
この自然言語応答メカニズムの質については色々是非が言われてるけど、デジタル系の企業を中心に現場で専門知の教科書作りや非エンジニアが自社システムをカスタマイズする場面などでゴリゴリ使われ始めていて、そのことが出資者にレポートされ、評価されているのを目の当たりにすると、努力して貴重なスキルや専門知を習得した人の価値が突然下がる痛手を受けているのを体感中です。
「人減らし(人件費削減)系DX」は効果につなげやすいので、大企業ではプロジェクトの花形になることが多いです。これまではそうしたプロジェクトについて、対象者はルーティンワーク従事者が中心だったけど、いよいよ固有領域だけ数年やってました、みたいな今のところは「学習元のナレッジベース」を持つ中級レベルのベテラン専門職が次の標的になりそうだなと思います。
少なくともこれから初期段階では、ジョブローテーションや多能化を経験せず、デザイン一筋、マーケティング一筋何年のような手を動かさない「解説役」のベテランタイプが、機械化の波をわりと受けやすいだろうなと。
仮にクリエイティブAIなどによる機械化が経済成長や企業の利益に繋がったとしても、産業革命の中で働き手がこうした機械に置き換えられる初期の痛手を乗り越え、それなりに賃金上昇に反映されるまでには数十年もかかることを(かなり意訳していますが)、ポール・クルーグマンは「エンゲルスの休止」と呼んでいました。
これが再び起きるのだとすれば、生産性が上がっても資本家や経営層とかプラットフォーマーばっかり得して、情報産業に勤める働き手の賃金に還元されるのは何十年もかかるタイムラグがホワイトカラーに再現されそうな予感がしていて、一つの領域だけに尖った専門職には少し戻りづらいなって思います。過去の環境で有効だったスキルを得られたことには感謝しつつ。
ジェネラリストになるか、経営レイヤーに行く、他スキルを組み合わせて自分だけにしかできない価値を作る、とかこれからの生き残り方はいくらでもありますけどね。