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Bloodborne 上位者 アメンドーズの考察と妄想
はじめに
Bloodborneには「上位者」と呼ばれる存在が複数存在します。
単なる化物、モンスターとは異なり「人間よりも上位の存在」である彼ら彼女らの、ビジュアル的ストーリー的デザインはBloodborneの大きな特徴であり魅力でもあります。
中でもアメンドーズは、ストーリーにおける大きな転換点の象徴であり、またプレイヤーへの接触も多いことから比較的馴染みのある上位者、モンスターハンターでいえば空の王者リオレウス的な存在といっても過言ではありません。
しかし、クリアしてから思う、
アメンドーズ、あれ、結局、何だった?
そう、プレイヤーが接触する回数が多いわりに、ストーリーにあまり絡んでこないんですよね。だから立ち位置がわからない。無論、他の上位者も謎が多い、上位者どころかNPCにも謎が多いのがBloodborneなんですけれども、それにしても露出度合いに対して情報量が異様に少ない。
そこで私はこう申し上げたいのです。アメンドーズは「かつて神だった、人から生まれた上位者」だと。
元ネタ考察
アメンドーズについて、まずはそのデザインを形成する要素を挙げていきます。
「扁桃石」
網目の張った歪んだ石。あるいは隕石の類だろうか
無意味なようで、だがこれを手放せぬ、不思議な引力がある
あの、おかしな男は言っていた
大聖堂の右方、隠された古教会を訪れたまえ…
それは神秘、きっと狩りの力になる
扁桃石は禁域の森でおかしな男(蜘蛛のパッチ)から貰えるアイテム。これを持って古教会に行くとアメンドーズに握りつぶされ、教室棟へ向かうことができます。
漢字で「扁桃」は「アーモンド」と読みます。たしかにアメンドーズの頭部ってアーモンドの形をしていますね。さらにアメンドーズの特徴として複数の個体が確認されています。アメンドーズのズって「アーモンドたち」って複数形の意味?ちょっとストレート過ぎるかもしれませんが…
また海外表記はド直球にもう一つ元ネタを示唆しています。アメンドーズの海外表記「Amygdala」、英語で「扁桃体」を意味します。
扁桃体(へんとうたい、英: Amygdala)は、ヒトを含む高等脊椎動物の側頭葉内側の奥に存在する、アーモンド形の神経細胞の集まり。情動反応の処理と記憶において主要な役割を持つことが示されており、大脳辺縁系の一部であると考えられている。 Wikipedia「扁桃体」
アメンドーズに導かれる先にはもう一つ、DLC「狩人の悪夢」があります。「狩人の悪夢」はヤーナムの前日譚。誰かの記憶をもとに構成されているように思われます。すると教室棟も、もしや誰かの記憶なのでしょうか?
また意味があるかは分かりませんが、大脳辺縁系というのもアメンドーズがボスとして出てくる「悪夢の辺境」に一致しているように思われます。
と、ここで脳器官や機能に視点が行ってしまいますが、「アーモンド」由来で元ネタらしきものがまだあります。それはユダヤ教(およびキリスト教)における聖典、旧約聖書。中でも三大預言書の一つであるエゼキヤ書の第1章11節から12節。
11 主の言葉がまたわたしに臨んで言う、「エレミヤよ、あなたは何を見るか」。わたしは答えた、「あめんどうの枝を見ます」。
12 主はわたしに言われた、「あなたの見たとおりだ。わたしは自分の言葉を行おうとして見張っているのだ」。引用元 エレミヤ書(口語訳)
調べたところ、旧約聖書の原語であるヘブライ語でアーモンドは「シャーケード」と呼ばれており、「シャーケード」とは「目覚める」の意味を持ちます。これは聖書の舞台、イスラエルだと春の訪れに咲くのがアーモンドの花だからって理由だそうです。
そして続く12節で「主」(ここでは簡単に=「神」と考えます)の言葉の「見張っている」、これがヘブライ語だと「ショーケード」と言うらしい。「アーモンド」と「見張っている」、「シャーケード」と「ショーケード」この二つがかかって「お前がアーモンドを見てる、俺、お前を見張ってる」ってバチバチのライムで信者を沸かしに来てるようです。うーん。旧約聖書、思ってたのと違う。
さらにこの説の補強となるかはわかりませんが、アメンドーズのデザインはユダヤ教の象徴である「メノーラー(七枝燭台)」に由来しています。
メノーラー
確かにアメンドーズも頭と3対の腕があり、形状が一致します。メノーラーについて調べると、夜闇を照らす燭台は神の存在を想起させ、聖書内に作り方が細かに記載されているため、ユダヤ教の象徴となったそうです。
形状といえばカレル文字「深海」もまたアメンドーズと一致します。
「深海」
人ならぬ声の表音となるカレル文字の1つ
深く沈む様に似ることから「深海」の意味が与えられ
記憶する者の発狂耐性を高める
大量の水は、眠りを守る断絶であり、故に神秘の前触れである
求める者よ、その先を目指したまえ
ここからさらに、Bloodborneのテーマの一つであるクトゥルフ神話。ここにも元ネタらしき存在がいます。そのままクトゥルフです。
海底に沈んだ都市ルルイエに封印されている、あるいは、眠っているとされ彼自身が物語上で活躍することはない。しかし夢のテレパシーや彼の信奉者が人間に危害を加える。人間では太刀打ちできず、しかも好意的ではない太古の地球の支配者であり、人間の繁栄が宇宙からすれば短いものであるとしたラヴクラフトの宇宙的恐怖を象徴するキャラクターとして、彼の作品世界観の代名詞として知られている。一般にタコに似た頭部、頭足類のような触腕を無数に生やした顔、巨大な鉤爪のある手足、水かきを備えた二足歩行の姿、ぬらぬらした鱗かゴム状の瘤に覆われた数百メートルもある山のように大きな身体、背にはドラゴンのようなコウモリに似た細い翼を持った姿をしているとされるWikipedia「クトゥルフ」
後半の見た目部分はまあ100%でないにしろ70%くらい一致しているのではないでしょうか。さらに同じページのルルイエの説明も気になります。
ルルイエは、星辰が適切な位置に近づいた極わずかの期間や地殻変動によって、海面に浮上することがある。ルルイエおよびそこに眠るクトゥルフの浮上する時期には、クトゥルフの夢がテレパシーによって外界へ漏れ、
ある種の精神的なショックを世界的に及ぼすことが知られている。Wikipedia「クトゥルフ」
悪夢の辺境でアメンドーズを倒した場所、灯りは「アメンドーズの寝床」となります。またアメンドーズの開発名はストレートに「邪神」でした。そして開発構想時はストーリー分岐とともにラスボスも分岐し、アメンドーズもラスボス候補の一体であったようです。
このあたりだけでも悪夢の辺境はもともとルルイエであり、「悪夢の上位者」「感応する精神」であるアメンドーズが目覚めて獣化を引き起こし、主人公がそれを倒す。そんなストーリーが容易に妄想されます。
長くなりましたが私が追えた元ネタは上記です。
うーん、たった一体のボスにこの情報量。えづくじゃあないか…
元ネタ考察を基にした妄想
アメンドーズ、彼らは最初からいました。
聖堂街にもヤハグルにもいました。
そして恐らくプレイヤーを見張っていました。
しかし我々はそれに気づきませんでした。
白痴の蜘蛛、ロマを倒すことで我々はようやく彼らを知覚します。それはゲームプレイの上でもストーリーの上でも、決定的な転換点です。燭台に火を灯し、暗闇で周りのものが見えるように、我々は上位者を、アメンドーズを知ります。隠し街ヤハグルにて数体のアメンドーズが主人公の方を向きます。まるで見張っているかのように。
禁域の森や大聖堂にはアメンドーズを祀ったと思われる構造物があります。いにしえの時代アメンドーズは神として崇められていたのだと思われます。
ここで言ういにしえ、それは多分、地下遺跡の時代ではないでしょうか。文明が滅びるとともにアメンドーズも忘れ去られ、またビルゲンワースが文明とともにその存在を掘り起こしました。けれど彼らはアメンドーズを神と思いませんでした。
世界に色々な宗教があるように「神」を決めるのは「人」である、そんな見方もあるのではないでしょうか。地下遺跡の時代、アメンドーズは「神」でした。下地にあるのは恐らく「見えなくても、神様は常に我々とともに居てくださる」という考えでしょうか。でもビルゲンワースはそう考えませんでした。何故ならアメンドーズの正体を知っていたからです。
アメンドーズ、アメンドーズ…
憐れなる落とし子に慈悲を…
…ああ、アメンドーズの件は、気にするな
あれは憐れな落とし子。…ゆえに、救いもあったろう
フフフフフ…
ー 蜘蛛のパッチ
落とし子とは「身分の高い人が正妻でない女性に産ませた子」です。そういえばヤーナムにはかつて上位者の子を孕んだ女性がいました。我々が目にするのは女王ヤーナムだけですが、あれはきっと、代々の女王がやってきた風習なのではないでしょうか。これ、アメンドーズが(個々に特徴があるにせよ)複数体存在する理由になりませんか?
つまり、我々が目にするアメンドーズたち、
彼らは歴代のヤーナム女王たちが産んだ上位者ではないでしょうか。
(女王ヤーナムが不死性を持って何体も産んだ可能性もあります)
進化の極北に在る上位者は、故に子孫を残す必要がありません。一方で、これはDARK SOULS風に言えば生命の呪いでしょうか、赤子を(その代理を)求める性質・本能があります。アメンドーズや他の上位者にとって、上位者の赤子を孕んでくれる風習は、好都合なことであったでしょう。おまけに神様扱いしてくれます。
けれど地下遺跡は滅んでしまいました。
カインハーストでは未だに血の女王アンナリーゼが、上位者の子を孕むためにいっぱい血を飲んでいますが、アプローチが違うのか、はたまたローゲリウス先生のガードが固いのか、残念ながら妊娠には至りません。
だとするとアメンドーズ、もう詰んでませんか?
さらに気になるテキストがあります。
上位者狩り。上位者狩り
ー 教室棟
このメモでいう上位者、多分アメンドーズのことだと思います。その根拠がこちら。
「小アメンの腕」
アメンドーズと呼ばれる上位者たち
その中でも小型な個体の、腕の一本
厳密には「仕掛け武器」でも何でもないが
異常者の中には、これを武器として振るう者がいる
通常は骨の塊、固く大きな鈍器のようだが
これを伸ばし振るうとき
先端は、未だ生きているように蠢くという
古狩人の時代、アメンドーズはもっとたくさんいたのでしょう。そして彼らは小型の個体からどんどん狩られてしまいました。
何故、蜘蛛のパッチがアメンドーズを憐れと評したのか。それはかつては神と崇められていたにも関わらず人々に忘れ去られ、また上位者の子を孕む風習も途絶えた現在彼らはもう種として終わってしまっている(増えない)うえに、狩人たちに虐殺されたからではないでしょうか。だから奴らに呪いの声を…
そう考えると一つ疑問が解けます。隠し街ヤハグルでメンシス学派は上位者を、恐らく「産み出そう」と生贄を捧げていました。(余談ですが同じメンシス学派でもミコラーシュさんは一歩先を行っているか、異端すぎたかで他の、少なくともヤハグルのメンシス学派たちとは別のアプローチをしていると思います。)ヤハグルにおいて部外者である主人公に、アメンドーズがビームやらで攻撃・妨害してきます。さながらメンシス学派とアメンドーズが共闘しているように見受けられます。
あの時、メンシス学派が産もうとしていた上位者こそアメンドーズでした。裏付けとして「再誕者」の開発名は「なりそこないの邪神」です。アメンドーズがメンシス学派をサポートしたのは、彼らが自分たちの仲間を増やそうとしていることを察知していたからではないでしょうか。
また「狩人の悪夢」など、誰かの記憶を元に悪夢を構成する能力、もともと人(遺跡時代の人々は主人公時代の人間とは異なるけれども)から生まれた存在であるが故の力だとするのも面白くありませんか?無論「小アメンの腕」だけでもアメンドーズが狩人を恨む理由は、十分な気がしますが…
はい、まとめになりますが、私の考えるアメンドーズの歴史は以下です。
①恐らく「最初のアメンドーズ」または「別の」上位者が宇宙より飛来。
②地下遺跡の時代、住民たちに神と崇められ、また住民の女王と交わり子を孕む風習が生まれる(生殖機能のない上位者にとって好都合)。もしかしたら、住民(人または人に近いもの)との関わりの中で、その情動や記憶に感応する能力が発達する。
③地下遺跡の住民に獣の病が広がり、地下遺跡が滅びる。同時にアメンドーズたちも忘れ去られ眠りにつく。
④ビルゲンワースによる地下遺跡の発掘の中で目覚める。
⑤古狩人の時代、虐殺される。
⑥主人公の時代、メンシス学派が自分たちの仲間を産み出そうとすることを察知し、メンシス学派の根城、隠し街ヤハグルを守護する。
さて、本稿は以上になりますが、これを広げると女王ヤーナムからメンシス学派に奪われた赤子の上位者メルゴー、あれもアメンドーズと関係がありそう。さらにヤーナムの石や虐殺繋がりで漁村やゴースの遺児あたりまで妄想範囲が広がり収集がつかなくなってきますので別の記事で取り上げたいと思っています。それにしても小アメンって呼び方、雑過ぎやしませんかね。虐殺しながらこんな言い草、そら古狩人たちも囚われてしまいますわ、って感じです。というわけで以上、アメンドーズの考察と妄想でした。さよなら~