疑問3 3種類の狙撃トリガーについて
⚠️この記事は漫画「ワールドトリガー」の設定考察です。物語のネタバレはなるべく避けますが、設定上の情報に関しては掲載本誌の最新話分まで触れる場合があります。間接的なネタバレになる可能性もありますので、ご注意ください。
引き続きよろしくお願いします。
【最初の記事】 https://note.com/cittty/n/n0614e81a848d
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【3】トリオンは載せる情報に応じて速さと状態が変化する
今回からは、3つ目の仮説について掘り下げていきます。前項までは主に、「現実の物理法則に当てはめた場合」を軸に考えてきました。
作中の描写を元に、トリオン固有の法則について考えられる可能性を探りつつ、その鍵穴に【仮説1〜3】の鍵が上手く入るのか、片っ端からガチャガチャやっていこうと思います。
〇3種類の狙撃トリガーについて
疑問1で挙げた「チカビス無反動問題」に引き続き、狙撃トリガーの仕様に関する疑問へ立ち戻りましょう。無反動問題の他にも謎がいくつかあります。
作中にはボーダーが開発した3種類の狙撃トリガーが登場しており、それぞれ特徴に差があります。
イーグレット
……火力、弾速とも標準的。使用者のトリオン能力に応じて射程距離が伸びる。
アイビス
……高火力の代わりに弾速が遅く、比較的当てづらい。トリオン能力に応じてさらに威力が大きくなる。
ライトニング
……火力は控えめだが、引き換え弾速に優れる。トリオン能力に応じてさらに弾速が上がる。
特にアイビスについてですが、雨取千佳のアイビス狙撃が「大砲」「トリオンモンスター」「でも目立つから格好の的」などと評される様子を初めて見たとき、こんな風に考えなかったでしょうか。
「じゃあアイビス使わなきゃいいんじゃないの?」
「千佳がイーグレットやライトニングを使ったらどうなるんだ?」
とか。
「こんなに優れた能力があるなら、超速・超射程・超威力の専用トリガーとか持たせたら最強だろうな」
「威力や弾速が両立できない理由は何かあんのかな?」
だとか。例えばこんな感じです。
雨取千佳は作中屈指の高いトリオン能力をもっています。彼女がライトニングを使用した場合のお話をしましょう。
標準性能のイーグレットであっても、一か八かで狙いを先読みしなければ反応できない弾速です。平均的なトリオン能力の隊員が使っても、ライトニングの弾丸は相当速いはず。
雨取千佳の能力をもって、対物ライフルを大砲に変えてしまう出力が弾速に全振りされた場合、何が起こるのか。音速なんて軽く超えて、ひょっとして限りなく光速に近い射撃になるのでは?
きっととんでもない貫通力をもった恐ろしい性能になるのだろうな、なんて当初は漠然と考えていたものですが、どうやらそうではありません。
〇たとえどれだけ速くても
作中の説明や描写を見る限り、どれだけ弾速が増したところで、ライトニングの威力は一定のようです。射程もおそらく一定。
そもそも、敵の反応速度を超えてさえいれば兵器としては十分です。とにかく当たればいいのですから、人間やトリオン兵の反応速度を超えたらその先はどこまで速くても大差ないとも言えます。
もしこの世に、引鉄を引くとほぼ同時に着弾するような狙撃銃があれば破格の超兵器であることは間違いない。ですが、一撃で地形すら変えてしまうチカビス砲と比べて、いささか地味と言わざるを得ません。
たとえ光速に迫る(仮)ほどの弾速であったとしても威力は据え置き。飛距離も伸びない。これは直感的には理解しづらい仕様です。
現実の物理法則で考えるなら、弾速が速ければ(貫通力が増すという意味で)威力は高くなり、速力に応じて飛距離も延びるはずです。
トリオン弾が物質化していないことは確認していますので、狙撃トリガーは現実の物理法則とまったく異なるルールの下に性能が決まっているものとは理解できます。
そこまではいい。
気になるのは、どうして弾速・威力・射程がそれぞれトレードオフになってしまうのかということです。
〇トリオンの「減速」
まずはアイビスとライトニングの関係、威力と弾速の関係について考えたいと思います。射程距離については次の記事で取り扱うことにします。
なぜ、威力が上がれば弾速が落ちるのか。
どうして弾速を確保したまま威力を上げることができないのか。
これは【仮説3】からの派生案ですが、「トリオンは機能≒情報を多く載せる程に遅くならざるを得ないから」というのが僕の回答です。
仮説では、トリオンは超光速で空間を伝わり、超光速で体内のトリオン器官の内側を巡っています。
トリガーを使って、そこに「威力」という情報を載せて飛ばす。この過程でトリオンは減速する。それによって、トリオンの弾丸は初めて現実世界に影響を及ぼす力を持つことになる。目に見えるようになるし、載せた情報に応じた性能を発揮するのです。
ここまでお伝えした内容、そして今後お伝えする理屈、仮説、推論はすべてこの発想をベースにしています。
僕がトリオン超光速説を提唱した最初の記事を読んで、「いや、それにしてはトリオン弾は遅くないか?」と感じた人もいるかもしれません。
本来は超光速を発揮できるポテンシャルがあると仮定した場合、トリオン弾はやけに遅い。
そうでなくても、原作ワールドトリガーを読んでいて、またはアニメを視聴していて、「トリオン弾、遅すぎない?」と思ったことはありませんか?
思い当たる人は多分、現実の銃と比較してそう思ったのではないでしょうか。現実の銃より性能が上のはずなのに、どうして「見てから避ける、見てから防ぐ」が成立するんだ、と疑問に思ったことでしょう。
特に気にしなかった人は多分、漫画的・アニメ的表現にかなり慣れ親しんでいるのではないかと思います。本当に目にも止まらない速さを忠実に再現すると、作劇・作画が破綻しかねません。演出上仕方のないことはどうしてもある。それを無意識に受け入れることは、フィクションを楽しむ上でとても重要です。
僕も最初はなんとなく受け入れていましたが、この仮説をまとめる過程で「なぜトリオン弾は遅く描写されているのか?」と考えるようになりました。
トリオンは本来、現実の銃弾など比較にならない弾速を実現できるはずなんです。
なぜって、ワープやテレポートのトリガーが存在するじゃないですか。
弾丸を直接相手の体内にテレポートで遠距離からねじ込むなんて芸当はさすがにできないでしょうが、そもそもトリオンというエネルギーは、人間一人分の質量を瞬間移動させることも可能にする力を秘めています。スピードという尺度において最強のエネルギーと言っていい。
それにしては、トリオン弾はいくらなんでも遅すぎる。そして遅い理由は当然あるはずです。
その答えが「減速」。
ゼロからの加速ではなく、人間の知覚を超えるほどの速度からの減速によって、トリオンは現実に影響を及ぼすようになる。
本当はもっと速い、光より速い。けれどそのままでは現実=物質界に何の影響も及ぼさない。そこに機能=情報を持たせた瞬間に、トリオンは大幅に減速する。荷物が増えればそれだけ遅くなる、という発想です。
極端な話、遅いほど多機能で、速い程シンプル。重いほど強く、軽い程弱い。トリオンについてはそれが根底のルールとして敷かれているのではないでしょうか。
通信に例えてみればわかりやすいかもしれません。
狙撃用トリガーは「威力」という情報を敵に届ける通信機であり、アイビスは大容量通信、イーグレットは遠隔通信、ライトニングは高速通信に特化している、ということです。しかもその3種類すべて、特化していない部分についても最低限の性能を備え、精度も高い。
そのように考えると、威力弾速射程、すべてを総取りしたトリガーというものがどれだけコストのかかる代物か、イメージしやすいと思います。
〇トリオンの物質化=安定化?
多くの情報を詰め込む過程で、トリオンは重くなり、遅くなる。遅くなる、とは即ち静止状態に近づくこと。安定した状態に近づくこと。
これもイメージの話なので後々補足したい部分ですが、この「減速」が一定ラインを超えるとトリオンは物質化するのではないか、と僕は考えています。
そうなると「トリガー」というものは、「トリオンの物質化」の先にある、トリオンエネルギーが安定した状態なのではないかと予想されます。ボーダーのトリガーは「トリガーホルダー」の中に収められた小さなチップのような形状ですが、これは物質化トリオンで造られていると考えて間違いないでしょう。
それこそ人間一人の生命という膨大な「情報」を封じ込めたとしたら、そのトリガーは、通常とは比較にならない性能を備えると共に、半永久的に安定した状態を保つのではないでしょうか。
作中に登場する「ガイスト」というトリガーについて、対峙した敵は「トリオン体の安定性をわざと崩している」と分析しています。それによって一時的に出力を高めており、不安定なトリオンが漏出してしまっていることを見破っています。半ば暴走のような状態を敢えて引き起こしているわけです。
この表現から、物質化しているトリオン体は安定状態にあるということが読み取れます。物質化=安定状態という認識は正しいとみてよさそうです。
【3】トリオンは載せる情報に応じて速さと状態が変化する。
この仮説をまとめると、トリオンは速い状態であるほど、散逸して不安定な自然の状態に近く、遅い状態であるほど多くの情報=機能を保持した安定状態である、ということになります。
次回の記事では、トリオン弾の射程距離について考察しつつ、消費され、機能を果たしたトリオンがどこへ行くのかを考えていきます。
さらにその次の記事では、それぞれの状態を対極に置いて比較しながら「トリオンの状態変化」について考えていきたいと思います。
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