派生疑問1 トリオン弾の安全処理について
⚠️この記事は漫画「ワールドトリガー」の設定考察です。物語のネタバレはなるべく避けますが、設定上の情報に関しては掲載本誌の最新話分まで触れる場合があります。間接的なネタバレになる可能性もありますので、ご注意ください。
よければ皆さんの考えをコメント等で教えてくださると嬉しいです。
引き続きよろしくお願いします。
【最初の記事】 https://note.com/cittty/n/n0614e81a848d
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前回に続いてトリオン弾の仕様についてお話していきたいのですが、射程距離の話の前に少し寄り道したいと思います。
〇トリオン弾の安全処理
トリオン弾についての特殊な設定のひとつに、生身の人間に命中した際の反応があります。
作中の説明によれば、「弾トリガーには流れ弾防止の安全処理があって、生身に当たっても痛みと衝撃で気絶するだけ」とのことです。
この設定、読んでどう思われましたか?
「なるほど納得」ってなりましたか?
「都合良すぎじゃない?」って思いましたか?
僕は両方でした。
少年少女が市民を代表して戦っているのに、誤射事件が起こるリスクはどう扱ってるのかな、と思っていたので、その説明があったことには少し安心しました。
しかし「痛みと衝撃で気絶」は大いに疑問です。
「峰打ち(金属で殴打)にしておいたので安全!」と現実に言い張るくらい無理があります。
ここには何かトリオンの仕組みに関するヒントが隠れているだろうと考えました。
◯安全処理の違和感
作中で言われているとおり、気絶するほどの痛み・衝撃って十分におおごとで、普通に考えたら当たりどころ次第で後遺症の危険だってありそうです。
直接殺すことがないだけで、生身の人間を少年少女が傷つけるリスクをケアしきれていません。戦争だからそれも止むなしということでしょうか。本当に?
それに、鉄筋の建物を撃ち抜くような威力を無害レベルの痛み・衝撃に抑えるとなると、ひとつひとつの弾丸にとんでもない性能のブレーキをわざわざ積んでおく必要があります。市民・隊員の安全のためとはいえ、いくらなんでもコストがかかり過ぎませんか。
弾丸トリガーの構成については作中で嵐山隊長が図解して語ってくれていますが、安全処理に割くトリオンについてはまったく触れていません。
そして作中の説明を言葉どおりに読み取ると、気絶は確実に起こる現象のように思われます。「大抵の場合気絶する」ではありません。
痛み・衝撃に対する身体の反応には個人差があります。気絶を免れるケースもあれば、怖い話ショック死だってあり得るはず。
「そんなリスクは無いが、気絶だけは確実」というのは変な話です。まるで気絶させるために過不足ない痛みを与えているようではありませんか。
もちろん言葉の綾、絵馬隊員の要約と僕の色眼鏡がよくない感じで噛み合っただけかもしれません。
しかし、どうしても違和感が残る。
弾丸が「生身に当たっても完全無害」であれば、まだ納得できます。だってそもそも生身では干渉できないのがトリオン本来の状態なわけですから。
トリガーの力でトリオン(無害)に弾丸という機能を持たせているので、いざとなればそれを即座に解除するだけ、と考えれば明らかにコストが小さいのです。
生身の体に命中する瞬間、弾丸がどこかに消えてしまうという設定だったら、それはそれで「都合よすぎじゃない?」となりそうですが、ここまでの考察を踏まえて考えるとむしろ理屈にかなっているはず。
あるいは、そもそも生身の身体にはトリオン弾がすり抜けて命中しない仕様にはできないのでしょうか。
前回記事に続いて通信に例えるなら、特定のアドレスにしか届かないように指定するイメージです。
実際に作中には「強力な効果を持ちながらも、トリオン以外の対象には効果がない」というトリガーが登場しています。あるいは「破壊力を持たない代わりにシールドの干渉を受けない」トリガー。
それらと同じように、ボーダーの弾トリガーも生身には何の効果もないように調整できないものでしょうか?
人間の肉体には何の影響も及ぼさず、トリオンにしか反応しない弾に設定することはどのくらい難しいんでしょうか。
そんな疑問が数々生じるのですが、「実際はできるし、本当はその方が楽」というのが僕の考えです。
〇「トリオン弾、敢えて痛くしてる説」
これ多分、「安全処理で抑えた結果、痛いだけで済む」じゃなくて「普通に威力の無効化だけなら簡単だけど、敢えて痛み・衝撃を与える仕様にしてる」だと思うんです。
ボーダーの開発室が意図的にそういう仕様にしているということです。そしてそのことは表向きにはされていない。
なぜわざわざそんなことをするのか?
もしこの想像が当たっているなら、非殺傷兵器として使えるように設定しているんだと思います。
やや極端な例ですが、たとえば生身の敵が生身の民間人を人質に取った場合、この「気絶させる仕様」がないと対処できない。
気絶させるだけだから、万が一人質に当たっても最悪の事態は避けられます。
武器を使わず対処したとしても、戦闘体と生身では大人と子ども以上の性能差があります。
恐慌下の避難民との接触だけで大怪我させてしまう可能性もあるし、暴漢を押さえ込もうとしただけで、取り返しがつかない重症を負わせる場合だってあり得ます。
その意味でボーダー隊員の天敵とは、生身で向かってくる相手だと言えなくもない。
それならどうすればいいのか?
十分な警告の上、遠距離から引鉄を引き、とりあえず眠ってもらうのです。全部これで解決するわけではないですが、隊員を過剰防衛のリスクから守る手段として合理的だと考えます。
これは第14話「三輪隊」で空閑遊真が言った「おれがうっかり一般人だったらどうする気だ」に対する回答でもあります。
そしてこの発想は、トリオン弾に「痛み・衝撃」の情報を入力・送信して届けるイメージなので、急ブレーキをかけた弾丸が威力を殺し切れずに衝突してくるショックとは根本的に異なります。
◯「痛みと衝撃」が必要な理由
いや、それなら「気絶」だけを機能として与えればいい。ただ眠らせるだけでいいならもっと上手いやり方があるはず、「痛みと衝撃」は余計じゃないかという考えもあるでしょう。
「痛みと衝撃」が必要な理由として、思い当たる可能性は4つです。
1つ、命中した生身の敵を、一瞬で完全に無力化するため。
対生身の相手を想定したとき、トリオン弾に持たせる機能を単に「意識を奪うことだけ」にしてしまうと、その効果は果たして刹那の猶予も与えず発揮されるのでしょうか。
ほんのわずかでも効果に個人差があったり、当たりどころや環境条件によってタイムラグが発生するならら、非殺傷兵器として完全ではありません。
気絶直前のコンマ数秒で、人質に向けた武器を使用されたり、爆弾その他の危険な装置を起動されたり、そんなリスクを完璧に排除する。狙った相手には絶対に何もさせない。
そのために最も速効性があり合理的な仕様が「痛みと衝撃」なのだ、と言われると納得はできます。
「痛み」で思考を奪い、「衝撃」で行動を封じる。ミリタリーらしい表現を使うとストッピングパワーというやつです。
2つ、威嚇効果を持たせるため。
たとえ痛いだけで済むとは言っても、気絶級の痛みをぶつけてくる兵器を無視して平然と行動できる者はそういません。
撃たないとしても脅威である、ということは兵器の重要な役割です。
また一般人に対しては「誤射される可能性があるから警戒区域に近づくな」という抑止力になるでしょう。
3つ、生物を一瞬で気絶状態にする際、「痛み」を引鉄にすることは特に効率が良いから。
別に生物学的にも医学的にも根拠はありません。多分そうじゃないかな、くらいの話です。
そしてこれも根拠はありませんが、「気絶」が無条件に引き起こされることって、脳にとって結構危険な現象ではないでしょうか。
疲労したから眠る、回復したから目覚める、という具合に脳にもON/OFFの「理由」が要ると思うんです。
突然に活動の中断が発生してしまうと、脳はその理由がわかりません。睡眠なのか、気絶なのか、あるいは死なのか。
そこまで言うと少し大げさかもしれませんが、パソコンだってスリープ機能やログオフ・シャットダウン等の操作をせずにいきなり電源プラグをぶっこ抜いたら不具合の元になるじゃないですか。そんな感じで、身体にも悪影響があるかもしれない。
あくまでも、多分そうじゃないかなって話です。
4つ、戦闘用トリガーはあくまで兵器であることに、隊員たちは自覚的であるべきだから。
弾丸が生身に対して完全に無害であった場合、その意識が希薄になるから。
これは少しこじつけです。旧ボーダー構成員や開発室の大人たちはそのように考えるかもしれないな、という発想から加えました。
安全処理があろうと、町を守るヒーローの装備であろうと、その本質は兵器であり、適切に扱えない者は事情に関わらずボーダー隊員の資格を持つべきでないという考え方は、原作1巻から明確に示されています。
以上、一応の思いつきとしてはこんなところです。
◯補足
いやいや、ついさっきトリオン弾の構成について「安全処理に割くトリオンについてはまったく触れていません」と言ってたじゃないか。それなら「痛み・衝撃・気絶」という機能に割くトリオンも同じではないか。そういうご指摘があるかもしれません。
これに関しては、非公開にせざるを得ないからではないかと考えています。
元々無害なのに、わざわざ痛みや気絶させる機能を追加設定しているなんてことを公にしたら非難轟々です。
守るべき市民を逆に威圧する行いだと。
あるいは、既存の国家組織を脅かすと。
それもそのはず、ボーダーの敵は近界民(ネイバー)、そして一般に近界民とは異形の怪物「トリオン兵」のこと。表向きにはそもそも対人戦闘なんて想定されていないはずなんです。
若者が武器を持ってもギリギリ許されているのは、あくまで侵略者である非生物のバケモノ相手にしか使わないという約束を徹底して守っている(と装っている)から。
怪物だけを相手どる防衛活動と、他国の人間の侵略に対抗する戦争行為では世論の心象がまったく異なります。
するとどうなる?
知らんのか。
根付さんの仕事がアホみたいに増える。
下手すると詰む。
少し長引いたのでまとめ直しておくと、
1.即効性
2.威嚇効果
3.実は効率が良い(?)
4.兵器を扱う責任の強調
この4点が「痛み・衝撃」が必要になる理由として考えられます。作中の既出情報とも矛盾していません。
そしてこの説が一部でも実際に近いものだとしたら、「作中でまだ説明されていない理由」も説明することができます。訓練生や入隊間もない若者に対して、わざわざ積極的に話すようなことではありませんから。
なぜこのように脱線したのかと言うと、これから始める射程距離の話には、安全性の問題が深く関わってくるからです。
何より強調しておきたいのは、この「トリオン弾、わざと痛くしてる説」が「本来トリオン弾の無害化は簡単であるはず」という仮定を前提にしているということです。
実際この仮定部分が次回以降の本題となります。そのあたりは次回の記事にまとめます。
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