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ワールドトリガー考察③ 疑問その2 トリオンの物質化とエネルギー
⚠️この記事は漫画「ワールドトリガー」の設定考察です。設定上の情報に関しては掲載本誌の最新話分まで触れる場合があります。間接的なネタバレになる可能性もありますので、ご注意ください。
引き続きよろしくお願いします。
【最初の記事】 https://note.com/cittty/n/n0614e81a848d
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前回の記事で散々触れましたが、作中には頻繁に「物質化したトリオン」という表現が登場します。
トリガーの起動により換装する戦闘体や、トリオンで作った武器や防壁、そしてトリガーそのものが「物質化」されたトリオンの姿と考えられます。
数あるトリオンの不思議、その中でも特に謎な部分です。「物質化したトリオン」ってどんな構造なんでしょう。この疑問について考えると共に、トリオンの3つ目の性質について考えていきたいと思います。
〇「エネルギーと物質」、「エネルギーと速度」の関係
前回までの記事で、「トリオン超光速説」を提唱してきました。
既にお気づきかもしれませんが、エネルギーが速度を持つという概念からして、実は筆者自身も理解が怪しい前提です。
そう、そもそもトリオンは「生体エネルギー」と説明されています。不思議物質タキオンが由来じゃないか、などと言ってはみましたが、そもそも物質ではありません。ここまでその辺りはスルーして来ました。
トリオンの由来はタキオンかもしれない、トリオンが超光速ならいろんな設定に説明がつく! などと息巻いてみましたが、タキオンは素粒子、つまり物質。トリオンはエネルギー。物質化はしますが、あくまでエネルギーです。
物理的に考えて、エネルギーそのものに速度という概念はないはずです。
そこで、次のとおり整理しておきます。
速度は、物体や粒子の運動の「速さ」を表す指標です。
エネルギーは、小学校の理科で習ったとおりに表現するなら仕事をする能力、「はたらきの量」を表す言葉です。
エネルギー量が大きいために「強くはたらく」「速く作用する」などと表現することはできますが、「エネルギーが速い」と言うことはまずありません。
一方で、相対性理論や量子力学においては、「エネルギーの速さ」が扱われることがあります。
例えば「光速」という言葉が表すように、光には速さがあり、つまりは速度で表すことができます。
光とは電磁波の一種。いろいろな電磁波の種類の中でも特に光波と呼ばれます。
電磁波とは、電気と磁気の相互作用により発生するエネルギーの波動です。この「電磁波」がもつエネルギーの伝播の速さを、速度で表すことができるのです。エネルギー自体が直接的な速度を持つわけではない。「伝わる速さがエネルギーの速さ」なのです。
つまりこの記事で言うトリオンの速度とは、厳密には「トリオンエネルギーが伝わる速度」ということになります。
実銃の弾丸が「運動」しているのに対して、トリオン弾は「伝播」しているものと理解するのが正確であるということです。
このことを念頭に置いておかなければ、どこからが運動エネルギーでどこからがトリオンエネルギーなのかの線引きが複雑になってしまいます。
ここまでを前提にお話を続けていきます。
〇トリオン=エネルギーの物質化とは
特に細かい説明もなく物質化が描写されているトリオン。金属みたいに粒子みたいなもの同士が結合してる状態だとイメージしやすいんですが、エネルギーに結合も分裂もありはしません。ブロック玩具みたいにカチカチ組み合わせて形を成すような性質ではないはずです。
物質でないものが物質化するとはどういう状態でしょうか。
「物質化したトリオン」ってつまり「物質化した熱エネルギー」とか「物質化した位置エネルギー」と似たような発想になりませんか。不思議すぎる。なかなかぶっ飛んだことを言っています。
とりあえず「エネルギーの物質化」で検索してみたところ、最初にヒットしたのが「ブライト=ホイーラー過程(ブライト=ウィーラー過程)」という難しそうな理論の実証実験に関する記事です。
この実験について要約すると、
①特殊な条件を整えて
②光子(光の粒子)を光に近い速度まで加速させる
③ ②の光子同士を、高エネルギー状態で衝突させる
④高エネルギー同士の衝突により「電子と陽電子」=物質が生成される
⑤それを観測する
こんな感じらしいです。
粒子というのは、物質の中でも最小の単位。目には見えない、とにかく小さな世界の存在です。
「光子」という質量を持たない光の粒子は、粒子性=物質的性質と、波動性=エネルギー的性質を併せ持っているそうです。粒子のなかでも特別な存在みたいですね。
もっと簡単に言いましょう。「光のもとになる粒子同士を、めちゃくちゃ加速してエネルギーを込めてぶつけ合うと、理論上は物質ができる」らしいです。
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この実験を知って最初に思ったことがあります。トリオンの性質が仮説どおりなら、この過程を容易にクリアできそうではないですか?
トリオンが基本的に超光速であって、その速度や進行方向を実験の条件に近い形に指定できるとすれば、この実験において最も難しい条件、「高エネルギー同士の衝突」を容易に実現できます。
変化弾(バイパー)に代表されるように、トリガーを用いればトリオンは思考だけで自在に操作可能です。過程の③にある高エネルギー光子の代わり(=トリオン)が最初から存在して、しかも自在に操作可能と解釈するなら、物質化の仕組みは意外とシンプルです。
トリオン超光速説が本当なら、極端な話、ただ大きなエネルギーのトリオン同士を互いにぶつけるだけでも、エネルギーの物質化は実現できる、ということになります。
トリオンエネルギーは、エネルギーの物質化という高いハードルを簡単に超えられる条件を、最初から持ち合わせているのです。
〇トリオンの「状態変化」を説明できるか
ここまでのお話で、
①エネルギーの速さとはつまり「伝わる速さ」であること、そして
②現実の物理法則でもエネルギーの物質化は説明可能であることを確認しました。
しかし、「物質化できそう」で満足してはいられません。
トリオンは「物質化」以外にもさまざまな特徴があります。
実のところ、3つの性質予想の3番目は最初「トリオンは物質化できる」としていました。しかし、それだけでは説明できる設定内容に限界があります。作中に描写されているトリオンの状態にはいくつかの種類があります。
・目に見えない状態
・目に見えるが「物質化」していない状態
・「物質化」した状態
・光っている状態
・光っていない状態
少なくともこれらが確認されており、さらにその中でも触れたり触れなかったり、気体状や液体状だったりと様々です。これらすべてについて、【1】と【2】を前程としながら、3つ目に挙げる性質によって説明できるようにするにはどうすればいいか。そのように考えた結果が【仮説3】です。
【3】トリオンは載せる情報に応じて速さと状態が変化する。
作中に見られるように、トリオンが様々な姿を見せていることから、水が温度によって姿形を変えるように、トリオンも何らかの要素の影響を受けて状態が変わると考えるのが自然です。ここではひとまず「情報」と仮定しました。
なぜ「情報」とするのか、なぜ「状態が変化する」ではなく「速さと状態が変化する」なのか、それは次の疑問3「3種の狙撃トリガーについて」で触れることにします。
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