
夢日記:チキン竜田と風速100m 後編
弁当台風が降り続く中、街は異様な熱気に包まれていた。人々は一心不乱に弁当を収穫し、政府が呼びかけた「弁当共食いキャンペーン」に応じて食べ始めていた。しかし、どれだけ弁当を拾い、食べても台風の勢力は衰えない。
友人と部屋に戻り、山積みになった弁当を眺めながら、ため息をついた。
「これ、永遠に降り続けるんじゃないか?」
その時、テレビから新たな速報が流れた。
「新情報です!専門家の分析によると、この台風の収穫では勢力を弱められないことが判明しました。しかし、弁当台風の原因が特定されました。それは……『未開封の弁当が台風のエネルギー源になっている』ということです!」
未開封の弁当がエネルギー源――つまり、拾った弁当を全て開封すれば台風は消えるというのだ。
「開けるだけでいいのかよ!」と友人が叫ぶと、二人で慌てて山のような弁当を次々と開封し始めた。
そのころ、全国でも同じように開封作業が進められていた。家族総出でパッケージを剥がす人々、工場でベルトコンベアを利用して開封する作業員たち。その光景は一種の収穫祭のようでもあった。
やがて、台風の勢力が徐々に弱まっているというニュースが届いた。空を見上げると、渦の中心が薄れ、弁当の雨も止まり始めた。ついに台風が完全に消滅したのは、翌日の朝だった。
「終わったな……」
友人が空っぽになった冷蔵庫を見ながらつぶやいた。外に出ると、街中に弁当の残骸が散らばり、台風の名残を感じさせた。しかし、どこか安堵の空気が流れていた。
その夜、再びテレビのニュースが流れる。
「弁当台風は消滅しましたが、全国に散らばった弁当の量は膨大で、環境問題として取り上げられています。政府は『全国弁当リサイクル計画』を発足し、余った弁当を肥料として活用する予定です。」
それを見て、友人が笑いながら言った。
「結局、最後はみんな弁当に振り回されてるな。」
こうして、長く記憶に残る「チキン竜田弁当台風」の騒動は終わりを迎えた。しかし、町の人々が「弁当祭り」と称して収穫の思い出を語り合う日が訪れるのは、そう遠くない未来だった。