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夢日記:甘く揺れる勝利の瞬間 前編

 会場は異様な熱気に包まれていた。観客席からは歓声と笑い声が入り混じり、どこか和やかな空気が漂っている。だが、コート上に立つ者たちの表情は真剣そのもの。卓球台の上には、普通の卓球ボールではなく、揺れるプッチンプリンが置かれている。

「さぁ、行こうぜ!」
隣に立つペアの男性が笑顔で親指を立てる。彼はフィリピン人風の陽気な男だが、日本語が驚くほど流暢だ。肩を軽く叩いてくるその仕草に、少し緊張が和らぐ。

「準決勝だぞ。ここまで来たんだ、負けるわけにはいかない。」
そう返すと、彼はおどけて舌を出した。

「おぉ、相棒、そんなに硬くなるなよ!プリンだぞ、プリン!でも、あれ潰れたら終わりだからな~。」
その言葉に思わず苦笑する。この競技のルールは確かに特殊だ。卓球台からプリンが落ちたら相手に点数が入る。それだけではなく、プリンが潰れたり崩れたりしてもアウト。普通の卓球以上に繊細な技術が求められる。

試合開始の合図が響く。対戦相手は、目つき鋭く、どうやらプリン卓球のベテランらしい。彼らの一挙一動から感じる余裕が、不安を掻き立てる。

サーブは相手からだ。ラケットがプリンの横腹をそっと弾き、ぷるぷると揺れながらプリンが飛ぶ。予想以上に速い。

「相棒、任せろ!」
ペアの男性が前に出て、慎重にラケットを振る。プリンは奇跡的に潰れず、こちらのコートに戻ってくる。その瞬間、彼が振り返ってウインクした。「どうだ、上手いだろ?」

ラリーが続く。お互いにプリンの揺れ方や重心を読み取りながら、慎重にラケットを振る。相手はなんとプリンにカーブをかけてきた。目を見張るテクニックだが、こちらも負けてはいられない。

「相棒、次は俺が決める!」
彼の声と共に放たれたショットは、プリンを台ギリギリのラインに落とす絶妙なコースだった。相手は追いつけない。その瞬間、会場から歓声が上がる。

勝負はまだ続くが、ペアの彼の陽気さと自信に、次第に自分も乗せられていく。これはただの卓球ではない。笑いと技術が織り交ざった奇妙で楽しい戦いだ。

そして、プリン卓球の世界は、誰よりも繊細で大胆な挑戦者たちのものだと実感する。

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