灰が降る町 第一部 #1-#3
#1
いっときも 止むことなく降る灰を
しばらくの間 じっと見ていた
いつから降っているのかはわからない
しかし、地面を覆うことはなく
手のひらに落ちた灰を見つめる
少しの間をおいて
灰は崩れ、風に消え去った
いつの間にか
遠雷は聞こえなくなっていた
#2
不意に、ざわめきが聞こえて、顔を上げた
目の前に広がるのは、よく知った街並み
足早に通り過ぎる人々、排気ガスの臭い
雑踏に呑み込まれる
灰は止んでいた
よかった、やっぱり夢だったんだ
ほっと胸を撫で下ろし、仰いだ空は
炭のように黒い雲に覆われていた
#3
街の上空に点在する人工太陽
冷たい光があまねく世界を照らしている
小さな悲鳴が聞こえた
振り返ったその先、目が合った
小学生、くらいだろうか
少年は確かに僕を見ていて
脱兎のごとく、逃げ出した
はらり、と小さな何かが視界をよぎる
灰が、降り始めていた