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#夏

【ポエム】安寧

雨上がり
立ち上る草いきれ
叢に息づき、土に蠢く
無数の影

日に炙られた 石の上
干からびて 横たわる
無数の亡骸

柔らかな土を掘って
お墓を作る

これでもう熱くないね

【ポエム】夏がまだ夏であった頃

ヒグラシの声が 遠ざかる

夏が 生き急ぐ
声にならない叫びが 急き立てる

ひとつ ひとつ 摘み取って
僕らは 確かに ここにいた

大きな花束を作って
それだけが、僕らの証明だ

寄せては返す 波のふち
砂の城も 砂浜の絵も
今、ここに立っていた 足跡さえも
ぜんぶ ぜんぶ 波の向こう

ツンと鼻を刺す 火薬の匂い
夜を埋めていく 白煙
笑い声と火花が咲く

僕らは 確かに ここにいて

ヒグ

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君想ふ

 夏の夜、君がいつも私の隣にいたことを思い出す。
 笹に短冊をくくりつける時、ご飯を食べる時、動画を見て笑う時、暑さに負けて畳に寝転がっている時、扇風機の前で涼む時、みんなで花火をする時。君がいなかったことは一度だってなかった。
 もちろん、たまにはケンカもしたし、泣いてしまう時だってあった。私のことなんて知らないフリした時もあったよね。だけど次の日にはけろりとして、何事もなかったように振る舞う、

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