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#小説

翼鯨の最期

翼鯨の最期

ラフィアが渾身の力を込めて投げた氷槍は、稲妻を纏い、翼鯨ニアルスに深々と突き刺さった。

ニアルスは尾をばたつかせ、のたうち回る。
右のこめかみから、勢いよく血が吹き出した。先ほど、カイナが短刀で抉った傷である。

巨大な皮膜でできた翼を何度も雲海に叩きつけ、身体を捻り、吼え猛る。数百匹の結晶魚がその腹の下敷きとなって死んだ。

だが、凍れる槍は鯨の腹にしっかりと埋まり、その身を冷熱で灼き続ける。

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冬が来る

 北風が、家々の戸を荒々しく打ち鳴らした。窓ががたがた震え、冷たい息吹がわずかな隙間から部屋に忍び込む。
 祖母に抱かれた少年の頬には赤みが差している。ぶるりと肩を震わせた彼の、その柔らかな絹糸のような茶色の髪を、しわが刻まれ、節くれだった手が撫ぜた。
「寒いかい。そうさね、ここんとこ、急に寒くなったからね」
 少年はもぞもぞと身体を動かし、囲炉裏の火に手をかざした。
「お日様もあんまり照らなくな

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