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2023年9月の記事一覧

翼鯨の最期

翼鯨の最期

ラフィアが渾身の力を込めて投げた氷槍は、稲妻を纏い、翼鯨ニアルスに深々と突き刺さった。

ニアルスは尾をばたつかせ、のたうち回る。
右のこめかみから、勢いよく血が吹き出した。先ほど、カイナが短刀で抉った傷である。

巨大な皮膜でできた翼を何度も雲海に叩きつけ、身体を捻り、吼え猛る。数百匹の結晶魚がその腹の下敷きとなって死んだ。

だが、凍れる槍は鯨の腹にしっかりと埋まり、その身を冷熱で灼き続ける。

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【ポエム】眩惑

あたしが あなたに眩んでいる間に
あなたはもっと先へ行くのでしょう

あなたの残像に恋する間に
あなたはもっと先へ行くのでしょう

その姿も声も、幻で、不確かで
何にも触れない この指先が
あなたの背中をかする時

あなたは ただの瓦礫になるのだわ

【ポエム】十六夜

星の光と戯れて
今日も空虚な雲を吐く

遠くで聴こえる歌声に
聞き入った先、水滴の音

髪を撫でるのは そよ風だけ
月はぼやけて溶け落ちて

波紋を残して 兎は飛んだ

【ポエム】月夜に降る

ひとひら ひとひら 舞うように
ひらり ひらり降る 花のひら

そっと 手のひらで受け止めて
そっと 地めんに横たえて
積もる 月夜の花畑

おやすみ おやすみ
頬を撫で 過ぎ行く夜風

星の光は やわらかく
雨上がりの地めんも ふかふかに

ひらり ひらり降る 花のひら
誰にも内緒の 花畑

【ポエム】白き月の光

月が夜だけのものだと
誰が決めた?

闇に生きるものたちが眠りにつき
陽の下で生きるものたちが目覚める前

暁の空の色は
消えていく月の光は

今だけは確かに
私たちに降り注ぐ