【近藤昭一衆議院議員インタビュー〔中〕】平和と環境主義を軸に 対中関係、絶滅危惧種、そして原発
環境問題に原点を持ち、知中派としても知られる立憲民主党の近藤昭一衆議院議員。インタビュー中編にあたる今回は、近藤氏に対中関係と環境副大臣時代について語ってもらった。
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▹競い合うだけの日中関係ではなく、できるところは協力を
近年、中国のプレゼンスの拡大や日中関係の悪化に伴い、排外主義的なものを含めて中国の論理について語る言説が溢れていると思うんですけれども、知中派として中国と向き合ってこられた近藤先生は、中国の行動原理はどのようなものだと思われますか。
近藤
行動原理を簡単に説明するのは難しいと思いますが、私が昔から中国の友人に伝えてきたことが2つあります。
1つは、経済成長に伴い、日本では公害による健康被害、象徴的なところでは水俣病のような問題が起き、失うものがたくさんありました。ですから、中国がこれから経済成長を目指していく中で、環境が破壊されれば、人間の生活もが破壊されるということには気を付けてほしいということです。
もう1つは、経済成長にしたがって、かつて日本では「ジャパン・アズ・ナンバーワン」、つまり日本が世界一になるのではないかとか、あるいは日本人がアメリカの土地を買い占めたりとか、日本が経済的な脅威と受け止められるようなことがあったわけです。ですので、中国が経済成長によって他国を圧迫するようなことにはなってはならないということです。今中国は再生可能エネルギーにもすごく力を入れていますし、今申し上げたことも気を付けていると思いますが、しばしばそういう報道はされることがあり、ここは非常に気になっているところです。
自分が見てきた80年代の中国の経済状況や日本の状況を考えると、戦争経験がひどく国のあり方に影響を与えている気がします。欧米列強や日本が中国に侵略をしてきたからこそ、中国は大きな国になっていくんだと、やられる側にはなってはならないんだという思いがあるのかもしれません。言葉は注意する必要がありますが、最近の報道を見ているとそういったところについては国として気を付けてほしいという風に思います。
これからの日中関係はどうあるのが望ましいとお考えですか?
近藤
例えば経済の問題で言うと、かつては、中国の安い人件費の工場で製品を作って輸出することで、日本の企業は利益を上げ、今も日本人は安い商品を買うことができています。そういう意味で、日本には中国の人件費が安かったことによって受けてきた利益があると思います。それが徐々に変化し、中国も人件費が上がると同時に技術が上がり、中国がある種ライバルになってきたところがあると思います。
しかし、日本もかつてのような右肩上がりの経済ではないですから、日中はお互いがぶつかり合うライバルではなく、可能な分野では協力していった方が良いと考えています。日本も特定の分野や商品での技術はまだまだ優れていますし、あるいは非常に丁寧に作る、いわゆる巧みの技術があります。経済安全保障法に準拠しつつ、こうした技術を活用し、個別の技術で中国と日本が協力し合っていくが大事だと思っています。
ただ、今、日中の信頼関係が弱くなっているので、協力できる分野もできていないという不安を持っています。やはり、信頼関係が持てる日中関係が必要でしょうね。こうした信頼関係を築くためには、皆さんのような若い人が中国の現地に行って、間接的ではなく直接知るということが大事だと思います。
与党と比べて野党の議員の行使できる外交的権限は限られていますが、野党議員として日中関係改善のために、どのようなことができるとお考えですか?
近藤
政権交代を実現し、与党や政権として、外交など様々な交渉ができればと思ってます。現実はまだ野党ですが、野党の議員として交流して信頼関係を作ることはできますし、政府でない民間企業等を視察するといった中国の現状をできるだけ知る、データベースを作ることは今やれることですし、やらなきゃいけないことだと思ってます。
近藤さんは過去の代表選挙では度々枝野さんを支援されてきましたが、枝野さんは親台湾派であり、中国と距離があることで知られています。最近も中国政府のことを「北京政府」と呼んで批判してらっしゃいますけれども、政治家として共に行動する上で、枝野さんの「外交観」に関してどのようなお考えをされていますか。
近藤
これは枝野さんにも直接申し上げていることではあるんですが、枝野さんと私は信頼関係があり、政策的にも近いところはありますが、今ご指摘になった部分は異なっているところがあるのかもしれません。
だ、枝野さんにはアジア外交を大切にしてほしいと当然考えています。日中国交正常化をした時には、両国の体制は違えども国交を正常化することがお互いの国民、国のためになると判断し、それと同時に、台湾との国交を断行したわけです。当時も、それに反対する意見は当然あったわけですが、それでも国交を正常化したところを大事にしてほしいと枝野さんには伝えています。それは枝野さんもわかっていると思います。
ただ、確かにそういう意見も日本にも米国にもあるし、台湾として大事にしていくというところもあるんだということで枝野さんは主張しておられるのかなと思いますけどね。
▹環境副大臣時代の成果
民主党政権では環境副大臣を務められて、今も立憲民主党のネクストキャビネットで環境大臣になられてると思うんですけど、環境副大臣としてどういった成果があったとお考えですか。
近藤
民主党政権3年3ヶ月の間に、私は環境副大臣と環境委員会の筆頭理事を務めました。筆頭理事として大きな1つの成果だと思っていたのが、原子力発電所の原子炉の40年規制です。原則40年で廃炉にするが、条件によっては延長することができるという法律です。環境委員会でこの法律が作られ、筆頭理事という法律を成立させるための先頭に私は立っていました。その中で、40年規制を実現できたということは大きな成果だと思ってきましたが、昨年の通常国会で出てきたGX法案によって自民党に戻されてしまったので、成果とは言えなくなってしまいました。
環境副大臣としては、私が始めたわけではありませんが、今も続いているのが日中のトキに関係する交流で、これに力を入れました。日本のトキは絶滅したので、中国から借りてきたトキを繁殖させて、日本の佐渡で育てて増やしているんです。そこで佐渡の子どもたちに中国のトキの生息地である洋県という所の子供と交流してもらう機会を作りました。東日本大震災が起きたので、私は子供たちと一緒に洋県には行けなかったのですが、子供たちが中国で交流をしてきてくれました。
は、日本と中国が一緒に環境を守っていく環境保護を通じて、日中の相互の理解が進んでいくことが良いと思っていて、もう一度こういうことをやりたいなと思っています。あるいは、シマアオジというヨーロッパと中国を横断し、日本に来る絶滅の危機にある鳥がいます。これはいろんな国にまたがっているので、それぞれ単独の国では保護できないのですが、中国にいる時間が結構長いので、日本と中国が先導し、他のアジアの関わる国を巻き込んでシマアオジを保護するのはどうかという提案をしています。
上海で国際会議があった際、上海の関係者がトキの復興にすごく力を入れていて、そこで私も日中韓でトキの保護をもっと力を入れたら良いのではないかと発言しました。私のインタビューは中国で報道され、反響がどれだけあったかは分かりませんが、知り合いの中国人から私の事務所に、近藤さんが日中で交流していこうと言ってくれたことはすごく嬉しかったというメッセージが来ました。成果としてどれだけ出るかはわかりませんが、自分も関心を持ったトキの日中共同での作業が今も続いていて、さらに日中韓でもっと広めていこうという中国側の動きもあるというのは、嬉しいことです。
あともう1つは、エコチル調査という子供たちに対する疫学的な健康調査をしていまして、10万組の子どもたちとそのご両親に参加いただく調査を長い時間続けて、疫学的にどういう差があるかとかを比較して研究し、差があれば、なぜそのような差が出ているのか研究するという調査を、民主党政権の時に始めたんです。これは今新たにPFAS問題で注目を浴びています。
今話題になってますね。
近藤
はい。その問題で、エコチル調査の経過を活用しろという声が上がってきていていますが、自民党政権のもとでは、今十分には活用されていないんです。だから、私は野党としてしっかりとエコチル調査を活用しろと言ってるけども、あまり政府は乗り気ではありません。政権交代をして、エコチル調査をもっと活用するようにさせたいです。この元をたどるとこれは民主党政権の1つの成果なので、今度はまさしく健康調査の成果を活用するという成果を生み出したいなと思います。
▹原子力発電の問題点とは
先ほど原発は原則40年で廃炉という規制の話もありましたが、近藤さんは2011年の原発事故以来、特に原発ゼロ社会の実現に取り組んでらっしゃいます。ただここ最近、柏崎刈羽のことも話題になっていますが、自民党政権による再稼働の動きっていうのが進んでいて、電気料金の高騰も相まって、立憲民主党や国民民主党の中からも、再稼働に前向きな声が出てると思います。そうした中で近藤さんは、現在も原発ゼロを実現すべきだと考えていらっしゃいますか。
近藤
もちろん、根本的な問題としては、原発は万が一の事故が起きた時いかに影響が大きいかだと思います。東日本大震災のときに東電福島第一原発事故が起きて、本当に多くの人が故郷を追われ、原発事故による放射線汚染が高いので救助にすぐ入ることもできませんでした。このことで救えた命も救えなったのではという思いがあります。
当時故郷を追われた人たちは今も帰れないでいて、確かにそういう人は減りましたが、それでも今1万7000人ぐらいが帰れないままです。そして帰ったと言われてる人たちも、必ずしも生まれ育った場所に帰れているわけではありません。けれども、この人たちは数の上では戻ったことになっていて、避難民ではないとされています。数字のマジックというか、政府の発表する数字にこのような人たちは含まれていないんです。ですから、とにかく原発の影響は非常に大きいですよね。万が一の事故はやっぱりあります。
もう1つ、原発は安くはないです。今経済産業省も以前とは違って原発は高いという数字を出しています。私はそれよりも本当はもっと高いと思っていて、それは発電に直接関わるお金ではない地方交付税交付金とか、発電以外にもたくさんコストがかかっているので、それも考えると原発の発電コストは決して安くないのです。したがって、もっと発電のコストが安い再生可能エネルギーにシフトし、原発はゼロにすれば良いという訴えです。
言い出せばきりがないですが、事故のことだけでなく、使用済み核燃料は未だに処理方法が決まっていない以上、これ以上核のゴミは増やすべきではないので原発はやめた方がいいです。そして、再生可能ネルギーもコストは随分下がり、原発よりは安くなってきているので、再生可能エネルギーの不安定性をどう克服するかに力を入れるべきです。
たとえば蓄電池も使用後の廃棄物をどうするか、そうそうしたことを考えていくことが大事だと思ってるんですが、今の岸田政権はそうではありません。これから作る原発は安全だとか、そういうところにお金を投資すべきだという主張です。つまり、これから開発する技術に力を入れるべきだということを言ってるので、そうではなく、もっと目の前に確立しているところにお金を投入すべきであるというのが私の考えです。
▷後編に続く…