「僕らの強みはパターン」クラフトマンシップを融合させた永く付き合える衣服を
IRENISA(イレニサ)の25SSがスタートしました。凝ったパターンメイクの洗練された衣服やヴィジュアルの独創性と、オリジナルのマテリアルを使った手仕事やクラフトマンシップを感じる真面目なものつくり。
「両立」「対比」どちらとも捉えられるこの二面性に、創作の全てに通づる一貫した哲学を感じ取れます。
レディースのパタンナー出身という共通項を持ったデザイナー小林祐氏と安倍悠治氏。二人の過去のインタビューを顧みることで、改めてIRENISAの魅力や背景を炙り出したいと思います。
「僕らの強みはパターン」
自分の線、パターンができあがってきたと感じたとき、イレニサを始めようと決めた。
安倍:
「パッと見は普通かもしれないけど、普通じゃない服。2人ともこれを作りたくて」
小林:
「大切にしているのは布と向き合うこと。生地によってパターンワークも変わるので」
「毎シーズン、パターンを実験、研究しているところがある。その積み重ねで、布から生まれる造形美をさらに極めていきたい」
―クリエーションにおけるインスピレーション源、コンセプトメイキングの方法は?
小林:
デザインは感情論、パターンは構築。この二面性を行ったり来たりしてるうちに作りたいものが見えてくる感覚です。
安倍:
自然やアートからインスピレーションを得ることが多い様に思います。コンセプトについては、素材を作りながらデザインを詰めていく過程で出来上がっていくプロセスです。
―ファッションで影響を受けたブランドやデザイナー、スタイル、カルチャーは?また、その理由は?
小林:
yohjiyamamoto•••時代を作った偉大な方なので
安倍:
クリストバル・バレンシアガ。私は前職から立体裁断でのパターンメイキングを行っていたので、50年代のクチュールからは多くの影響を受けていますし、特にクリストバル・バレンシアガのクチュリエとしての姿勢や造形には、いまメンズの洋服を作っている上でも影響があると思います。
—コレクションでは随所にブランドのこだわりを感じます。お二人の服作りの信念は?
安倍:
良い物を作るということ、プロダクトとしての完成度を高めることです。洋服はプロダクトデザインだと思っています。それらは、革新性、美的性、実用性、を含んでいることであると同時に、全てがシンプルである事だと思います。美しいものは綺麗で美しいもの、汚くて美しいものがあります。デザインして人が作った以上、どんな美しさにもラインがあって、ある程度のプロダクトとしての完成度が高くないと作る意味がないなと。新しくないと意味がないし、洋服で言ったらカッコよくないと意味がないですね。
新しい価値を作るということでは今までにないものを提案しなければいけないと思っています。それでいて着心地が良いことをシンプルに表現したいです。
小林:
今まで先人の方々が服作りをしていく中で仕様などを決めてきたと思いますが、僕らで「これはこの生地が良いんじゃないか?」「こういう仕様にしても良いんじゃないか?」という提案をしながらやっていきたいと思っています。
「これが完成でしょ?」と先人の人たちが完成させただけであって、自分たちの中での完成ではないので、新しい発見をしながら、楽しみながら、パターンを引くことやデザインをしていきたいと思っています。
先人の方々が作ったものをよりかっこよく、新しくして僕たちなりの表現をしたものがIRENISAだと思っています。
さて、25SSは20世紀のイタリアを代表する美術家、ルーチョ・フォンタナ(Lucio Fontana)からインスピレーションを得ています。キャンバスに切り込みや穴を開け、伝統的な二次元の絵画の枠を越えた、型破りな彼のアプローチを着想源に、それを独自の造形哲学の形成にまで発展させています。
Variable Void=「可変する空間」
自らを「服飾造形作家」と提える小林と安倍は、『衣服と身体の間にある“空間”を造形して、意識をデザインしたい』と話します。
『空間を纏った、リラックスした等身大が格好良い。その人から滲み出る狂気、飾らない佇まいや覚悟を感じた時に鳥肌が立つ。そこを引き出したい。』
IRENISAのシグネイチャーと呼べるMODIFIED SHAWL COLLAR JACKETの25SSモデル。BLACKと新色BURGUNDYの2色展開。
ラペル形状の美しさや直線的なフォルムには、IRENISAの尖った個性が静かに、しかし力強く宿っています。
一方でクラフト的なものつくりにも拍車がかかり、生地はモヘア混の尾州産オリジナルウール素材。よく見ると節があるヴィンテージのような素材。強撚でハリがありドライタッチなため、フォルムの美しさがより際立ちます。