CELINE HOMME 2021-22 FW MEN’S エディスリマンが描く美学の正体
2021-22年秋冬メンズコレクションは話題性、内容ともミウッチャプラダ×ラフシモンズの新生プラダがベストで終わりかなと思っていました。
しかし終盤にサプライズが。エディスリマンによるCELINE HOMME(セリーヌオム)が予想以上の素晴らしさ。多くのジャーナリストたちも絶賛したように、僕にとってもエディがディオールオムを退任した以降で、最も心揺さぶられたものになりました。今ファッションウィークの紛れも無いナンバーワンです。
CELINE HOMME 2021-22 FW MEN’S COLLECTION
TEEN KNIGHT POEM(ティーン・ナイト・ポエム)
コレクションの予告ディーザーを見て、すごい良さそうだなと思ってオンタイムにスタンバイ。ムービーのスタートからいきなりその世界に引き込ました。
フランス北中部ロワール地方にあるシャンボール城を舞台に、映画さながらの映像美と展開に圧倒されました。
中世の貴族衣装を思わせるようなフリルやテーラード、ナイトの鎧のようなレザーブルゾンやスタッズ使いなど、荘厳なシャンボール城を舞台に、今までにないようなロマンティックなアイデアを詰め込み「そう来たか」という驚きを与えてくれました。
シルエットは2021年春夏で見せた、現代的ストリートのドロップショルダー&オーバーシルエットを踏襲。そこに持ち前のシャープなスタイルをミックスし、巧みにロック色を出しています。2021年春夏のコレクションにはアンチな捉え方も多かったですが、これが今秋冬への伏線だと考えれば、そのクリエイションもむしろプラスに捉えられるだろう。
テイスト的にはグランジと言って良いのか、デニム、主にブリーチしたGジャンが効いていて、よい抜け感を演出しています。
全体を通して展開されるエレガンス×ストリートによるテイストミックスのパワーレイヤードは、わざとらしさがなく、見ていて惚れ惚れするようなスタイリングが続きます。
ボトムはワイド〜フレア気味のものをクロップド丈で穿いているのも新鮮。
スタッズ付きのヘッドギア、ギラギラしたシルバーのアクセサリー類などもその雰囲気を高めます。
90年代的リバイバルによるグランジやスケーターなど、ユースカルチャーを背景にした現代のストリートスタイルと、中世のニュアンスを含んだダークなエレガンスのコントラスト。これが僕たちを魅了したエディスリマンの美学の正体だ。
個人的にはディオールオム時代の衝撃が強く、サンローラン辺りからどうも一辺倒なクリエイションが続いているような気がして、ファンだからこそ、少し物足りなく感じていました。ディオールオム時代は変化と実験を繰り返し、毎シーズン新たな発見や驚きがあったので。
そんな閉塞感を感じていた中での今コレクション。細かい内容を見ると、過去に登場したアイテムや着こなしも割と出ているので、ちょっとしたニュアンスの違い、見せ方の違いによって、こうも新しいものになるんだなあという感想。
結論、エディスリマンが時流に流されず貫いてきた世界観はやはり素晴らしかった。加えて現代の空気感やムードを上手く吸い上げ、シルエットなど変えるところは変えてきた。そして全く新しいヴィジョンを創造し、それを証明してみせた。
ヒットアイテムを量産したデザイナーとしてはもちろん、見せ方やイメージ作りにおいても天才的能力を発揮してきたエディスリマン。アーティスティック・クリエイティブ&イメージディレクターとして再び本領発揮と言ったところか。スタイリングの妙も圧倒的だ。
長年僕が待ち望んでいたものがようやく登場した。
多くの批評家たちを唸らせるような素晴らしいコレクションは発表した。あとはCELINEというメゾンをエディスリマンが今後どうハンドリングしていくのか。それが楽しみ。ここ数年、新興のデザイナーたちに若干押されがちなところがあったが、このコレクションでシーンの中心人物に一気に返り咲いたと思う。エディスリマンが時代に寄り添ったように見せかけて、やはり時代が彼に追いついたのだろうか。
ともかくメンズファッションの歴史に残るであろう素晴らしい名コレクションでした。新しいムーブメントをエディスリマンがまた生みだす事を切に期待しています。