短くて甘い夢
今10分寝るか、空いてる電車で座って25分寝るか、、、。
そう考えながらしつこくアラームを鳴らす携帯を掴み、慣れた手つきで7:40にセットし直す。
寒くなり始めた朝、少し捲れた毛布から飛び出て冷えてしまった足先を温め直す時間が一番幸せなのではないかと思う。
私は10分後にやってくる冷たい現実から目を瞑り眠ることに集中した。
この時間の睡眠は夢を見ることが多い。
どれだけ全神経を寝ることに注いでいても頭の片隅に起きなきゃいけないという考えが居座ってるせいで、夢を見易い"レム睡眠"とかいうやつになっているのだろう。
バカみたいに幸せな夢を見る。
いつも6〜8時間は寝てるのに決まってこの10分間に。
「あんま恋愛に興味ないんだよね、私。」
目を開いて言うそのセリフは、近頃毎日のように見せられる甘ったるい恋のおかげで恥ずかしくなってしまった。
本物のそれがどんなものなのか私には分からないからきっと美味しそうな部分だけ掬い取って見てるのだろう。
甘やか。という言葉がぴたりと当てはまるようなその生活は、目覚めた私を純粋に羨ましがらせるのだ。
夢の中でこれが夢だと気付ければ、その中を自分の意思で動けるらしいけど、恋する私はそれが夢だと気づかない。
バカみたいな幸せをバカみたいに受け入れて、醒めた後の私のことなんか全然考えてくれない。
リリリリ リリリリ ヴーーー ヴーーー
10分前に聞いた同じ音で仕方なく今日を始める。
居たはずの誰かは居なくなり、さっき毛布に仕舞い直した足先はベッドの外の寒さを再び思い出す。
短い恋から目を醒ました私は心の何処かで名残惜しく思い、それと同時に少し安心していた。
満員電車でつり革にぶら下がりながら、
いつか夢が現実に。
なんて思ってしまう私にはまだ夢の中でのバカが残っているのかもしれない。
知り合って日が浅い男性から一昨日届いたご飯のお誘いに、既読さえつけられてない携帯がただひたすら現実を見せてくれた。