日記
暑いから1日家から出なかった。
今日は気温が35℃を超えたようだ。
まだ7月なのに私は残暑に似た気怠い気分で差し込む光が減り始めたカーテンの隙間を見ていた。
今日が終われば夏休みだ。
二年生からは補習があるので実際はまだ暫く学校に通わなくてはならないが、名義上"17歳の夏休み"が明日始まる。
大人になりたいと思っているうちは子供で、子供に戻りたいと思ったら大人だ。という言葉を聞いたことがあるがあれは嘘じゃないかと思う。
私は子供だけど子供に戻りたい。
外が38℃であろうが遊びに出かけ、日の落ちる前に家に帰る子供に。
17歳の夏なんて言葉、強すぎる。
私は怯み、おそらく負けてしまう。
友達はキラキラしている。
そういう風に見せているだけだとしても、見せれる部分がそうならば、概ね真実だと思う。
インスタもラインもツイッターも、載せていない所はどうだっていい。
彼らは17歳の夏と戦っている、それだけで私からすると充分強い。
画像フォルダはここ数年の記憶しか残していないのであまり好きではない。
いつだって暇を持て余した時見るのは親のデジカメに写る私の写真だ。
写真の私は正真正銘、子供で、いま憧れているそれである。
川に遊びに行った時、父も母もまだ仲が良かった。
クーラーボックスに入れていたドライアイスを触ろうとして怒られたことだけ何故だか鮮明に覚えている。
母が小さなコップに水を張ってそれをひとかけら入れると白い煙が溢れ出したことを思い出して、川に入れてみたくなったのだ。
その後、父は岩を動かしてメダカの稚魚を見せてくれたが、私は大量のドライアイスのことで頭がいっぱいだった。
写真を見て思い出せることなんてほんの一部分である上に、後から聞いた話や現在の自分の知識が上乗せされて知らぬ間に脳内補正がかかっているのだろう。
それでも未だに10年程前の思い出を掘り起こし、タイムトリップでもしたような気分になっている。
大人から見たらこれはもったいない、のかもしれない。
今こそがこの先思い出になる時間なのだから、子供の頃など思い出し感傷に浸っている暇はないと知っているのだ。
畳に寝転びながらカメラを見ていたから肘に跡がついて凸凹になってしまった。
明日から夏休みが始まる。17歳の夏。
私は戦える自信がない。
今日のような明日を何度も過ごすうちに二学期になってしまうだろうし、きっとその間に作った思い出は携帯の画像フォルダの容量に大したダメージを与えないと思う。
今は否応無しに考えさせられているが、学校を卒業したら夏という季節さえ適当に済ませるようになるのかもしれない。
本当に大人になってしまった時に思う、子供に戻りたい、が指すのはいつの時代になるのだろう。
それが今のことになるとしたら相当な脳内補正が必要だ。
みんなが持ってる自撮りアプリのように原型がわからなくなるほどに美化してしまうのだろうか。
多分私は、本当は、今が好きだ。
子供に戻りたいのも嘘じゃないけど、それよりも今が良い。
あの頃より分からなくなったことが増えて、知らなくていいことを知って、気を遣って、必要以上に考えて、素直にキラキラ出来ない今の私が本当は一番好き。
だから大人になった時、できるだけそのままを思い出したい。
そう思って今日から日記をつけることにした。