ミュージカル ジャック・ザ・リッパー 感想とか
日生劇場で上演されているミュージカル ジャック・ザ・リッパーを観ました。
ダニエル、アンダーソン、ジャックの3役がWキャストでしたが、全組合せを観ました(…たぶん!)
以下、ネタバレ全開。全部説明しとる。
感想というより解説みたいになった。
ミュージカルの時間軸
現在】
アンダーソンの独白
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2日前】
アンダーソンとモンロー、ダニエルが出会う
アンダーソンとポリーの関係
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7年前】
ダニエルとグロリアが出会い恋に落ちる
ダニエルとジャックとの関係性
ダニエルとグロリアの別れ
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1日前】
アンダーソンの部屋 withモンロー
ダニエルの事情聴取(2時間も)
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1ヶ月前】
ダニエルとグロリアの再会、からのジャックとの再会
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1日前】
ダニエルの研究室 withアンダーソン&モンロー
ダニエルの事情聴取
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1ヶ月前〜1日前〜現在】
ジャック=ダニエルによる一連の娼婦殺人事件
グロリアに気付かれていることを知ったダニエルは、良心の呵責に耐えきれずアンダーソンの捜査に協力することにしたのだった
囮作戦の計画→特ダネソング
アンダーソンとポリーの歌→囮作戦でポリー殺害
アンダーソン、ダニエルの研究室に殴り込み
俺はお前だ!→カオス→アンダーソン以外みんな死ぬ
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現在】
アンダーソンの独白
事件報告書を燃やして、事件を闇に葬り去る
一番外側が現在で、アンダーソンの告白という形。アンダーソンの告白の中で、7年前と今と1ヶ月前を語ってる。しかしアンダーソンもコカイン中毒なので、ぶっちゃけ告白内容に信憑性はない。
時系列が行ったり来たりするので一回目だけでは追いつけない部分もあったけど、整理すればそこまで複雑ではないと思う。ラストシーン=冒頭っていう構造もミュージカルでは割とよくある展開。ラストに来て、あ、これ冒頭のシーンだ、となる。
韓国ミュージカル特有の設定や展開のツッコミどころはちょこちょこあるけれど(主に衛生観念がヤバい)、韓国ミュージカル特有の音楽の良さでたっぷり耳を楽しませていただきました。
ダニエル
7年前に臓器移植の研究のためにジャックと死体の取引をした倫理観ヤバめの外科医。そのとき娼婦で闇取引の案内人のグロリアと恋に落ちて「小説のように出会ったんだ♪」なんて歌っちゃうヤバい奴。
ジャックに殺されたと思っていたグロリアが実は生きていて、7年後に再会。彼女はジャックが仕掛けた火事で全身に大火傷を負い、さらに梅毒を患っていて助かる術は臓器移植しかないと知る。しかし臓器移植が法律で禁止されていたため手術ができず、ジャックの手を借りて新鮮な臓器を手に入れてグロリアを助ける…というタテマエで臓器入手→殺人に手を染めてしまう。最終的にアンダーソンに撃たれて死ぬ。
割となんでも金で解決する。7年前のジャックとの取引も(臓器のためならいくらでも出す)、一ヶ月前の死体入手の広告も(死体一つで10万ポンド)。10万ポンドが手に入るなら死体ぐらい譲ってくれるだろうって本気で純粋に思ってそう。でもダニエルは、もしグロリアが死んで100万ポンドで譲れと言われてもたぶんグロリアの死体を譲ったりはしないでしょう? どこまでも自分中心の男。
グロリア
ロンドンの娼婦で、殺人鬼の案内人としてダニエルと出会う。殺人鬼ジャックに懸賞金がかかったと知るとすぐさまジャックを警察に売り渡してしまう。(これでジャックに殺されかけたのは自業自得だと思う)
7年前の火事で顔や体に大火傷を負い、さらに梅毒を患い"内臓が溶け"ていく体になってしまった。ダニエルと再会したけど、醜い姿を見られたくないからとダニエルに向かって「見ないで、会いたくない、消えて」とか言っちゃう。だけど結局ダニエルと暮らしてるっぽい?
ダニエルの凶行には気付いていて、カオスシーンで重要な働きはするんだけど、とにかくダニエル視点からの「グロリアを愛してる!救いたい!」ばかりなので、グロリアの心情とか人物像とかはあんまり読めなかったな…。
ダニエルの殺人を止めて、最終的には自分で頭を撃って死ぬ。
ジャック
7年前の殺人鬼。案内人(グロリア)や受け子がいたということは、殺し屋的なことをしてたのかな?
自分を警察に売ったグロリアを殺そうとするけど「その人はダメだ!」とダニエルに邪魔をされ、一度はグロリアを解放するが、その後彼女の家に放火。自身は警察に追われ、銃で撃たれて川に落ちる。ここで死んだとされる。
7年後は一応ダニエルの犯行の隠れ蓑としての存在であり、実在していたかどうかは不明。ダニエルが臓器を必要としたとき、口笛と共に現れる。
じゃあな、ダニエルという言葉を残して消えた。心を闇に落とした人間の元にどこからともなく現れそうな悪魔のような存在。
アンダーソン
コカイン中毒の刑事。娼婦連続殺人の捜査をしている。絶対ポリーのことが好きなのに素直になれない不器用な男。感情的で、椅子蹴り飛ばしたり殴ったり蹴ったりする(カオスシーン参照)。モンローに付き纏われてて不憫。
ポリーと気持ちが通じたと思ったらポリーが殺されてしまい(赤い花渡すからだよ!)、そこで一連の事件の犯人がジャックではなくダニエルだと気づく。この事件の詳細が明るみになり世間がダニエルに同情することで、ポリー含む事件の被害者達が悲劇を飾る小道具になってしまうことを危惧し、モンローも殺してこの事件を闇に葬り去ろうとする。
ポリー
アンダーソンとただならぬ関係の娼婦。恋人未満。どう考えてもアンダーソンが好き。すれ違う。酒で気持ちを誤魔化している。捜査中のアンダーソンに「力を貸そうか」と言ったり、頼みがあると言われて理由も聞かずに「オーケィ」と答えたり、どこかしら幸せな人生を諦めている感じがする。雪だわ!と無邪気に喜んだり、バラ大好き!と言って髪に挿してアンダーソンに見せたり、とても可愛らしい。死なないで欲しい。だけど結局囮作戦に巻き込まれてジャック=ダニエルの5人目の犠牲者になってしまう。ジャックとはマジで無関係なので、一番可哀想な人である。
モンロー
ロンドンタイムズの新聞記者。
お金大好き。特ダネ大好き。犠牲者や関係者や刑事の写真を撮りまくる。連続殺人事件の情報を俺だけに教えてくれとアンダーソンに取引を持ちかける。アンダーソンと共にダニエルの犯人暴露シーンに居合せ、一緒に事情聴取する。
囮作戦を特ダネとして編集長に報告し、翌日の朝刊に載せるように手回しするが、意図せず号外として当日に情報が出てしまう。これで作戦が破綻し、囮だったはずのポリーが殺されてしまう。
アンダーソンが銃をぶっ放して爆発寸前の研究室から一度は逃げようとするけど、記者としての異常なまでの執着心から「あと一枚」撮ろうとして戻ってしまい、爆発に巻き込まれ、たぶん死んだ。
私はけっこう好きな作品でした!
前情報では「内臓が出てくる」「ラスト15分が全て」「フランケンシュタインとは違う」などなど。
まじでラスト(15分かどうかはわからないけど)のカオスが作品の全てで、ラストのカオスのためだけにチケット追加できる。
割と前半で万里生モンローの曲M5「もっと恐ろしい事件」で市民たち達が新聞紙をばら撒いて、この後どうなるの?と思ったら全部舞台上にばら撒かれたまま続いて、その後も新聞紙の演出のたびに舞台上が雑然としていく様がロンドンの街の混沌を表しているようでおもしろかった。切り裂かれた喉を新聞紙で押さえて、血塗れになったそれが血飛沫の表現になるところとかも表現として好きだった。不謹慎だけど綺麗だなと思った。
一番好きなキャラクターはポリー。
万里生くんが好きだしモンローもキャラとして好きなんですけど、それよりもポリーが好きすぎた。
普通にエリアンナさんのファンなので好きで当たり前なんですけど、エリアンナポリーの歌声でお釣りがくる。M3「捨てられた街」は上演前から歌唱動画も上がってたやつだし、とってもソウルフルでエリアンナさんの歌声〜!って感じで好きだったんだけど、M27「ずっと昔の話」での儚げな、どこか少女らしい可憐さを感じさせる歌声もとっても素敵でした。ガンガンにフラグ立ってたので、このあと死んでしまうのがわかってたから余計に涙が出ましたよね…。
モンローはいろいろぶっ飛んでて怖いですね。人物としてはコミカルだしご本人の顔立ちが可愛らしいから小動物的な愛らしさがあるように思えるけど、死体の写真バシャバシャ撮ってるわ金で刑事を脅すわ殺人事件が起こって「5000ポンドだ!」とか言っちゃうわ。記事の金額の話や分け前の話をするからとにかくお金大好き金の亡者なのかなって思うけど、たぶん新聞記者としての矜持の方が高い。金が欲しいなら、最後の最後に危ない橋を渡らずに安全なうちに逃げれば助かったのに、記者として「あと一枚」を求めて戻ってしまったが故に命を落としてしまった。新聞記者として生きて、新聞記者として死んだ愚かな男。冒頭でアンダーソンが「俺は悪魔と出会った」っていう悪魔は、たぶんモンローのことも意味してるんじゃないかな。(作品的にはダニエルのことだと思うけど)
韓国版だとめっちゃバリトン渋めの声の人が歌ってるので、日本で上演するにあたってよく万里生くんキャスティングしたな!?と思いました。M5「もっと恐ろしい事件」の曲中のロングトーンとラストの「じけ〜〜〜〜ん」のところめちゃくちゃ好き。
カオスシーンでナイフ一本で警官2人を殺っちゃうんだけど、強すぎない???となる。ぐったりガルルルなダニエルを後ろから抱えてナイフでほっぺをぺちぺちするシーンがヤバいやつすぎてダメ(すき)。
もしかして死んでないかも?とも思う。
グロリアはヒロインだしキーパーソンだけど、私の中でポリーが強すぎていまいち感情移入できなかった〜。くやしい…。時代が時代だから同情するところもあるけど、招いた悲劇はだいたい自業自得なのに悲劇のヒロイン感出してきてなんやこいつとすら思ってしまった(脚本のせいやで)。ごめん。
あとMay'nちゃんの音域に合ってなくて、一番グロリア的においしいであろうM15「風とともに」でたびたびひっくり返ってしまうのが残念だった。キー下げるとか発生しやすい母音に訳すとかできなかったのかなあ。ここもWでもよかったのではと思う。他にこの役やって欲しい女優さんいっぱいいる。
アンダーソンは和樹さんと松下くんのW。
個人的に松下アンダーソンめちゃくちゃ好きだ。声が甘い。何があったかはわからないけどコカインに手を出してしまった弱さが出てる。ポリーとのキスは本当にギリギリまで自分からは行かないし、ポリーの手から薔薇が落ちるのも見てない。不器用で少しズレてて、危うい。
加藤アンダーソンはもう色気…!って感じ。強さを保つためにコカインに手を出したのかなって思った。ポリーとのシーンで割と早いタイミングで自分からキスしに行っててそのときの顔が良すぎてオペラグラス割れるかと思った。ポリーの手から薔薇が落ちるのをしっかりと視認して慟哭する。
松下アンダーソンはM20「灰色の都市」が似合う。加藤アンダーソンはM26「俺はこの街が嫌いだ」が似合う。
ジャックはまたまた和樹さんと、堂珍さんのW。
加藤ジャックは期待通りのラスボス感。背が高いので存在感があって、フランケンシュタインの怪物を観てたらこのジャックはおおよそ想像できるよねってなった。微笑みが妖艶。
堂珍ジャックは人外感・悪魔感が強め。浮いてる?足音がしてない気がする。声の掠れ具合が絶妙でセクシー。ステッキがスタンドマイクに見えます。個人的には堂珍ジャックが好み!
ダニエルは達成くんと賢章くんのW。
達成ダニエル、顔ちっさ!顔きれい!グロリアの「かわいいわね」とか「素敵ね、あなたの顔」がめちゃくちゃしっくりくるお顔立ち。誠実そうで真面目そうで、だから好きになったらまっしぐら。それこそ道を誤っても気づけないぐらいに。M28「俺がジャックだ」で、まさか自分が…?と受け入れるまで時間がかかっている。腑に落ちてからの瞳孔の開き具合がヤバい。
賢章ダニエルはグロリアと恋に落ちた時の浮かれポンチ感が強め。M28「俺がジャックだ」より前の段階(頭がおかしくなりそうでした!あたり)で、もしかして自分がジャックなのでは…?と気付いてそう。朦朧とした状態でモンローにナイフを持たされるところのぐったりしてるのに殺意剥き出しの瞳が好き。
個人的にはグロリアのシーンとカオスのシーンとの対比が色濃い賢章ダニエルの方が好みかな。
M28「俺がジャックだ」の雷の演出がイイ。
雷の音でダニエルとジャックが入れ替わって、ダニエル(達成くんと賢章くん)がジャックの芝居をし、ジャック(和樹さんと堂珍さん)がダニエルの芝居をするところで、完璧に入れ替わっていて、これこそ芝居の妙…!と思った。
というかカオスシーン、舞台上にジャック、ダニエル、アンダーソン、モンローがいて、この時点でもう大混乱なのに銃の音と共にグロリアが出てきて、そういえばあなたまだいましたね!?という気持ちになった。男4人の時点で舞台上が濃すぎたね…。
長々と書いてしまったし、ポツポツ思い出しては書いて戻って書いてを繰り返したので粗があるかもしれないし、書ききれてないところもあるかもしれませんがお許しください。まだ上演中だし、あと一回か二回くらい見るのでジャックザリッパーフィーバーの真っ只中なのです。
あと数回観たあとまた気付いたことがあれば追記するかもしれないし、余韻に浸って何も書かないかもしれないw
三連休でまとめて4公演観たので今現在私の頭の中ジャックザリッパーでいっぱいなのです。勢いがすごいの。
ここまでお読みくださりありがとうございました!