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リペア+リメイクの楽しさを実感 RE.UNIQLOスタジオ【リペアサービスを試す】
約10年間愛用したユニクロのジーンズに、とうとう穴があいてしまいました。高価なものではないのですが、長年生活を共にした愛着のある服を簡単に捨ててしまうのはしのびないもの。そこで今回、ユニクロが行なっているリペア・リメイクサービス「RE.UNIQLOスタジオ」に、ジーンズのリペア・リメイクを依頼してみました。一連の体験から感じたリペアすることの魅力、そして楽しさについて考えます。(文責 デザイナー 藤元貴志)
Re.UNIQLOスタジオとは
株式会社ユニクロが行なっている、全商品をリサイクル・リユースする取り組み「RE.UNIQLO」。そのうち、服のリペア、リメイクサービスを提供する場が「Re.UNIQLOスタジオ」です。
ドイツの店舗での活動がきっかけで始まり、日本では現在15店舗(2024年12月現在)で展開されているようです。
"愛着のある服を、大切に着続けるためリペアする。思い切って、新たなアイテムへとリメイクする。服を本当に必要とする人々のためにリユースする。新しい服の原料や資源、資材としてリサイクルする。もう着られなくなった服の次の役割を創造し、未来のために生かしていく。
ジーンズの現状
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穴があいたのは左ひざの部分。
裏から簡易的に当て布をしたりして使っていましたが、さらに破れが広がり見た目にもすぐ分かる程になってしまいました。他の部分はしっかりとしているので、この破れさえ直せればまだまだ着れそうです。
リペア・リメイクを依頼する
伺ったのはユニクロ 世田谷千歳台店。幸い、自宅から自転車で来店できる距離に「Re.UNIQLOスタジオ」実施店舗がありました。"ふらっと行ける"ということだけで、気持ち的なハードルは大きく下がります。
多くの新商品が並ぶ店内で、ひときわ異彩を放つ「Re.UNIQLOスタジオ」のブース。修理に使うであろうミシンや糸、またリペア・リメイクのサンプルなどが並んでいて、さながら工房のよう。
ブースに人はおらず、近くで陳列作業をしていた店員さんにリペアをしたいと申し出ました。店員さんは嬉しそうに対応してくれたので、(面倒な客と思われるのではないかと内心不安でしたが) 歓迎されている感じでほっとしました。
「Re.UNIQLOスタジオ」担当の店員さんがブースに来られ、いよいよリペアを依頼します。まず持参したジーンズを店員さんに見せたところ、開口一番に「懐かしい柄ですね!」と言われてびっくり。このジーンズが販売されていた頃に店員になられたそうで、思い入れのある柄なのだそう。
そして、リペアだけを行なうか、あるいは更にひと工夫(リメイク)するか、どうしましょうという相談。せっかくなので、入口にあったSASHIKOのサービスもお願いしてみました。
SASHIKO(刺し子)とは、糸で線を描くように模様を刺繍する技法。模様の柄と糸の色は自由に決められるのですが、さんざん悩んだ挙げ句、派手すぎない青色でお願いしました。その他、裏地の色や他の補修箇所なども相談。30分くらいかけて丁寧にご対応頂きました。
ちなみに、リペア作業は別日に行なうそうで、約二週間後に受け取りということになりました。
・普通にユニクロを利用するのときと違い、店員さんとの会話がたくさんあるのが新鮮でした。そういえば普段、店員さんと話すことなんてあまりないです。
・刺し子の模様や糸の色を悩むのに結構時間がかかりました。既製品を買う時とは違う思考回路を使う感じで、自分の判断次第で商品が変わるという、モノに関わっている感があります。
・数か所以上修理すると新品のほうが安くなってしまうので、直す場所、直さない場所は見極めが必要。一概に新品よりも安く完璧に直る、というわけではないというのは注意が必要です。
完成した衣類
そして二週間後、完成したジーンズを受け取りに同じ店舗へ再度赴きました。ジーンズがどんな感じでリペアされたのか、楽しみでワクワクする気持ちでしたが、店員さんは前回とは違う方で、受け取り自体もすぐに終わりました。
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帰宅して、リメイクされたジーンズを見てみます。
裏当てがしっかりと施されて、丈夫そうになりました。刺し子の模様も綺麗に入っています。
・新品で買う時とは違い、新鮮さはあまりないのですが、愛着のあるものがまた使える状態になって戻ってきてくれたというのはじんわりとした嬉しさがあります。
・一方で、裏当てをもう少し暗い色にして、糸をもっと目立つ色にして目立たせたほうが、ワンポイントとして効果的だったかもしれません。このあたりは依頼する側の想像力が試されるところでもあり、面白くも、悩ましくもあるところ。
・リメイクを依頼したときは店員さんと色々相談しながら決めたので、受け取るときにも、リペアをしてみてどうだったのか、作り手の思いを聞けたら尚よかったという気持ちもありました。
感想
今の世の中は、モノが壊れたり傷んだとき、それを捨てて新品に買い替えてしまうのが、一番手っ取り早く、手頃で便利な対処方法です。一方で、リペアやリメイクは、手間がかかり、費用もそれほど安いというわけではありません。そうしたときに、敢えてリペア、リメイクを行なうことの原動力は何でしょうか。地球環境に良いから、という意識の高い倫理観? 私は必ずしもそれだけではないと思っています。
後述する、私たちがまとめた提言冊子「リペア社会をデザインする」でも述べていますが、人がポジティブな感情でリペア、リメイクをするとき、そこには必ず「感情」が介在すると思います。愛着があるから直す、一工夫する、長く使う・・・そうして更に積み重なっていく「愛着」は、新品を次々と買い替えて消費していく暮らしでは決して得られない価値を生むものです。
「Re.UNIQLOスタジオ」には、現在の大量生産・大量消費社会の世の中が、どのように循環型経済へとシフトしていけるのかという問いに対して、良いヒントがたくさんあると感じました。
リペア社会をデザインする
私たちHitachi Circular Design Projectでは、武蔵野美術大学岩嵜研究室とサーキュラー・エコノミーに関する共同研究を進めています。リペアが生活に根付くための観点をまとめた提言および未来シナリオをまとめた冊子「リペア社会をデザインする」は下記からダウンロードできますのでぜひご覧ください。