綺麗な修理で高まる愛着 Patagonia Worn Wear【リペアサービスを試す】
2012年に購入し、11シーズン愛用してきたパタゴニアのダウン。パタゴニアの衣類は頑丈な作りで気に入っているのですが、どんな衣類であっても、長く使っているとどうしても傷んでくるもの。パタゴニアは、衣類を長く使い、循環させる「Worn Wear」という取り組みを行っています。今回、この公式サービスを利用してダウンのリペア(修理)を試してみました。(文責 デザイナー 藤元貴志)
Patagonia Worn Wearとは
「Worn Wear」は、中古品の再販、リペア、お手入れ、リサイクルなどを行なう、パタゴニアの循環型サービスの総称。衣類をできるだけ長く着ることで、地球環境への負荷を下げることを目的としています。
ダウンの現状
さて、私のダウンの現状です。
「DAS・パーカ」という化繊ダウンで、2012年に神保町のアウトドア用品店で購入したもの。以来毎年冬の季節にヘビーユースしてきました。一見、大きな劣化はないように見えるのですが・・・
このように、袖口の両側の縫い目がほつれ、中の綿 (化学繊維) が見えています。
それほど目立つものではないのですが、使用していると少しずつここから綿が出てきてしまい、徐々に中の綿が減ってきていました。
リペアを依頼する
公式アプリで修理を依頼した上で、近隣の店舗へ持ち込みました。
(有料での配送にも対応しているようです)
店員さんに声をかけると、すぐにレジへ案内されました。修理箇所を店員さんが簡易的にチェックの上、概算見積もりを出してもらい依頼が完了。ここまで所要時間は15分ほどでした。後日、リペアサービス部門の担当者が詳細にチェックし、正式な見積もりと完了予定日がメールで送られてくるとのこと。ちなみに国内でのリペア作業は、全て鎌倉にあるリペアサービス部門にて行われているとのことです。
私の場合は、吉祥寺店で修理を依頼した2日後に、詳細な見積もりがメールで送付されてきました。広範囲に破れていたとのことで、当初の見積もり(約3000円)から値段が上がってしまったのですが(約7000円)、それでも買い替えるよりは安価でしたのでそのままリペアを進めてもらうよう依頼しました。
仕上がった衣類
約半月後にリペア完了のメールが届き、受け取りに再び同店舗へ行きました。ちなみに、リペア品に限った話ではないですが、パタゴニアでは基本的に持ち帰り用の袋はもらえず、そのままカバンなどに入れて持ち帰ることになるようです。少し新鮮な感じですが、カバンに空きさえあれば袋が無くても特に問題はなく、そのまま着て帰ることもできるので合理的とも言えますね。一緒に「Worn Wear」のステッカーも頂きました。
こちらがリペアの完了したダウンです。ぱっと見ではリペア箇所がよく分からないのですが、少なくともほつれはなくなっているようです。
リペア前と後の写真を見比べてみたらリペア内容がよく分かりました。矢印部分に縫い目が増えていて、思っていた以上に広範囲にあて布による補修が入っていることが分かります。にもかかわらず、あて布された素材が他の箇所と全く同じで、見比べないと分からないくらい自然に直っているのが驚きです。中の綿も補充されているようです。
感想
見積もりの金額が送られてきたときは正直ちょっと高額だと思ったのですが、こうして丁寧にリペアされた衣類を見て、その作業を想像すると、この金額に見合う納得感と満足感があると感じました。
リペアには、パッチワークのようにリペアを"見せる"直し方もある一方、リペア跡が分からないくらい元通りに直す方向性もあり、後者は今回のように、素材や部品を保有するメーカーにリペアを依頼する大きなメリットだと思います(全ての補修がこのように元通りになるというわけではないと思いますが)
新しいものを買うという体験には、新鮮さや便利さなどから来る喜びや感動があります。一方で、リペアによって愛着のある着慣れた服が再び着れるようになって戻ってくることの嬉しさや、丁寧にしっかり直してくれる手仕事に対する感動も、それに勝っても劣らない体験といえると思います。
今回のリペアを通して、私はこのダウンへの愛着が更に増して、これからも長く大切に使い続けたいと思うようになりました。こうした愛着の醸成は、メーカーとユーザーの理想的なつながり方ではないかと思います。
リペアが持つ大きな力を、ぱっと見では分からない、きれいな補修跡から感じることができました。
リペア社会をデザインする
私たちHitachi Circular Design Projectでは、武蔵野美術大学岩嵜研究室とサーキュラー・エコノミーに関する共同研究を進めています。リペアが生活に根付くための観点をまとめた提言および未来シナリオをまとめた冊子「リペア社会をデザインする」は下記からダウンロードできますのでぜひご覧ください。