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「銀行と共に地元九州の未来を創る」元銀行員が伝える地方創生の在り方とは | 中西 亮太

昨今、コロナショックなどの影響から、地域企業を取り巻く経営環境が厳しさを増しています。そこに拍車をかけるのは人手不足や後継者不足という「ヒト」にまつわる経営課題。

厳しい経営環境を打破する一手として、企業の事業推進に密接に関わる地域金融機関では取引先企業への人材マッチングに取り組み、経営人材の確保や副業・兼業人材の活用を進めています。

そのような社会動向を背景に、サーキュレーションは2017年から地域金融機関とのアライアンスを始めました。現在では全国各地の71行庫以上(2021年10月末時点)の金融機関と提携しながら、外部のプロの知見を複数企業でシェアして経営課題を解決する人材活用モデル「プロシェアリング」を全国企業に提供しています。

引用:株式会社サーキュレーション 23年7月期 第1四半期 決算説明資料

そしてサーキュレーションがここまで提携先金融機関との連携を強めることができた背景のひとつに、「前職である銀行への恩返しをしたい」「地元九州の地方創生をしたい」という熱い想いを持つ中西 亮太の存在があります。

中西は、九州の企業の経営改革に取り組み、そこから紹介元の銀行への本業収益(融資その他)にも繋げたことで、2022年11月度「泣ける仕事賞」(※)を受賞しました。

本記事では、銀行・企業・サーキュレーション・プロ人材の4者での連携を通して「地方創生」に邁進する中西の想いと、サーキュレーションが取り組む地方創生の在り方について取り上げていきます。

※泣ける仕事賞:売上以外の成果や日々の仕事のプロセスの中で、お客様や社内のメンバーに感動を与えた社員に贈られる賞。


1.銀行を辞め、地方創生を実現するために選んだ手段とは

九州支社 コンサルタント|中西 亮太(なかにし りょうた)
福岡県に本店を構える地方銀行で営業課長を経験した後、サーキュレーションに入社。元銀行員の経験を活かして、アライアンス先の銀行の深耕、銀行に紹介いただいた企業へのコンサルティングまで幅広く行う。
別途、福岡市内のスタートアップ企業と首都圏等のプロ人材のマッチングを支援する、「外部人材による IPO(新規上場)支援プログラム」も担当。地方スタートアップエコシステムの構築にも邁進中。

ーー 2022年11月度「泣ける仕事賞」の受賞、おめでとうございます!まずは、中西さんのご経歴を教えてください。

中西:
サーキュレーションに入社する前は、大学を卒業後、地方銀行に勤めていました。
期間は15年程勤めていて、最年少で営業課長を務めるなど順調にキャリアを進めていました。その後サーキュレーションに転職をして今に至ります。

ーー 銀行のご出身だったのですね。どのような経緯でサーキュレーションを知ったのですか?

中西:
実はサーキュレーションはその銀行のアライアンス先で、その時にプロシェアリングの存在も知ったんですよね。 
支店施策として企業へのサーキュレーションの活用を推進していて、当時の企業紹介数は全支店の中で1番でした。
その中でこのビジネスモデルに共感し、紹介する側ではなく提供する側に、そして更に普及させたいと強く思うようになったため転職しました。

ーー なんと!サーキュレーションが前職の提携先だったんですね!なぜプロシェアリングを普及させたいと強く思っていたのですか?

中西:
銀行員時代、私は「地元九州のお役に立ちたい」という想いを持っていました。しかし、企業の支援をする手段が融資や、銀行本部や関連会社のコンサル、ビジネスマッチング先の紹介などに偏ってしまうことや、目先のノルマに追われることにジレンマを感じていました。

そんな中、外部の知見を活用して企業の経営課題を解決するプロシェアリングは本当に地域企業にとって必要なサービスだと感じ、多くのお客様に紹介していたのです。
紹介したお客様が喜ぶ姿を見るうちに、プロシェアリングは特に地方の企業にとって必要だと確信しました。次第に、このサービスを本気で広めたいという想いが溢れてきたので、現九州支社長である久良木にその意思を伝え、入社を決めました。

ーー かなり運命的な出会いですね…!そんなきっかけを経て、中西さんは現在どんな役割を担っているのですか?

中西:
プロシェアリングコンサルタントという仕事をしています。
あらゆる業界のあらゆる経営テーマ(例:新規事業開発、業務改善、人事制度構築など)に対して、企業の課題を特定します。その上で課題解決が可能な、豊富な経験・知見を有するプロ人材を選定し、法人企業・プロ人材・サーキュレーション三者によるプロジェクトを組成します。プロジェクト開始後の伴走支援も通して、経営テーマの推進や事業課題の解決へと導くことが主な業務となります。

2. 銀行と共に歩んだ地場企業のDX・SDGs推進

ーー 今回泣ける仕事賞を受賞された背景には、地元九州の企業でのプロジェクト支援があったとのことですが、どんなプロジェクトだったのですか?

中西:
株式会社林田産業様という一般廃棄物収集運搬(ゴミ収集運搬・し尿汲取)などの事業を展開する企業でのプロジェクトでした。
業務効率化や新規事業開発、社員の方へのSDGs理解浸透、ブランディング強化など、2年間で4名のプロを活用し、7プロジェクトのご支援をさせていただきました。

引用:SDGsを軸に、かつて3Kと呼ばれた事業を大胆にリブランディング。社員の士気が向上し、新卒採用にも成功 〜株式会社林田産業
※この図の制作以降、新たに1プロジェクトが開始しています。

ーー 2年で7プロジェクトも?!かなりスピード感のあるご支援ですね。詳しく聞いていきたいのですが、どんなきっかけでプロジェクトがスタートしたのですか?

中西:
最初のきっかけは、林田産業様の社長が当社とお付き合いをしていた銀行に「社内のペーパーレス化を推進して業務を効率化したい」という依頼をされた際、ビジネスマッチング先として当社を紹介いただいたことでした。

ーー 銀行からの紹介だったのですね。そこから具体的にどう業務効率化を推進されたのですか?

中西:
行員様よりいただいた林田産業様の依頼に対して、中小企業向けの業務改善やIT戦略立案を多数手がけてきたプロ人材を推薦しました。全社的な業務効率化を見据えたシステム改善や社内コミュニケーションのためのITツールの導入により、結果として年間6,000枚超の用紙削減、年間130時間超の労働時間削減を実現しました。

ーー かなり大幅な業務改善ができましたね。その他、様々なご支援をされていますが印象に残っているプロジェクトはありますか?

中西:
SDGs推進に関するプロジェクトですね。
ただすぐにプロジェクト始動というわけにはいきませんでした。
一般廃棄物収集運搬(ゴミ収集運搬・し尿汲取)という仕事は、「3K(きつい、汚い、危険)」と言われる業務。現在は誇りを持って事業運営されていますが、現社長も事業を承継した当初はコンプレックスを感じていたとのことでした。
同様に、当時の社内には自社の事業にややコンプレックスを感じている社員も多く、社長は「自分の仕事に誇りを持って欲しい」と強く思われていました。

ーー そこからプロシェアリングでプロ人材を繋げて、どのように変わったのですか?

中西:
プロ人材と林田産業様の社長と議論を重ねる中で、「廃棄物処理事業という仕事は、SDGsに親和性の高い事業である。廃棄の仕事こそSDGsそのもので、現代の世の中になくてはならない仕事だ」と、まずはプロジェクトメンバーが自社の事業の価値を再認識しました。

そこで従業員全員に「いま注目を浴びているSDGs事業を自分たちがやってるんだ」と理解してもらいたい。そんな想いが大きくなり、SDGs推進に関するプロジェクトが始動しました。

ーー 社長の想いが詰まった身の引き締まるプロジェクトですね…!具体的にどのように推進していったのですか?
中西:
まずは、SDGs推進に知見のあるプロ人材と幹部社員とで、SDGsに関するディスカッションを行いました。
林田産業様の事業における社会的な提供価値を、SDGsで定められている17のゴールに沿って一つひとつ言語化し整理し、SDGsに取組む目的を明確にしていきました。

ーー なるほど。「林田産業様だからこそできるSDGs」を考えるところからのスタートだったんですね。
中西:
そうですね。その後は、従業員への教育プロセスを整理し、従業員にもワークショップを交えたSDGsの研修を実施しました。既存事業を取り巻くリスクや機会を中長期的に捉え直して、重要課題を洗い出し、取り組むべき「可能性」を取りまとめて、どの事業部で取り組むか、新しい部署が必要かなども検討しました。
3ヶ月ほどの短期集中型のプロジェクトでしたが、最終的に「今の、ちゃんとSDGsできてたかな?」という会話が従業員同士で生まれるほど、従業員全員にSDGsに取り組む姿勢を持っていただくことができました。
また自社サービスの社会的価値の認識統一や、言語化により、会社はこれからどの事業を拡大させるべきかも明確になり、廃棄から再生の社会の実現、資源の利活用企業への転換のために、プロジェクト終了後には、M&Aも実施しました。

ーー たった3ヶ月で!?非常にスピード感のある密度の濃いプロジェクトだったんですね。
中西:
そうですね。またそれだけで終わるのではなくその後は、アウターブランディングの強化にも取り組みました。広告代理店のクリエイティブ・ディレクターとしての経験を持つプロ人材と共にサステイナビリティサイト制作、採用ツール作成など社外に対する発信の強化を行いました。結果、SDGsへの取り組みにおいて福岡県から高い評価をいただきました。
県から補助金を受け、地方自治体が主体となって行うSDGsイベントの企画立案が舞い込むようになったりしたのは、大きな成果でしたね。

ーー 詳しくお話しいただきありがとうございます。まさに林田産業様・銀行・サーキュレーション・プロ人材の全ての存在なしでは実現できなかった支援ですね!

3.銀行と「共に」歩む地方創生とは

ーー 今回もそうでしたが、いつも企業やプロ人材だけでなく銀行とも連携しながら進められているのですか?

中西:
はい、銀行も地場の企業に寄与したい想いがある中で、一緒に企業のサポートをすることは多いですね。地方のお客様は銀行からご紹介いただくケースが多く、銀行は当社にとって掛け替えのないパートナーです。

ーー なるほど!地方の企業という観点も踏まえ、銀行との連携も取り入れている背景もお聞きして良いでしょうか?

中西:
はい、特に地域企業は内閣府が推進する「先導的人材マッチング事業(※)」の後押しもあり、銀行側とサーキュレーション側、企業側と多方面に良い影響を与えることができるためです。

(※)「先導的人材マッチング事業」とは、
地域金融機関がサーキュレーションのような業務委託のプロ人材仲介も含めた職業紹介事業者等と連携して地域企業にハイレベルな人材の活用を推進し、そのような取り組みに対して内閣府が補助金支援を行うという事業。

ーー 具体的にどんな良い影響があるのでしょうか?

中西:
そうですね、特に良い影響は三者で地方創生に向けた取り組みができることです。
地方の中小企業の大きな悩みは人材不足ですが、地域企業の人材不足という経営課題を一番わかっているのは、一番密に地域企業と関わっている地域金融機関です。

地域金融機関は、「ヒト、モノ、カネ、情報」といわれる経営資源の支援をしていますが、企業に融資を行う「カネ」に関する側面での支援が大きな強みではあるものの、それだけではVUCA時代における専門性の高い本質的な支援をすることはなかなか難しいというのが現実だと思っています。

ーー そこで「カネ」以外の支援に向けて「先導的人材マッチング事業」が活きるのですね。

中西:
はい。自行以外にもサーキュレーションのようなアライアンス提携を結んだ外部人材活用サービスを企業に紹介することで、地域企業の事業成長を促進することが可能となります。地域企業の事業成長は、雇用の創出や所得水準の向上などさらなる経済循環を生み出し街全体の活性につながります。
そのため、銀行・企業・サーキュレーションの三者が連携することで地方創生に向けた取り組みを推進することができるのです。

ーー まさに銀行員時代から抱いていた「地元九州のお役に立ちたい」という思いが体現されていますね!

中西:はい、地元九州の企業のために、自身が銀行員時代に持っていた理想を叶えるために、プロシェアリングをもっともっと広めていきたいと考えています。

4.銀行員時代の理想を叶えるために、今地方で働く銀行員と共に提案したいこと

ーー 中西さんご自身が育った地元だからこそ、前職のご経験があるからこそのお気持ちがひしひしと伝わります。「自身が銀行員時代に持っていた理想を叶えるために」という言葉、非常に印象的ですが当初の理想とはどのようなものなのでしょうか?

中西:
そうですね、「銀行業務を通して地方の企業経営に直接的なお役立ちをしたい」というのが理想です。

ーー 「叶えるために」とありましたが、中西さんご自身の理想とはギャップもあったのでしょうか?
  
中西:
やはり地域企業は、融資を受けた資金を運用できる「ヒト」がいなければ会社の存続は厳しいものだと感じています。
銀行員時代、日頃から多くの中小企業の社長に会い、魂が込もったサービス提供などへの想いを聞く中で、いざ「社長の夢を実現させたい!」と思っても、自分が考えていた直接的な経営課題の解決というアプローチよりは、融資やビジネスマッチング先の紹介といった間接的なアプローチがメインでした。
大前提として、銀行の存在は地域企業の経営に必要不可欠ではありますが、もっと本質的なお手伝いがしたいという自分が描く理想とは若干の相違があり、ジレンマを抱えていました。

ーー そういった「ジレンマ」は中西さんの中でサーキュレーションに転職されて解消された部分はありますか?

中西:
ありますね。サーキュレーションであれば、外部のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決する新しい人材活用モデルであるプロシェアリングを通じて幅広い経営テーマに直接的な対応ができます。
銀行と共に企業に提案し、銀行からの融資も含め、最適な選択肢を地方の企業にご提供することが可能となります。

 ーー なるほど、やはり「地方創生」という観点ではプロシェアリング、銀行どちらも不可欠なのですね!

中西:
その点は強く感じます。また銀行への恩返しをしたいという気持ちは常にありますね。地方銀行の信頼があるからこそ企業にお会いできている側面があります。
私がサーキュレーションで想いを持って「ヒト」の面から地方創生をするためには、銀行から企業を紹介してもらって終わりではなくて、一度企業を紹介いただいたならば、行員様の想いも背負い企業成長を一緒に伴走し続ける存在でないとけない。元銀行員としての想いを背負っているからこそ強く考えています。

ーー お話しいただきありがとうございました。最後に、今後のキャリアについてお伺いしても良いでしょうか?

中西:
はい、今後は、従来よりも一歩踏み込んだ銀行とのアライアンス連携を進めたいと考えています。今取り組んでいる施策を着実に進めてより深い銀行連携を実現し、地方創生に向けた取り組みをより推進していきたいですね。

ーー 自身の経験からくる熱い想いが感じられる中西さんの言葉がとても胸に響きました。改めて中西さんありがとうございました!


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最後までお読みいただきありがとうございました!

執筆者:寺田 創
編集協力:山下 起暖