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【不妊治療】受精卵を見たことはあるか

受精卵、それは卵子と精子が融合してできる一つの細胞。人体の構造の始まりであり、私もこの一つの細胞から誕生した。受精卵は細胞分裂を繰り返し、上手く成長すると受精してから概ね5日ほどで胚盤胞に到達する。胚盤胞は胎盤と胎児になる部分から構成されており、私が経験した高度不妊治療、体外受精では見た目の綺麗さを判断基準に培養士がグレードを与える。

タイトルに戻ろう。
私は受精卵を見たことがある。
そして同じく、受精しなかった卵。
「今回は受精しませんでした」と電話口での培養士の説明を淡々と受け入れた経験もある。
そして受精したが残念ながら胚盤胞まで到達できなかった卵の頑張り(※受精からの日毎の細胞分裂過程の写真)を目の当たりにしたこともある。

それらの多くの上手くいかなった経験の上に、
唯一の胚盤胞が出来上がった。

これらは不妊治療だからこそ見ることができた妊娠の過程である。

あの少し歪だった胚盤胞がトツキトウカを経て、
この世に誕生し、そして今では私の体を支えにつかまり立ちをしている。私に笑いかける。晴れた日は窓の外をキラキラ輝いた瞳で見つめる。楽しい気分のときは声を出して笑うし、様々な欲求を泣いて表現する。一丁前に離乳食には好き嫌いがあり、苦手な食材は口を一文字にして開かない。添い寝をすれば、どんどん私に近寄ってくるため、私は体中がバキバキである。当の娘は、どことなく満足そうに寝ている。引き寄せると熱いくらいの体温が私に伝わる。生きている、と感動する。

不妊治療は経験したからといって、
そのすべてを知ることは不可能だ。
それぞれの要因があり、それぞれの苦悩や悩み、
そして個人個人のゴールがある。

不妊治療経験者の多くは、何故そこまでして子どもか欲しいのかとカジュアルに問われることが多いらしい。確かに不妊治療は健康面、金銭面、そして治療スケジュールと仕事との両立と、確実な妊娠が約束されていない中で、手元のカードを切っていくシンドさがあった。そして先が見えない。時に確固たる覚悟が必要な治療だと個人的には捉えている。その負担を考えると聞いてみたくなる気持ちはわかる。なぜ?どうして?子どもが欲しいのか。

わからない。
でも猛烈に会いたかったのだ。

もし近くまで来てくれているのであれば、
医療の力を借りてでも私から迎えにいきたい。

胚盤胞を移植した日、頭上のモニターを眺めていると内膜の上にキラッとした光が見えた。
その日から私は奇跡を目の当たりにしている。

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