【連載エッセイ】嗚呼・・・熟年婚活~[2.ハイスペックに惹かれて、現実を知るーMr.A]
結婚願望がなかったワーキングウーマンのチャレンジはいかに・・・
「有楽町SEIBUの前で待ち合わせしましょう」
婚活アプリでマッチングし、1か月くらいいいかんじのスパンで
メールのやりとりが続いたA氏といよいよ1回目のデートをすることに。
* * *
Reikiヒーリングのルミカさんからおすすめされた
会費0円の出会いサイトは、毎日すべての人を確認するのも一苦労
というほど、流れるように様々な男性からアプローチが来て、
たまに「まともかな」と思う方には「いいね」を返し、
サイト上でのやりとりを始めるも、平均3回くらいのやりとりで
お相手からも私からもブロック。。というパターンがほとんどだった。
会ってもいいかな。と思った方もいたが、会うまでいかず。
真剣交際のための相手との出会いを期待している私に対し、
ほとんどの男性はそうではなかったようだ。
もう一つの国際的ネットーワークを謳うアプリに集中する。
女子アピール下手、甘え下手な私は、だいぶ戸惑ったものの
ルミカさんのアドバイスに従い、 不本意ながら、男性に好印象をもたれやすいプロフィール文を書き、ルミカさんが撮ってくれた「男性受けしやすいポーズ」の写真を載せてみると、こちらも毎日それなりにアプローチがくる。
ところが、写真の印象で、いいかも。と思ってその方の自己紹介文をみると
愕然、ショックを受ける。
この人も、この人も、この人も、そしてこの人も・・・・!
なんなのこれ⁈
おそらく定例文や定例ネタというのがあって
それらを引用していたのだろう。と後から察したが
みなさん、同じネタで自己紹介している。
・デートは公園
・手をつないで公園を歩きたい
・旅行はいっしょに温泉に
・手料理を食べたい
・「チャーミーグリーン」のCMのような老夫婦になりたい
・年をとってもいつまでも手をつないで公園を散歩したい
これは、相手が悪いというより、私がこういう人たちを
引き寄せているのでは?
と思い立ち、ルミカさんのアドバイスはこの際一切無視して
自分で書きたいことを書いた自己紹介文に変更した。
私が出会いたいタイプは、できれば趣味や好むもの、嫌いなことが
似ていることはベースにあった上で
・食事を大切に思っていていっしょに美味しく食べれる
・どんなことでも「がんばっている」
・自分のことは自分でできる(当たり前だけど、できない男性多すぎ)
・国際感覚がある(意識がある)
・夢ややりたいことがある
こんな感じの男性を知ると、老若男女問わずとても惹かれる。
そして、このような方がたは、たいてい既婚である。
男性は遠回しに表現しても刺さらないようなので、
ストレートに決定的な文言をいれた。
〝海外に住んだことがある人”
すると
明らかに今までとは違うタイプの方々からアプローチがくるようになったのだ。前より数は減ったけど、「まとも」に検討できるようになった。
そして、気になった方には軽やかに積極的に反応して
メールのやりとりを何人かと始めることになった。
その中で、テンポよく非常にスムーズなメールでのやりとりがいいなと感じた42歳・コンサルタント、大学講師というA氏。
19年間のニューヨーク在住、勤務を経て、日本に帰国して間もない。
超高級有名ホテルに勤務され、歴史的な国際政治の式典に立ち会われた。
らしい。
これがA氏のご自慢のキャリアで、3冊もご著書を出されていて、4冊めをご執筆中という。3つの大学でポスピタリティの講義、全国で講演、TVにもコメンテーターとして出演、雑誌でも連載執筆 etc. まあ!すごい!
私は感嘆し、3冊のうち2冊は速攻取り寄せて読み
おっしゃっていることがウソではなさそうなことを確認して、
ニューヨークでの生活やキャリアのお話をうかがうのを楽しみに
初対面のアポイントメントをした。
私の勤務する会社の近くの、品の良いお蕎麦屋さんでランチということになった。
大きなRIMOWAのスーツケースを伴い現れたA氏。
お写真と変わらぬ端正なお顔だち、清潔感もある。
「大きなお荷物は、これからご出張ですか?」
とうかがうと、帰国してから宿無しなので一式を常に持ち歩いている。
ということだった!いろんなところを転々としているらしい。
ん・・・大丈夫かしら・・・?
私のところに転がり込みたい。ということか?!
気を引き締めながら、おしゃべりを続けた。
お仕事も決まったお仕事は今はないようで、お金持ってないのか?!
と焦ったが、ランチはごちそうしてくださった。
お会いして明かされたのは、「42歳・谷村雅人」はサイトネームで、本名は○○○○で、年齢は50歳。ということだった!生年月日も教えてくださり、身を明かされた。バツイチで、お子様が2人。NYの法律により、65歳まで3人の生活費・教育費を支払い続ける離婚契約をしている。
現状の様子は気になるが、デートに進むことにした。
私は婚活にあたり、ルールをつくった。
初対面でOKだったら、その後3回はデートしてみること。
3回デートルール。
1回目で「あれ??」と思うことがあっても、2回目に挑む。
2回目で「ちょっと・・・」と思うことがあっても、3回目に挑む。
そして、最低3回は会ってみて相手を判断することを課した。
さて、私はA氏には大いに期待していた。 知識は豊富なはず。一流を知っている人だから、センスや価値観も 洗練したものを持っているはず。 なので、デートの場所選びもA氏にお任せした。そしてA氏から連絡が入った。「有楽町SEIBUの前で待ち合わせしましょう」 私はわくわくしていた。どんな素敵なところを案内してくださるのかしら! もしも、高級ホテルに行ってもサマになるように、ヘアメイクを整え、おしゃれスタイルをキメて、勇み足になってだいぶ早めに待ち合わせ場所に着いてしまった。
A氏は待ち合わせギリギリに来た。前回より小さいが、やはりスーツケースを伴っていた。「こっちですよ。」と、さっそくお食事のお店に向かおうとする。「ここから歩いてすぐですよ。」と言い、元ニューヨーカーらしく足早に歩く。私も歩くのは普段から速足なので、このテンポ、いいわ!と、A氏について行きながらほくそ笑む。
「ここですよ。」 と誘導されたお店の入り口を見て、私は何度も後ずさりしてお店のサインを確かめる。 ここ??どこの店? 先に階段を上って行き、「早く」と私を待つA氏。 「え、っと、、ここですか?」と、期待に反した場所に呆然とする私に、 「そうですよ。ここです。美味しいんですよ!」
まさか・・・・・・・ あまりのショックで足が前に出ず、本当にこのまま帰ろうかと思う。超高速でこのシチュエーションの理解と、A氏への興味がぐるぐると駆け巡り、とうとう足を踏み出した。私の足はふらつき、やっとの思いで階段を上がりお店に入る。 そこは、全国チェーンの激安居酒屋だった。わざわざ予約をとってくれていた。「いらっしゃいませー!こちらのお席へー」
A氏はちゃっちゃと席に座り、私がまだ座る前から、A氏はいきなりテーブルにある告知を私に突き付けて「早くこれ登録して!」と急かす。まだ座って落ち着いてもいないのに、いったい何なの?! 「はやく、はやく、登録して。」とものすごく急かす。何なのかとよく見ると、登録しただけでドリンク割引になるサービスだった。
この時点で席を立とうと思った。
呆れて、ショックで、平静を取り戻すのに苦労しながら・・これがこの人との初めてのデートなのだ・・・とかみしめる。 A氏の方は、この居酒屋が相当お気に入りらしくメニューも知っていて、自分が食べたいものだけさっさと頼む。2品ほどと生ビール。私も2品頼んで生ビール。おつまみはほどなく無くなってきたので、追加で頼みましょう。とメニューを開くと、「もう頼まない。」という。お腹すいていませんか?きっと足りていないと思うし、私ももっといただきたいと思うのだが、頑なに「ボクは頼まない。」 なんだこれ?失礼なんじゃないの~??と思い、もういいや。と自分の食べたいものを追加で頼んだ。すると!「追加分は払って。」という耳を疑う発言が飛んでくる。
普通なら、A氏サヨナラ。となるが、3回デートルールをつくったばかりではないか! むむむ、、、これ、2回目、3回目ある~?! と自問自答しながら、結果「決めたことはやろう。」と2回目に進んでみた。 しかし、、、、3回目にはどうしても行けなかった。 お店選びやデートのふるまいだけでなく、ご自慢の肩書をめぐるネタやライフスタイル、人づきあいなどなど、どういう志向がある方なのか知りたいと思っていたが、「なるほど」と尊敬の思いでうなずけることはほぼなかった。
そのうち、A氏は某有名人の方の付き人として、北の外国に10日くらい行くと言って意気揚々と出発して行った。その間に私の気持ちは冷め、おしまい。
今、どうしていらっしゃるかしら。最近、某有名人の方が世の中の話題になったので、ふと思い出した。