最近見た・読んだもの(2024年1月)
カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』
2005年に発表された、イギリスの小説家カズオイシグロによる長編小説。
『介護人』として働く、とある施設で育ったキャシー。回想とともに、徐々に施設や出生の謎が解き明かされていく。
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phaさんと木皿泉が紹介していたので読み始めた。
とにかく細かい感情の表現がリアルで、本当に体験談をありのままに書いてるのかなと錯覚してしまう。
↑の『積読チャンネル』で、人間が生み出した自然物ではないものを継続するべきか否かという話をしていてそれを思い出す。
人間のエゴや人権について考えさせられる。
読んだ後「人は死ぬんだよな」とふと思って、のちのち後悔しないようにと家族との旅行を計画し始めた。いつかやろう、だとやらないのでいい機会を与えてもらったなと思う。
映画『mondays/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』
2022年公開。監督はCHOCOLATE Inc.所属の竹林亮。本作が2作目の劇場映画作品。
小さい広告代理店で勤める吉川。憧れの大手企業からスカウトの声がかかっており、近々転職を検討している。
激務のため家にも帰れず会社で朝を迎えたある月曜日、後輩から『タイムループしている』と告げられる。自身のキャリアの為にもどうにかループから抜け出そうとするが、実は部長の願望が関係していて…。
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リビングで夫氏が見始めたので一緒に見た。
映画の作り云々より、個人的には年齢を重ねてもやりたいことにチャレンジすることとか、仲間の熱さとかにグッときた…想像以上にいい映画!ライトにも楽しめるし、感動モノとしてもよい。誰にでもオススメできる作品。
映画『マルコヴィッチの穴』
1999年公開。監督は本作が映画監督デビュー作品となるスパイク・ジョーンズ。脚本はチャーリー・カウフマン。
いけてない人形師のクレイグは、妻のロッテと倦怠期を迎えており家庭の雰囲気もあまり良くない。就職先で俳優ジョン・マルコヴィッチの脳内に入れる穴を見つけ、同僚のマキシンのひらめきにより穴を利用したビジネスを始めるが…
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タイトルだけ知ってた作品。TSUTAYAで借りて鑑賞。自分であらすじを書いてても改めて謎だなあと思う。
マルコヴィッチがマルコヴィッチに入ってマルコヴィッチだったシーン、シュール。というか展開も何もかもシュール。
マルコヴィッチ越しだと好き、って何なんだ。天井が低いのは必要な演出だったのか。謎だなあ。予告編に『不思議の国のアリス』と比喩があって、なんか確かにそんな感じかも、と思う。メルヘンではないけど。
映画『ゴーストバスターズ(2016)』
ゴーストバスターズシリーズ3作目、27年ぶりの作品。監督はポール・フェイグ。
エリン・ギルバートは大学での終身雇用を目指している素粒子物理学者。以前共著したゴーストについての本『過去からの幽霊』をきっかけに、ゴースト退治の依頼が舞い込む。過去の仲間であり共同執筆者であるアビーと再会し、ともに依頼を受けることに。
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なんかずっと笑ってた。この前見たメンインブラックの続編があんまり面白くなかったので期待してなかったのだけど、すごい良かったな…。
ケヴィンのおバカぶりがすごい可愛くてツボだったのだけど、他の人のレビューを見てると『今までの女性キャラクター(見た目だけ良くて頭が悪い)の扱いを踏襲してる』と書かれていて、素直に笑えなくなってしまった。確かに完全に顔採用だったしな…。
演技、アドリブなんかい。すごいな。
お化け達もキュート。やっぱマシュマロマンかわいい〜。
映画『ソナチネ』
北野武による4作目の監督作品。1993年公開。第46回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門選出。
東京の暴力団、村川組で組長を務める村川。納得のいかないことがあればカタギであろうが海に沈める、仲間も殴るなどかなり暴力的な男。敵対する組との抗争のため、手下とともに沖縄に駆り出される。沖縄の豊かな自然の中、仲間と共に穏やかな時を過ごすが…
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全く前情報なしに鑑賞。アウトレイジを見た後だったので、これもヤクザなんだな~と思う。寺島さんとかみんな若い。
言うことを人によって変える上司は北野映画あるあるなのかヤクザあるあるなのか。
寺島さんと勝村政信が仲良くてかわいい。紙相撲のシーンとか素で笑っててかわいい。銃すらおもちゃみたいに遊ぶ無邪気さが少し怖い。ヤクザ組織という特殊な環境のせいで、子供のまま大人になってしまったのだろうか?と思ったりもする。
登場人物が愛しくなってきたところで…終盤は虚しい。展開はかなりアウトレイジと似ているなと思った。
久石譲の曲がめちゃくちゃ良い。映画全体の雰囲気をしっとりと感じるのは音楽の影響もかなりありそうだと思った。
映画『ビリーバーズ』
2022年公開。原作は山本直樹による漫画作品。監督は城定秀夫。
修行と称して無人島で生活する、カルト教団信者の三人。和やかな雰囲気で共同生活を続けるも、禁欲状態や外部の人間の乱入などを経て次第に関係性は変化していき…
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(^-^)←不気味〜
性的なシーンが多いのが印象的なのだけれど、社会性を考えなくていい環境となると動物としては正しい形なのかなとか思ったりする。全裸で海とか開放的でちょっとうらやましい。そういえばヌーディストビーチとかもあるよなあ。
波のシーンとか亀とか、どういう意図かはわからないシーンは多い。原作はもっと独特な雰囲気なんだろうなと思う。山本直樹作品、読んだことない。
性欲は抑える事ができなくても、根本的に信仰心はあるんだなと思う。
宗教が優先順位の一番になって、自分の頭で考えられなくなってしまうのは怖い。
だんだん登場人物たちの入信した経緯がわかって、それぞれここに至るまでそれなりの理由があるんだなと思う。てか先生原作者だったんかい。
久住昌之『麦ソーダの東京絵日記』
『孤独のグルメ』原作者、久住昌之さんのエッセイ本。2021年発刊。webメディア『みんなのごはん』の連載記事をまとめているそう。
飲食店や食べることへの愛情を感じられる食レポと、東京の思い出の場所を巡る様子が書かれている。久住さんのルーツを知れるエッセイがたくさん。
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久住さんのインタビュー記事が良かったので借りた。
酒場と街歩きの日記という感じ。東京に馴染みがある人はきっと読んでて楽しいだろうな。
読んでると居酒屋さんに行きたくなる…!独身の時は居酒屋とか一人で行ってたの思い出す。また行きたいなあ。最近、バイト帰りに無性に飲みたかったのをなんとなく我慢してしまったことがあったのだけど、これを読んだら今度からはふらっと行ってみようかなと思うようになった。
エッセイ的な要素もあって、マンガだけでは分からない、久住さんの考え方が知れる。
いつもニコニコな印象だったので、細かいところにケチつけたりしてるのも人間らしくて良かった。手入れ不足でビールまずいのいやですよね、わかる。
ドラマ『Q10』
2010年に日本テレビ系列で放送されたテレビドラマ。脚本は木皿泉。
過去に心臓を手術している高校生、平太。なんとなく人生を達観して生きていたところに、謎の女性型ロボットQ10が現れる。Q10がロボットということは周りに隠しながら、クラスメイトとして一緒に過ごしていくことになる。
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まだ全部見てないのだけど、1話でもう号泣…
授業料が払えてないから点呼時に名前を呼んでもらえない生徒がいて、その子のためにクラスメイトが総出で一生懸命叫ぶシーン。若者が一生懸命なだけで泣く。
今見るとキャストが豪華。独特のちょっと寂しい感じはなんなんだろうな。
クラスメイトがみんな素直ないい子たちすぎて(実際はもっと悪い子もいるでしょ的な)、正直フィクション色も強めだなあと思うこともあるのだけど、世界観の強さで「これでいいじゃん」「この子達はそうなんだ」とそのまま思わせてくれるような感じがする。
こういう優しい世界があったっていいじゃん。という気持ちになる。なんか本当に独特な優しさなんだよな。
主人公は高校生たちなのだけど、主人公の親が「人付き合いが苦手で外で働くのが怖い」と公言するシーンがある。
ドラマとかだと大人って、子供たちに答えを与える役として使われることが多いと思うけど、そういう型にハマった役割に収まってないのがリアルでいいなあと思った。いわゆる大人らしくない大人も存在していいと肯定されている感がある。やっぱり木皿泉、好きだなあ〜。
アガサ・クリスティー『春にして君を離れ』
アガサ・クリスティーによる小説(当時は別名義で発表していたそう。知らなかった)。1944年発表。
優しい夫と子供三人に恵まれ、順風満帆な人生を送っていた(と思っていた)主人公ジェーン。遠方で暮らす娘の看病を終えた帰路に、何もない宿泊所で何日も立ち往生することになる。何もすることがない中、次第に自分の人生について振り返る。
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よくタイトルを聞くので読んだ。
自分は妻、親としてよく努めてきたと思っていたけれど、今までの家族の態度や会話を振り返ると、もしかしてそうでもなかった…?と疑心暗鬼になっていくという話。
初っ端に、たまたま同級生と出会って会話を交わすシーンがあるのだけど、そこで高校時代の自分の汚くて醜い感情を思い出してぐわ〜となった(本筋にはあんまり関係ない)。
主人公がやってきたことと、自分の生まれ育った環境が結構重なってしまう。だから子供たちだけでも自分の意志を持って育ってくれたのが救いだなあと思う。30歳くらいまで引きずってたのが私だから…。
忘れてた感情を思い出せるような作品。すごい。
最後の二択はもはやホラーだったな。
アガサ・クリスティーは初めて読んだのだけど、他にも読んでみたくなった。
結城浩『数字文章作法』
結城浩さんによる文章作法をまとめた本。数学文章とあるけれど種類に問わず文章全体に通じていると思う。
少なくとも書籍になっている文章はこういうことが意識されていそうだと思った。
趣味だし…と思って、引用とかはなんとなくで見よう見まねでやっていたところだったので、一度こういう教科書的な本に触れてよかったと思う。
こういう指南本的なものを読むと、つい『これを全部できないといけない』と思ってしまいがち。
書籍を書くわけでも、論文を書くわけでもないのだし、読みやすい文章を作るためのヒント、くらいで考えてもいいのかも。頭の片隅にあるのと、まるっきりないのとでは違ってくるだろうし。
結城さんは『読者のことを考える』をモットーにしているのだけど、私の場合は自分が書きたいという原動力だけで書いているので、そこの考え方を自分に取り入れるのが難しかった。
その後phaさんがこの記事の中で、趣味で書いているブログは『外向きと内向きの半々のつもりで書いている』と言っているのを見かけて、その考え方はしっくりくるなと思った。内向きすぎても自己満足すぎるし、外向きすぎても『仕事じゃないのにな…』となってしまう。
映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』
Twitterで話題だったので見に行った。
あらすじを書くのが難しい。銀行に勤めている普通の人間、水木が主人公なのだけど、取引先のお屋敷に向かう途中に鬼太郎の父(のちの目玉おやじ)と出会って、一緒にゴタゴタに巻き込まれていく感じ(雑)。
なんかあんまり感想がない(泣いたけど)。なんでだろう。もう忘れちゃってるのかもしれない。
よく動くアニメだった。害のない妖怪がかわいいね。
『ゲゲゲの鬼太郎』以外の水木作品の要素もあるみたいで、そっちを読んでみたいと思った。
今回からちょっと概要とかあらすじ的なものも書いてみたけど、難しかったなあ。負担にならない程度に、でも読み返して自分が分かる程度にまとめられたらなあと思う。