妻との出会い
忘れないように、妻との出会いを書き留めておこうと思う。
私が20代後半の頃、横浜の会社で働いていた。実家は九州の宮崎で、年末年始には帰省していたのだが、フェリーを使うことが多かった。車を持っていたわけではない。人間のみの乗船である。
ではなぜフェリーを使っていたのかというと、理由が2つある。1つ目は運賃が安いからだ。一番安い雑魚寝スタイルの2等客室であればかなり安く乗ることができた。当時若くてお金がなかったので、これは魅力的だった。
2つ目は飛行機の予約が難しかったからだ。どちらかというとこちらの理由の方が大きい。昔は今ほど休みが分散しておらず、日本人が一斉に移動するため飛行機のチケットが取りづらかったのだ。飛行機の便数も今より少なかったかもしれない。
ある年の年末の日の夜、いつものようにフェリーで帰省すべく、私はフェリーターミナルにいた。確か有明から宮崎に行く便だったと思う。フェリーターミナルに着くと既に乗船が始まっており、私は急いで乗船した。そして出航。
…あれっ?何かがおかしい。
なぜ気がついたのかはおぼえていない。何か違和感があった。出港時間が早過ぎたのか、船内アナウンスを聞いたのか、、、、そう、私は乗る船を間違えてしまったのだった。当時アクアラインができる遥か前で、有明から確か木更津行きのフェリーが出ており、私はそれに乗り込んでしまったのだった。切符のチェックもあっただろうに、そもそもなぜ乗り込めたのか、未だ謎である。
船は出港してしまっているし、どうしようか一瞬迷ったが、木更津に連れて行かれてはたまらないので、すぐに船員さんに話をした。そうしたら何とフェリーは私のためだけにバックして港に戻ってくれたのである。たぶん出港して数分以内の出来事で、まだ港は目の前という状況だったから戻ってくれたのかもしれない。(皆さんにはご迷惑をおかけしました😅)
そうして改めて宮崎行きのフェリーに乗り込んだ。そのフェリーに乗船していたのが妻だったのである。
妻は関東の人間で、宮崎にツーリングに行くために一人でフェリーに乗っていた。そう、妻はバイク乗りだったのである。おそらく妻はヘルメットを持っていたか、ライダージャケットを着ていたか、とにかくバイク乗りであることが一目でわかる格好をしていたのだと思う。私もバイクを持っていたので話しかけたのだろう(全然おぼえていないが)。
そこで意気投合し、電話番号を交換して別れた。携帯など無い時代なので、妻は実家の電話番号、私は会社の寮の電話番号である。正月休みが終わって横浜に戻ってきた私は、さっそく公衆電話から妻の実家に電話をかけてみた。
ー それから30年になる。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?