借りたレンズで家を撮る@東京都庭園美術館(2023/5/27)
六本木の富士フイルムスクエアでXF10-24mmF4 R OIS WRを借りて、東京都庭園美術館の「建物公開2023 邸宅の記憶」であれこれ撮ってきたよ~という日記です。前置きが長いですがご容赦ください。
どうする標準ズーム問題
現在、わたしの手持ちのレンズは単焦点のXF35mmF1.4R(以下XF3514)と標準ズームレンズのXC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ(以下XF15-45)の2本。
基本的にはXF3514をメインで使い、XC15-45は旅行先等で広い画角が欲しくなったときのために一応保険としてカバンに入れておく……という運用をしていたのですが、な~~んか撮ってて楽しくなくて、結局XF3514に付け替えてしまうことが結構ありました。
XC15-45の写りが悪いわけじゃないんです。レンズではなくわたしの問題で、昔から標準ズームってどう扱っていいかわからないんですよね。
画角的な面白さもないし、単焦点ほど写りがよいわけでなし。ただ、ちゃんと対象が画角に収まってきちんと映ってますよ~というだけの写真になってしまう。上手い人ならグッとくる画を撮れるんでしょうが、わたしの腕ではとてもとても……。
なので買い替えようとあれこれ検討した末に、いっそ広角ズーム行っちゃうか! と候補に躍り出たのがXF10-24mmF4 R OISでした。
作例も心惹かれるものが多いし、店頭で実機を触ってみたら大きさや重さも許容範囲。もちろん絞りリングもあるし質感もいい感じ!
XF3514との使い分けも明確だし、望遠端が24mmまであるのも便利そう。今使ってるX-S10は防塵防滴じゃないから旧型で十分だし、中古ならだいぶお手頃です。
ただ、自分は広角を使いこなせるのか? 重さは許容範囲内と言っても長時間撮っていたらしんどくなってこないか? 等々ちょっと心配な点もあったので、今回、富士フイルム公式の「トライアルサービス」を頼ってみることにしました。
まずは装備を整えて
トライアルサービスとは、六本木と大阪にあるフジフィルムのサービス拠点で行なっている、カメラやレンズのレンタルサービスのこと。ほとんどの商品が当日17:30までの返却なら無料で借りられるというあまりに太っ腹なサービスです。
数日前に予約ページを覗いたら枠が埋まっていて白目になったけど、開店直後に突撃したら空いているカウンターで無事受け付けてもらえました。次借りる時は気をつけなきゃ……。
スタッフさんが「きょうは近隣で運動会があって貸出が多いので、返却時には少し混み合うかもしれません」と仰っていたので、カメラ本体や望遠レンズの貸出希望だったら断られていたかもしれない。
てかそれで予約埋まってたんだろうな。
①渡された用紙に住所氏名を記入→②免許証とクレカを渡してコピーを取ってもらう(プリペイド式のau PAYカードでも普通に受け付けてもらえた)→③用紙に記入した緊急連絡先(家族等)への電話確認というステップを経て、つつがなく受け取り完了。テキパキ担当してくださり、10分もかかりませんでした。ありがとうございます!
いざ建物展へ!
慣れない東京メトロの乗り換えに手間取りつつ、白金台駅に降り立ち歩くこと10分少々。たどり着いたゲートから静かな小路を通っていくと、木々の隙間から建物が見えてきました。
ドラマ「名建築で昼食を」で知って以来、ずっと来てみたかった場所だったので、おおっドラマで見たまんまだ! と感激してしまった。
本館(旧朝香宮邸)
東京都庭園美術館は、朝香宮鳩彦王とその家族が暮らしていた邸宅が元になっています。フランスに留学し長期滞在した際に目の当たりした「アール・デコ博覧会」に強く影響されており、その優れた建築意匠から、現在では重要文化財に指定されているのだとか。
シンプルでモダンな西洋建築の玄関を守るのは一対の狛犬という和洋折衷感がたまりません。よくみると親子だ! かわいいな。
公開終了間近の土日ということで、だいぶ賑わっていました。なるべく人が入らないように撮ったので少々不自然な画が続きますがご容赦ください……。
大ホールには允子妃殿下が着用されたという着物が展示されていました。細やかな刺繍は尾長鳥や菊などおめでたい図柄でまとまっています。色も色だし慶事用なのかな。
こちらは大客室の天井付近。壁上部連作壁画は設計者のアンリ・ラパンによるもの。
シャンデリアも天井も窓も、どこもかしこも幾何学模様で飾られていて華やかで飽きないんだけど不思議と落ち着く。色彩が統一されているから?
食堂の壁は草花の柄のレリーフで埋め尽くされています。金属のように見えるけど、石膏を銀色に塗ったものだとか。大客室との間のドアも幾何学模様で埋め尽くされていてちょっと圧倒されます。
石膏は壊れやすいのでお触り厳禁ですが、コンクリートで壁を再現したブロックが展示されていてそちらはOKでした。よい体験型展示だ。
階段には当然のごとく赤絨毯! テンション上がります。
お着物の女性グループが代わる代わる階段をバックに写真を撮りあっていて正直ちょっと邪魔とても華やかでした。気持ちはわかるよ!
上った先にはかわいらしい星型の照明が!
いや本当にこちらの邸宅は照明がどの部屋も凝っていて素敵なのです。こちらは若宮の居室のものですね。あと透かし彫りもひと部屋ひと部屋意匠が違って面白い。これはなんのためのものなんだろう? 換気?
若宮居室の暖炉を飾るはロイヤルコペンハーゲンの「三羽揃いのペリカン(ペンギン)」。当時は馴染みがなくて混同されたのかな? 優美なフォルムともの言いたげな視線がなんともカワイイ。
殿下居室の壁紙の縁がひとつひとつ銀糸で飾られていて、さりげない凝りようにくらくらした。とんでもなく手がかかってないですかこれは。
円形の書斎は大きな窓に囲まれて開けた雰囲気もありつつ、間接照明の穏やかな光で執務に集中できそうな雰囲気。ガラスの飾り棚にはきっとお気に入りの品々を飾っていたんだろうな。
書斎と地続きの書庫。カーテンはおそろいですね。
部屋自体は小さいながら、壁一面(向かいもだから二面?)に作りつけられた天井までの本棚は結構な迫力です。当時はきっとよりすぐりの本でぎっしり埋まっていたのでしょう。
妃殿下の寝室。天蓋ベッドみたいなルームランプがおしゃれ!
現在は無地のシンプルな壁紙ですが、展示されていた当時の壁紙は赤の派手めな柄入りで、だいぶ雰囲気が違いそうです。
最後にたどり着いたのはベランダ。一通り見て回ってすこし疲れたところで、ここの椅子に腰掛けて休憩……床の大理石の白黒と、大きな窓から見える緑の取り合わせにものすごく心が落ち着きました。
(同じように休んでいる方が多数いらした)
ちなみにこちらは殿下と妃殿下の部屋からしか出入りできない作りになっています、夫婦の憩いの場だったんだろうなあ。
総じて、趣味の良い方が隅々まで心を尽くして作り上げた上質な空間という感じで本当に居心地がよかったし、この素敵な空間が大事に遺されて、こうして今、自由に拝見できるって本当にありがたいことだな~と思いました。
特に2階の居住スペースは、確かにここに誰かが住んでいたんだなという現実感が感じられてよかったなあ。なんだろう、上質だけど豪奢すぎない、ひとの暮らしが想像できるスケール感というか……。
新館(ギャラリー)
渡り廊下を通ってたどり着いた新館にはギャラリーとミュージアムショップ、カフェがあります。
ギャラリーでは「邸宅の記憶」と題して朝香宮家ゆかりの品々と、ボンボニエール(ボンボンを入れるケースとして作られた金属製の小さな細工物)が展示されています。
作品保護のためか展示室内は暗くなっているので、ここでXF3514に換装。(こちらも撮影OKでした)
野上龍起「青銅寿老人置物」
筆の軽やかなタッチまで再現したような造形にほれぼれしてしまった。寿老人に亀、見るからにおめでたい。表情も柔らかくてこっちまで笑顔になってしまう。
「菊御紋入菊花蒔絵手箱」
蒔絵自体も金銀入り乱れてとても細やかなのに、さらに輪郭線に螺鈿まで入る超絶技巧! さすが皇室の御用物だけあるな……角度によってキラキラ光るの使っててテンションあがるだろうなあ。実用してたかはしらんけど。
根箭忠録「黄銅製耳木菟形壺」
おっしゃれ~! 洗練された曲線美とデフォルメにびっくりしました。 調べたら大阪の金工家の手によるものなんですね。これはアールデコ好みの鳩彦王も気に入られたんじゃないかなあ。
「菊御紋付桜模様七宝花瓶」
七宝と思えないくらい繊細に表現された花・蕾のグラデーションに葉の色味もさることながら、和の桜柄と肩周りのアール・ヌーヴォー的な模様の組み合わせにときめいてしまった。スモーキーピンクの上品な色味も素敵。
ボンボニエールの数々
とってもキュートな犬張子型のボンボニエール! なんだろう江戸時代の根付趣味に似たようなものを感じるぞ。あるいはモノポリーの駒。
後ろのうさぎ型もかわいかったけどボケちゃった。
反省してぐっと絞ってみた。
どこがどう開くのか考えながら見るのも一興です。ボート型とか容積ろくにない気がしますが、もう本来の目的は形骸化しちゃってるのかな……。
個人的に一番心惹かれたのはこちらの洋書形ボンボニエール。小口のページのみならず、表紙の題字や質感まで刻まれているのはときめくね。
庭園
載せられるような写真がないので割愛しますが、広々とした芝生に何組もの親子連れやカップルがレジャーシート引いてお昼食べてる姿を見て、かつての宮様の邸宅が庶民の憩いの場として開かれているって素晴らしいことだなあ……となんだかとても嬉しい気持ちになっちゃいましたね。
というかアルコール以外は飲食持ち込み可なの太っ腹だな!
結論:超広角って難しい……けど楽しい!
というわけで、大変楽しい撮影行でした。
自分には超広角を使いこなせるか? という点についてはまあ正直ちょっと怪しい。撮れた写真を見返すと「ちゃんと対象が画角に収まってきちんと映ってますよ~というだけの写真」になっちゃってる感じは否めないし……それでも撮ってる間の楽しさはかなりのものでした!
ワーッここまで広く写るのか! パースかかるの面白いな! と、液晶内に自分の視界と違う世界が広がっているのはやっぱりワクワクしてちゃうんですよね。
触っていてもテンション上がるし、ズーミングで不格好に伸びないのも嬉しい。XF10-24、いいレンズだな~! と実感しました。今年中には絶対買おう。
最後に、返却直前に六本木で取ったショットを置いてシメにしたいと思います。超広角ってやっぱビルとか撮りたくなるよね。