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【カラーの基本】記憶色と色の好みを知って、ワンランク上の仕上がりに!

カラーの必要性

カラーグレーディングを何回もしているうちにふと疑問に思ったこと。
「なぜカラーが必要なのか。」

カラーグレーディングは、色彩心理学に基づき、色が持っているポジティブイメージ(例:赤は情熱的)とネガティブイメージ(例:赤は怒り)の両方の側面を用いながら、2つの反対色(complementary)・3色(split complementary)などと配色していくのですが、ある日、そもそもなぜカラーが必要なのだろう。という疑問を持ちました。

私は、疑問に思ったらすぐに調べるようにしているのですが、
探しても、探してもなかなか答えが見つからない。

そんなある日、ある本を見つけました。
ご存知の方も多いかと思いますが、
その本は 「カラーコレクションハンドブック第2版」 です。



著者は、数々のドラマやドキュメンタリーなどのプロジェクトでグレーディングを担当されている Alexis Van Hurkman 氏であり、この本にはカラーコレクションのワークフロー やカラリストの役割など、映像の魅力を引き出す様々な要素やテクニックが記載されております。

この本を読み進めているといくつものテクニックの中に、疑問を解決してくれる記載があったのです。

●なぜカラーが必要なのか。
Bruno Rossion 氏とGilles Pourtois 氏の論文
「Revisiting Snodgrass and Vnaderwart's Object Dataabnk: Color and Texuture Improve Object Recognition」にて、
カラーがあることで、白黒、グレースケールに比べ、物体の認識速度が約0.1秒速くなることが判明しました。

同様に、「The Contributions of Color to Recognition Memory for Natural Scenes」にて、グレースケールの画像よりもカラーの画像を使用した方が、被験者の記憶力テストが5-10%高くなるという結果が判明しました。

この研究結果から、カラーを用いることで、作者が視聴者に伝えたいことを、“瞬時”に伝え、かつ印象を記憶に“長く”残すことができます。

なるほど。だからカラーが必要なのか。
やっとモヤモヤが解消されました。

さらに読み進めていると、、、

記憶色を把握することで、色の好みをコントロールする。
Bartleson 氏は記憶色を「見慣れた物と関連付けて思い起こされる色」と定義しています。Bartleson氏の研究によると、

・肌のトーン
・緑の草
・青空

これら3つの記憶色に関して、各被験者はカラーの好みが同じ範囲(狭い領域)にあることが判明しました。
また同じ対象物の測定された色と記憶色がいかに離れているかについて

・元の対象物の測定された色と記憶色が最も近かったのは、人の肌
・草や落葉樹は黄緑よりも青緑色が強く記憶されている
・青空は自然の空の測定された青よりもシアンが強く、より純度が高く記憶されている

上記の研究から、肌の色は実物の色に近づけ、草や落葉樹は青緑寄りに、空はシアン寄りにするほうが、多くの視聴者の記憶に近い色になり、心地よい色に近づくことがわかりました。

しかし、ある地域で限定的に行われた研究ではありますが、特定のテーマを定めて視聴者に聞くと、上記の研究結果とは異なり、肌以外は、そのシーンに合った色の表現が好まれたようです。つまり、そのシーンで伝えたい想いや情景を演出している色が好まれたということになります。
しかし男女共に黄緑と紫(マゼンタ)は好ましくない反応を得られたようです。日本のCMはマゼンタが多い。なぜだろう。。。

まとめ

カラーを用いることで、“瞬時”に情報を伝え、記憶を“長く”残すことができます。また記憶色を把握していることで、主観的なカラーグレーディングに陥らず、多くの方に支持される色を作ることができます。必ずしも現実世界の色を再現することが、視聴者にとって良いとは限らないということを覚えておく必要がありそうですね。

【宣伝】カラーグレーディングシステムCoL(コル)について

動画編集ソフトのひとつに、DaVinci Resolve(ダビンチリゾルブ)というソフトがあります。実はDaVinci Resolveは、動画編集よりもカラーグレーディング(カラグレ)に特化したソフトです。
カラーグレーディングとは、映像や写真の色調や明るさ、コントラストを調整して、視覚的な雰囲気やスタイルを創り出すプロセスのことです。この技術を使うことで、映像作品や写真に特定の感情や印象を与えることができます。

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カラーグレーディング前(Raw撮影素材)
カラーグレーディング後
カラーグレーディング前(Log撮影素材)
カラーグレーディング後

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それでは!

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