『これぞ我が銃、我が愛銃』第1話「ソリタリーブルー」
あらすじ
美しいものが見たかった。それは小学四年のある冬の夕暮れ時、駅前で目にした光景などでは断じてない。
男は暴れていた。元は白かったが、いまでは嘔吐物を拭いた雑巾を思わせる不快な緑に染まったTシャツ以外は何も身に着けていないその中年男は、ティッシュ配りから奪った大量のポケットティッシュを周囲の通行人に向かって投げつけていた。卑猥な悪態をつきながら。よだれと鼻汁を垂れ流し、支離滅裂な恨みつらみを吠え続ける。男にとって、その行為は戦いなのかもしれない。聖戦なのかもしれない。が、他者から見れば狂人の奇行以外の何ものでもない。街の人々は、やつが放るポケットティッシュの届かない場所から蔑みの目を向け、その無数の目玉がさらにやつの怒りに火をつける。駆けつけた二人の警察官に両脇を抱えられ連行されていく、下半身を露出したその異常者は、群集の中に私の姿を見つけると、自分の娘の名を叫んだ。私は何の感情も顔に出さず、無様な父の姿をただ見ていた。
美しいものが見たかった。美しいものだけを見て育ちたかった。
・・・
そろそろだろう、頃合いを見計らった京香は映画館の場内が暗くなると同時にサングラスを外した。眼前に広がるスクリーンから光の洪水が網膜に直接流れ込む。刺激を軽減するため、いつも薄目から段々と視界を広げていくようにしている。
エンドロールが流れる中、早めに目元を黒いレンズで覆った京香は、劇中で使用された楽曲のクレジットを黒いフィルター越しに凝視する。既存曲からの選曲センスに定評のある監督が手掛けただけあって、この作品もまるで本作のために作曲されたと思いたくなるくらいにシーンと曲がマッチしていた。特に主人公が相棒の裏切りを知る重要な場面で効果的に使われていた歌がすばらしく、京香はその歌のタイトルと歌い手の名前を忘れまいと脳内に刻み込む。帰りにCDを探してみよう、そう考えながら劇場をあとにした。
先ほど見た洋画で使われていた、あの曲の歌手名はどんなスペルだったかと思い出しながら、京香の視線はCDラックをときにゆっくり這うように、ときに俊敏に、獲物を狙う猛獣さながら動き続けた。通い慣れたこの中古CDショップは掘り出し物が多いので重宝しているが、商品の並べ方が雑で探すのに骨が折れる。だが、この探索行為が楽しい。目当てのCDを探す過程で他の作品に目が留まり、そちらも買ってしまったりする。また、滞在中に店内で流れる曲の群れを聴いているうち、食指が動く曲と出会うこともある。もしかしたら、それらの効果を狙い、店内により長い時間、滞留させるための雑な配置をしているのではないかと勘ぐることもあった。
探し当てたものを含む三枚の銀盤を持ってレジに並ぶ京香は、レコードコーナーに目を向けた。アナログ盤には手を出していない京香はしかし、箱にぎっしり詰まった黒い円盤群を引き上げては戻す客の姿を羨ましく見ていた。ハンターたちが集う発掘現場。歌が掘り出されるのを待っている。
CDが入った袋を手に提げた京香は、うつむいた姿勢を保ったまま家路に就く。なるべく人とすれ違いたくないから、今日も裏路地を歩いていた。飲食店の裏側にあるダクトから排出される様々な匂いの煙。インド料理店のスパイスの香り、とんかつ店の油臭、焼肉店の焦げた臭い。そして、ガーリックパスタが評判のイタリア料理店は常にニンニクの刺激臭を吐き出している。この店のダクトの排出口は、嫌がらせのように正面を向いており、通行人に放屁さながら悪臭を放つことで悪い意味でも評判が立つ。このダクトに沿った通りは人の行き交いが少なく、だからこそ、京香にとっては家と繁華街を往復する際のお決まりのコースだ。
街の人々から〈ガーリックロード〉と呼ばれる裏道の終端にはゲームセンターの裏口がある。入ったことはない京香にも、外から見て店内の照明は暗く、タバコの煙が充満し、場末感漂うのがよくわかる。学校やPTAからは不良の溜まり場、さらにはチンピラ製造工場と忌み嫌われ、公共の敵扱いされるこの店。京香も学生時代、担任から行かないようにと禁止令を出されていた。ゲームは特に好きではなく、この日も素通りするはずだったが、見慣れないものが目に入り、足を止める。裏口の横、外にむき出しで置かれた筐体。レバーとボタン、ディスプレイがあるものの、普通のゲーム台とは趣きが異なるようだ。ディスプレイの上にはもう一つ、カウンターが付いた電光掲示板があり、そこには〈余命検索サービス〉と表示されていた。必要情報を入力すると、自分の予定命日がわかる代物らしい。震災からもうすぐ一年を迎えるとあって世間は追悼ムードなのにふざけたゲームだと苦笑した京香だったが、妙に興味をひかれるものがあり、ものは試しとプレイしてみることにした。
まずは現在の年齢と性別を入力。続いて、食習慣、健康・老化度、性格・ストレス、環境汚染度、サバイバル度をそれぞれ測定する質問に答えていく。回答によって生存残日数が増減する仕組みだ。適当に答えてもよかったが、せっかく代金まで払っているのだからと真面目に回答してみる。問答後、今度は幸運度によるルーレットが行われて生存残日数が加算された。ツイているらしい。測定が完了すると、カウンターに結果が表示された。
命日 二〇七二年四月十六日
享年 九十九歳
あと七十六年は生きられるのか。長寿だな。しかし、二〇七二年までこの世が続くかもわからないし、ノストラダムスの大予言まで残すところ三年ちょっとでもあるのに、と京香は心の中でぼやいた。もちろん、あんな予言など信じてはいないが。
筐体から発行された〈生存証明書〉をコートのポケットへ無造作に突っ込んだ京香は、足元を見ながらも時折、夕暮れの空に目を向けつつ、自宅への帰り道を歩き続けた。その空は流れる暗雲の所々から、夜も近いというのに衰えない夕陽の燃えたぎる朱色が滲み出ており、まるで引火したガソリンが発する、黒煙をまとう炎のような、破壊のイメージしか抱かせない心底不快なものだった。
・・・
「お一人様でよろしいでしょうか?」
「はい」
「お時間は?」
「一時間」
「ポイントカードはお持ちですか?」
「いえ」
「お作りになられますか?」
「いいです」
問題なし。簡潔に。やっぱり、この程度なら大丈夫だ、と指定された部屋へと続く冷え冷えした廊下を歩きながら春奈は思う。自分の部屋の前に立つと、軽く息を吐いてから中に入った。今日はどこまでいけるか。
隣の部屋からはテクノミュージックが聴こえてくる。春奈はテクノが嫌いだ。一定のリズムを延々と繰り返すパターンが、嫌なことしかなかったクリーニング工場でのアルバイト生活を思い出させるから。ミニマルミュージック自体が嫌いなわけじゃない。サティの『ジムノペディ』も聴いていて心が落ち着く。が、テクノの、あの無機質で機械的な電子音の繰り返しだけは耐えられない。工場バイトはあまりしゃべらなくていいから春奈にとってはありがたく、本当は辞めたくなかったが、ことあるごとに難癖をつけてくる主任からの指導という名のイビリがつらかった。勤続十五年のベテランで、現場を仕切る彼女にマークされたスタッフ(これまでも若い女ばかりだった)はほとんどが目をつけられてから三か月以内に辞めていた。春奈は耐えたほうだったが、それでも半年を過ぎた頃には心身に不調が見られるようになり、退職を余儀なくされた。退職日、主任から「これだけ耐えられたんだから、どこに行ってもやっていけるよ」と笑いながら言われたときには、人との争いを好まない春奈でも、いら立ちの念が渦巻いた。文句をぶつけてやりたかったものの、すべて言い切れる自信がなく、黙って立ち去った。
気づけばカラオケボックスの残り滞在時間はあと二十分になっていた。部屋に入ってから四十分もの間、嫌味な主任のことを考えていたのかと春奈は激しく後悔した。退店したのだろう、もう隣の部屋からは何も聴こえてこない。気を取り直し、リストから曲を探す。新曲一覧に春奈の好きなガールズグループの曲が追加されているのを発見し、これを選んだ。
ハイテンションなロックサウンドのイントロが流れ出す。最初の歌詞は『あの空の』だ。これはいけるはず。そうはいっても不安は拭えない。胸の奥で心臓の音が高鳴るのを感じた。心音のドラムは一定のリズムを刻む。隣から聴こえたテクノミュージックが思い出され、次いでクリーニング工場の機械音と主任の冷血な声までもが脳裏によみがえる。春奈は頭を振り、それらを打ち消した。そして、モニターに歌詞のテロップが表示された瞬間、大きく息を吸い込み、歌い出した。
結局、一曲だけで退店した。『あの空の』まではなんとか歌えたが、少し間を置いてからの長めの歌詞は無理だった。いつものように途中から声が弱々しくなり、出てこなくなった。
「衰弱」春奈は衰えからやや回復した、か細い声で発したが、その声は冬の風に飲み込まれ、春奈自身の耳にも届かなかった。
・・・
左へ五、右に三、さらに右に四、そして左に八。これで開く。サングラスに加え、風邪気味のためにマスクもしている姿でダイヤルキーを回す姿は、端から見れば犯罪者に映ってもおかしくないだろう、京香は自宅マンションのポストを開けながらそう思った。帰宅して内玄関のライトをつける。何気ない行為のはずだが、京香はこのごく普通の動作をためらうときがある。照明が灯り、闇の中で存在を露にするのは、もう一人の自分。玄関ドアを開けたすぐ正面の壁に掛かる鏡に映った姿だ。前の住人が設置した物が残されたままになっているのだが、その人物はなぜ、こんなところに鏡を設置したのか。取り外してもよかったが、いまもそのままにしている。初めは外すのが面倒だからだった。が、帰宅するたびに自身の顔を見つめさせられることにいい加減、嫌気がさしてくると、逆に外したら何かに負けてしまう気がして、余計に外せなくなってしまった。
内玄関のライトだけが灯る中、京香はまず口元を白く覆うものを外した。残るは目元を守る黒の覆い。眉にかかるストレートショートの黒髪と切れ目なくつながるオーバーサイズの無骨なブラックレンズ。買ったときは気づかなかったが、SF映画『ターミネーター2』でアーノルド・シュワルツェネッガー演じるアンドロイドがかけていたものとよく似たデザインだった。とはいえ、あちらと同じペルソールのブランドではなく、ノーブランドの安物だ。 白に続いて、黒の覆いも外した。まじまじと自身の顔を見る。じっくりと見た。特に感想はない。いつだって顔は顔だ。
六畳間の中央に置かれたコタツに足を滑り入れた京香は、電熱が高まってくるのを縮こまって待つ。キッチンスペースとリビングの間に間仕切りのドアがない1Kはやはり寒い。一月に入ってから本格的な寒さが訪れ、この地域でもそろそろ雪が降りそうな気配を感じていた。足元が暖まり、落ち着いてくると、京香は買ってきたCDの歌詞カードを読む。映画の中では、歌詞は字幕で訳出されていなかったため、歌われる内容はわからなかった。歌詞カードの和訳の言い回しには若干の違和感があったものの、理解できた歌の内容はとてもいい。劇中、犯罪組織から抜け出そうと決死の逃亡を試みる二人の男女の、愛情を隠した、あくまで相棒としての関係性を歌い上げているようで、数時間前に見た名シーンが歌詞だけで鮮明に思い出された。
歌に込められた物語を文字で味わったあと、京香はあらためて曲を聴こうとCDをラジカセにセットするため立ち上がった。そこで気づく。コタツテーブルに置かれたチラシの束に紛れて、一通の長形封筒があることを。ポストからチラシと一緒につかみ出してきたから気づかなかったのだ。封筒にはレコード会社の名前が印字されていた。京香はそれを見て、「ああ、あれか」とつぶやいた。
・・・
電話が鳴る。春奈は心を落ち着かせてから受話器に手を伸ばした。
「はい小野里です」
「〈快速運輸〉の山口と申します。小野里春奈様はご在宅でしょうか?」
「私です」
「このたびは弊社のアルバイト面接にお越しいただき、ありがとうございました。結果をお伝えさせていただきたいのですが、お時間ございますでしょうか?」
「はい大丈夫です」
「ありがとうございます。結果について、大変申し訳ございませんが、今回は不採用ということになりました」
「そうですかわかりました」
「はい、申し訳ありません」
「あのえっと」
「はい?」
「理由とかは」
「そうですね……面接を担当させていただいた私の印象として、話し方といいますか、コミュニケーションにやや難があるかなと」
「はいわかりました大丈夫です」
「あの、失礼ですが――」
「はいなんでしょうか」
「面接のときもいまもですが、そういう息継ぎをせずに早口で短く話すのは癖ですか? それとも、何か自閉症みたいなのとか……ああ、すみません、差別とかではないんですけど、やっぱり、そんなのがあると、うちでは厳しいかなって」
「はいすみません」
「それでは、このたびはご応募いただき、誠にありがとうございました。失礼いたします」
受話器を置いたあと、春奈は立ったまま、窓の向こうにある、廃園になった幼稚園をぼんやりと眺めた。それから、とても寂しくなった。
数か月前に役目を終えたその幼稚園には、錆ついた動物型の遊具がいくつか屋外の遊び場に残されている。耳や尻尾が朽ち折れ、骨のように辺りに転がっており、不気味でメタリックな動物墓場と化していた。園の外壁に、廃園反対の市民グループがかつて貼り出したビラがボロボロになったいまもなお、剥がれることなく、こう主張し続けていた。
『子どもたちの未来は?』
・・・
「蓋は見つけました。〈量水器〉と書いてありますね」
「ありがとうございます。そちらが水道メーターボックスとなります」
「これをどうすれば?」
「ボックスを開けていただくと、メーターと、その横に〈止水栓〉と呼ばれるバルブの付いた栓があるかと思います。お手数ですがバルブを左側、つまり反時計回りに回していただき、水道の蛇口から水が出るか、お試しいただけないでしょうか」
「わかりました、ちょっとやってみます」
「お願いいたします」
京香は頭にセットしたインカム付きヘッドフォンを通して、相手の三度目の保留音に聴き入る。バッハの『G線上のアリア』だ。初期設定なのか、電話の持ち主の趣味で変更したのか。この曲は京香にとって、クラシックの中で最も好きな曲だ。寂寥感を帯びた不協和音には心が震える。それは回線を通じたこの電子音であっても変わることがない。しばらく聴いていたいから、相手には止水栓開けに手こずってほしい、と失礼なことを考えたりした。しかし、今度も演奏は中断される。三回目の中断タイミングはちょうど穏やかな最終小節に差し掛かるときだった。
「できました! 栓を開けたら水が出るようになりましたね」
「ありがとうございます。そのままご利用ください。他に何かご不明な点はございますか?」
「いえ、大丈夫です」
「また何かありましたら、いつでもお電話ください」
「助かりました。こういうことは全部、主人に任せっきりだったから、私だけだとどうしようって。あなたの説明がわかりやすかったし、話し方にも安心感があって、落ち着いて対処できました」
「恐縮です。ありがとうございます」
「では、お世話さまでした」
相手が切電したのを確認すると、京香はヘッドセットを外し、ふーっと息をつく。シフトも交代の時間だ。
「お疲れ! ちょうど交代だね。京香は明日も早番だっけ?」
ロッカールームで帰り支度をする京香に、同期の玲子が話しかけてきた。
「うん、今週はずっと。玲子は?」
「私は逆に遅番ばっかり。マー君も就職したから会う時間がなくて、つらいなって」
「この仕事は勤務時間が不規則になっちゃうからね、どうしても」
「次にシフトが一緒の日があったら、ランチしようよ。いいお店を見つけたんだ。基本的には一人でするお仕事だからさ、研修仲間じゃない他の期の子とは仲良くなりづらくて……同期は皆、辞めるか、辞めさせられるかで、生き残ってるのは私たち二人だけになっちゃったし。じゃあ、また!」
玲子はそう言うと、京香に背を向け、ハンドミラーでボブの茶色いウェーブヘアを手ぐしで整えながら、コールセンターのオペレーションルームへと歩いていった。彼女のうしろ姿を見送った京香はタイムカードを押し忘れたことに気づき、総務エリアに戻る。途中の廊下で新しい期の研修スタッフたちとすれ違った。皆、京香のほうを怪訝な顔で見る。そのサングラス姿を。
帰宅途中、京香は先ほどの玲子の言葉を思い出す。研修を終えたあとはオペレーター同士で協力して仕事をすることはないため、交流の機会があるのは同期くらいだ。玲子とは研修時にペアを組んだ縁で打ち解け、よく話す仲になった。とはいえ、友人と呼べるほどの関係ではなく、職場とランチタイム以外で会ったこともない。それでも、彼女は自然と会話ができる数少ない知人の一人だ。勤務中であってもサングラスをかけた異様な自分と親しくしてくれる玲子には感謝している。自分の症状を理解し、素顔を隠した状態での勤務を許してくれた職場にも。
仕事のあとはやたらと喉が渇く。冷蔵庫には調味料しかなかったため、京香は水道水で喉を潤す。シフト制だから曜日の感覚も狂いがちだが、何かはやっているだろうとテレビをつける。映し出されたのは音楽番組。人気のお笑い芸人が司会を務め、アーティストを招いて、歌あり、トークありで進行する番組だ。いまはちょうど、週間ヒットチャートが各曲のミュージックビデオと共に紹介されている。CG加工された演出とめまぐるしいカット割り編集で見せる技巧派の映像もあれば、どしゃ降りの雨に打たれつつ派手な衣装で歌うアブレッシブなもの、逆に商店街の片隅に佇みラフな格好でギターを弾きながら歌い続けるだけのシンプルなものもあった。どの映像でも歌い手たちは歌声だけでなく、表情と手足も使い、全身で歌のメッセージを発信している。皆、格好よく、きれいで、自信にあふれ、誰もが輝きを放っていた。
京香は思う。本当の歌の力とは、歌う者の肉体表現も含めてのものだ。人前で歌えない人間は本物ではない。
番組が終わり、チャンネルを変えようとリモコンに手を伸ばしたとき、ゴミ箱からはみ出す封筒が目に入った。レコード会社の名前の一部も確認できる。京香は突発的にいら立ちを覚え、手でそいつを底の底まで押し込んだ。もちろん、視界から消したところで、それの存在が消えるわけでもなければ、それが届くに至った自分の行為がなくなるわけでもないことはわかっている。
なぜ、またデモテープなど送ってしまったのか。これで何度目だというのか。湧き上がる憤怒を抑えるため、一人暮らしの部屋の中にもかかわらず、サングラスをかけ、覆い隠した顔を鏡で見る。多少、気分が落ち着いた。そして、何をやっているんだ、と自問した。
(第2話へ続く)