説明し過ぎない優しさ
先日、人気イラストレーターの唐仁原教久氏がお亡くなりになりました。
私の好きな唐仁原氏の作品をご紹介します。
『俺はその夜多くのことを学んだ 』(幻冬舎文庫)/三谷 幸喜【文】/唐仁原 教久【絵】
1998年に発刊された上記の作品は三谷氏のストーリーテリングの巧さをまさにイラストの力が増幅し、世界観に深い印象を与える表現の方法論、クリエイティブの奥行きを堪能させられました。
『南極のペンギン』(集英社文庫)/高倉 健【著】/唐仁原 教久【画】
2003年発刊。名優・高倉健氏による絵本の趣きもあり、撮影中逸話を小噺にまとめ行間を唐仁原氏のイラストが空気感をサポートしている作品です。
作品に登場する高倉健氏が出逢った心温まる人たちの所作のさり気なさにふと清涼感に近い感動を覚えます。
2作品双方に共通するのは人間愛です。
優しくされたいと願いながらも、どこか空回りしたり、良かれと思ってした事がその本人の意向に添うものではなく、幸せの価値の本質に気づくきっかけであったり、人間とは一筋縄にできておらず、だからこそ愛しき存在であるのだと…この二冊から感じ取れます。
そして、唐仁原教久氏のイラストの素晴らしさを解説するに優しさを説明し過ぎないという点を挙げたいと思います。
ある種の隙間、人と人との距離間がどことなく設けられていて、タッチはそれでも優しいのです。
もしかすると、普段の人間関係全般において実に洗練されているのかもしれないスマートさ、但し至って無関心ではないというスタイルは理想的な有り様とも言い得て、唐仁原氏のイラストに惹かれる理由とはそうした根拠なんだと、解析してしまいます。
唐仁原教久氏のご冥福をお祈り申し上げます。
気分転換な読書としてオススメしたい2作品です。
そして弊社が関わる2作品もご紹介させていただきます。
まず金子雅和監督作品『リング・ワンダリング』山口市の山口情報芸術センター(YCAM)にて9/17~9/22までの1日1回上映となります。
期間中18日は上映後、本作ブロデューサーの観点から関わらせていただいた経緯や想いを中心に作品解説をさせていただきますので、近隣の方にはぜひご来場をお待ち申し上げます。
9/24は作品選定に携わっている下関名画座です。
今回セレクトしたのはフランスのヌーヴェルヴァーグを代表する作品として、監督を務めたジャン=リュック・ゴダールの作品においても人気の高い作品の一つである『女と男のいる舗道』4Kデジタルリマスター版をご紹介します!
上映後の作品解説もさせていただきます。特典企画も考案中です。
こちらもどうぞお楽しみに!