方法論としての‘サスペンス’
映画ジャンルの中で様々クロスオーバーできるアイテム、テーマになりやすい方法論として‘サスペンス’を描くがあります。
簡単に言えば謎解きとも言い換えられます。ドラマツルギーという構成や展開において謎解きを含ませていくことで、ストーリーに多面性をもたせられるだけでなく、視聴側を引き付ける訴求力を生み出しやすくなります。
そこで、サスペンスというアイテムをどのように使用するか、空気感をどのように演出するかは、これぞプロデュースワークと作家性が浮き彫りになり、差別化が図れるポイントなのです。
例えば、以下のアイテムがサスペンスの前に付記されることが良くあります。
・社会派サスペンス
・クライムサスペンス
・ホラーサスペンス
・ヒューマンサスペンス
・アクション&サスペンス
所謂、どのように謎解きを扱うかによって映画世界観が構築されるかが分かります。またはサスペンスであっても、シュールなアートタイプなものもあります。
その代表格にデヴィッド・リンチ監督作品やピーター・グリーナウェイ監督作品等、映像美を軸に不可思議な世界観を作り上げながら、サスペンス要素を差し込んでいく上手さを感じます。
サスペンスはそうした意味で非常に扱いやすいアイテムであり、謎について知りたい欲求を観る側に煽らせながら送り手と受け手で共有できる使い勝手があるのです。
ケースによっては敢えて未解決で終わらせるモヤモヤを意図的に演出する作品もあります。
更に次なる利点を挙げると、キャストパワーへの依存度が軽減できるメリットが魅力的です。サスペンス作りの上手さが際立てば、ストーリーで引っ張っていけます。
という意味で、突き詰めれば便宜上何らかのジャンル区分にしておくことが、営業的にベターなだけであり、実際はジャンル不能な世界観の演出に最も最適なアイテムになりやすいのが、サスペンスに他なりません。
今週末9月7日(土)より『漁港口の映画館 シネマポスト』ではジョセフィン・デッカー監督作品、エリザベス・モス主演の『シャーリィ』が公開されます。
まさに前述からの捉え方、心理サスペンスと銘打たれた解説がチラシにも記載されておりますが、何処に向かうのか分からない面白さがこの作品の魅力です。
ぜひ楽しんでいただけたらと思います。
【漁港口の映画館シネマポスト 次回9月7日より公開作品紹介】
2018年のサンダンス映画祭で初長編作品がプレミア上映されて以来、注目を集める奇才ジョセフィン・デッカー監督。
長編4作目である本作は、巨匠スティーブン・キングが影響を受けたと言われる異色作家シャーリイ・ジャクスンの伝奇小説に現代的で斬新な解釈を加えた、想像力とダイナミズムに満ちた心理サスペンス。
作家自身のキャラクターと執筆過程を描きながら、まるでその小説世界に迷い込んだかのような幻惑的な映像を作り上げた。
“魔女”と呼ばれた作家の姿を圧倒的な怪演で魅せたエリザベス・モスをはじめ、マイケル・スタールバーグ、オデッサ・ヤング、ローガン・ラーマンといった一流キャストが集結。
2020年にはサンダンス映画祭に見事返り咲き、USドラマ部門審査員特別賞を受賞した。また、デッカーの才能に惚れ込んだマーティン・スコセッシがエグゼクティブ・プロデューサーとして名前を連ねている。