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20世紀史上、最大のメロディメーカー且つコンポーザーであったバート・バカラックがこの程、94歳で天寿を全うされました。
最も好きなバカラックナンバーであるカーペンターズ『遥かなる影(Close To You)』、創作パートナーであるハル・デヴィッドとの 『The Look Of Love』『Alfie』等のヒット曲群、とりわけ映画『明日に向かって撃て』挿入歌であるBJトーマス『雨にぬれても』の旋律には永遠のポップのときめきを感じます。
1990年代にはエルヴィス・コステロとの共作による『God Give Me Strength』に衰えない凄みに驚嘆し、まさに多種多様なアーティストへの楽曲提供とコンポーザーとして手掛けた膨大なソングライティングには枚挙に暇がありません。

下記のサイトからはSNSを通してジャンルレスに多くのアーティストからのバカラックを悼む声が溢れています。

私は音楽の面白さを堪能する上でのリズムへの興味、どこかインプロビゼーション(即興性)な表現を好む要素に、歳を重ねれる度に惹かれ続ける嗜好性があることに気付くのです。
またはミニマルミュージックの無機質に流れるエレクトロニカなタッチにもいつしか馴染んでもいます。
そこで、改めて音楽史におけるバカラックの存在は根本的な音楽の愉しさ、素晴らしさを再び世界に知らしめる、このたびの彼の逝去が忘れかけていた音楽の核に触れる機会になっているのではと思ったのです。
それはやはりバカラックの作るメロディなのです。
加えてメロディを引き立てるバカラック編曲のダイナミズム。
その個性的コンビネーションが一定の普遍的な価値観を私たちに提供していました。

日本に於いてもバカラックの影響を受けつつ類い希な才能を40年以上に渡り表現し続けた他の追随を許さない音楽偉人がいました。
それは筒美京平です。
洋楽アプローチを時代のトレンドに順応させ、日本的に好まれる感覚をブレンドしていく独自方法論は圧倒的な表現技術でした。
筒美京平氏は約2年前に惜しまれつつ逝去されましたが、音楽ファンからの創作への解析興味は尽きることがなく、関する様々な研究書籍が世に出ています。
その筒美京平をもってしてもバート・バカラックの創作アプローチへの深い畏敬の念があったのは間違いないと思われます。

よくよく考えるメロディを単なる聴き触りやキャッチーだけでポップという範疇で捉えていなかったかと今、バカラック音楽を聴くと自分自身の底の浅さが浮き彫りにされるのです。
つまり普遍性の解釈、その見方を洋楽的に考えると単なる古典に留まっていない聴き方にあり、邦楽の名曲群は往々にして古典としてアレンジに委ねてのリメイク、またはカテゴリーでしか時代の耳に触れられない要素を時代推移から感じます。
洋楽でもそのパターンはあるでしょう。しかしながらリマスタリング効果も手伝われているとして洋楽では原曲ローテーションが自然体の一つに存在しているのではと推察しています。欧米のリスナーにとっては配信の日常化がフィードバックを容易にしているのです。
これは一言で言うと、忘れ去られない音楽、淘汰されない音楽が必ず存在することを意味しています。

そこで深淵なメロディとは何なのか…
私はバート・バカラックを聴くことでしか解らない何かがあるのではないかと思っています。


【インフォメーション】
下関名画座のご案内
■2023年2月25日(土)
■「男と女 人生最良の日々(2019フランス)」
■シーモール下関2階シーモールシアター
■監督 クロード・ルルーシュ
 出演 アヌーク・エーメ
    ジャン=ルイ・トランティニャン
 音楽 フランシス・レイ
■①10時30分②13時③15時30分④19時30分
■前売1.100円 当日1.300円
シーモール1階インフォメーションカウンターにて発売中。
■提供 ツイン
■企画協力 cinepos
■問合せ 山中プロダクション(090-8247-4407)

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