DTMでBGMを。ドラマ・アニメサントラサントラ聴き比べ。/音楽編#4
「リーガル・ハイ」「MOZU」「Mr.Robot」「聲の形」「オッドタクシー」などのドラマ・アニメサントラを聴き比べます。
○ドラマのサントラ
DTMでの作曲が普及して以来、ドラマのサントラはどんどん映画化しています。”映画化”というのは、音のレンジ、高温から低音までの幅が広くなった変化のこと。
AV機器の進化で、家庭用のテレビや携帯用端末からでも十分なオーディオ環境が再現可能になりました。その結果様々なサントラの映画化が進んでいるんです。
▽「Mr.Robot」(2015-2019)
近年発表されたドラマサウンドトラックの中でも群を抜いて素晴らしいのが、Mac Quayle「Mr.Robot」のサントラです。「Mr.Robot」はラミ・マレック(「ボヘミアン・ラプソディ」「007 NTTD」のひと)主演のサイバーサスペンスで、世直しハッカーもの(でもないんですが気になった方は本編を。Primeにあります)。現代の攻殻機動隊。
シーズン4まである長寿シリーズでドラマ本編の完成度もさることながら、7枚も出ているサントラが全て傑作なんです。主人公が抱えるトラウマと総合演出の兼ね合いで、サントラは90年代エレクトロニカを基調にしつつ、洗練されたビートで緊張感を高めます。
▽「リーガル・ハイ」
国内のドラマサントラはどんなものがあるでしょう。試しにこの曲を聴いてみてください。
2012年のドラマ「リーガル・ハイ」のサントラです。国内ドラマのサントラで感動的なシーンで流れる曲のほとんどが、このjustice的な構成―ピアノメイン,弦で盛り上げ,コーラスとか笛も,最後ピアノ―を採ります。いわゆる久石譲タイプ。いい曲なんですが、良くも悪くも馴染みやすい音になります。次に同じサントラからこの曲を聴いてみてください。
今度は緊張感のあるシーンで流れる曲。音数もあるしドラム隊もいる。一見洋画・海外ドラマ的に聴こえるんですが、決定的な違いがあります。音が”薄い”気がしませんか?これ、ポストプロダクション(音全体を調整する)段階で周波数の低い音を意図的に切ったり、イコライザー(音色を調整する装置,ソフト)で低音をカットしてるんです。後ほど紹介しますが国内のアニメサントラの多くでもこの処理が施されていて、ドラムやビートの音も角が取れて丸い聴こえに元からなるようにしてあります。
ローカット(低音を切ること)も良し悪しあって、確かにラブコメでドンドコ鳴らしても場違いですし、切ったドラム音がむしろ良い場面もあります。逆を言えば、低音を強調すると海外製っぽくなります。
どんな音を出したいのか、この辺も自分の好みで手入れしましょう。
▽「MOZU」
西島秀俊が無限喫煙するドラマ「MOZU」のサントラです。
ハンス・ジマーの遺伝子を継ぐ作曲家は国内にもいます。代表格は菅野祐悟です。特に10年代以降の作品が有名でしょう。「カイジ」「SP」「PSYCHO-PASS」など。
ドラマティックな展開ながらも上品な雰囲気が特徴的で、いまや菅野といえばよう子よりも祐悟と答えるひとも。それくらい人気の作家です。
こと「MOZU」もサントラはハンス・ジマーの「ダークナイト」を強く意識したスコアですが、歪ませたファズギターが特に印象に残ります。
○アニメのサントラ
▽「ハイキュー!!」
先ほど登場した「リーガル・ハイ」の林ゆうきが手掛けたアニメのサントラをいくつか聴いてみましょう。
国内アニメのサントラ曲は弦でリズムをとる傾向が強く、同時に鳴るドラムもローカットしてあるものが大半です。「HERO A」のように強めにドライブをかけた(ザ・ロックンロール、なギュイーーンてやつ)ギターでフレーズをまぶすテクニックも見られます。正直これらのテクニックは高度かつ使いどころを選ぶため、自作サントラでは参考になりにくいですね。
▽「聲の形」(2016)
アップテンポなものばかりでした。日常系・感動系のサントラも触れておきます。
90年代,ゼロ年代のいわゆる美少女アニメ・美少女ゲームサントラの系譜で、最先端に位置するのが牛尾憲輔のサントラです。ピアノメインかつ手数少なめで、極端に丸い音。ゴリゴリの電子音でありつつも、温もりを確かに演出する巧みな編曲です。ローカット、というよりもはや高音の電子音だけでもこんな芸当ができる超人もいます。
そういえばMAPPAでやる「チェンソーマン」のサントラを担当することが決まっています。PVも良い感じ。原作は2部を早く...
これまた余談ですが、美少女アニメ・美少女ゲームサントラが好きなひとは最近パソコン音楽クラブが出した「See-Voice」がオススメです。
▽「オッドタクシー」
最後に変化球を2種類ほど紹介しておきます。「オッドタクシー」は2021年の春クールに放送されたアニメシリーズです。近年では珍しい現代劇、かつ音楽にラッパーのPUNPEEが入るなどのニュースでも話題になりました。
PUNPEEが作っただけあって、全体的にヒップホップ強めのサントラです。バスドラムとベースの響きが心地いいですね。一方で、アニメをみてみると後ろがうるさいと感じる場面は少なく、適度な規模感が光る名サントラ。
▽「Sonny Boy」
「Sonny Boy」は2021年夏クールに放送されたジュヴェナイルSFアニメ。
落日飛車や空中泥棒、toeをサントラ使いする豪華さ!!インディーロック好きは必ず聴きましょう。
サイケっぽい電子音はこういう使い方もあります。
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いかがでしたでしょうかサントラの聴き比べ。想像以上にいろんな種類があるのが判ってもらえたと思います。
最初に予定していた内容はここで一区切り。細かい音源の紹介とかも需要があればやります。