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7.餐

 電話が鳴った。「殺りくの秋だよ。何か食べたかい」「あれから何も食べていないよ」「また断食したのか」「世界中の地下水を飲んでいる」「懐かしい地球との会話」「やはり生き物を食べないで生きていく技術の道があったはずだと思うんだ」「しかし、人類は生物食を捨てなかった」「それが生きる意欲や創作力ともつながっている。だから難しい」「もう一度、食の海に帰ってこいよ」「身を投げてみるかな」

 料理店の前で彼は待っていた。「今日は生物の歴史をたどろうか」「今日は捨て身だから」「メニューは、このわた、うなぎ、山椒魚のたまご、蛇の燻製、そしてふ化寸前の雛鳥、鯨の睾丸、猿の脳味噌、そして最後は、人肉以外は決して口にしない動物解放主義者の上腕二頭筋。ジャイナ教徒の舌でもいいな」「生物の進化の流れ。君らしい企みだよ」「美しいのは敬けんなジャイナ教徒に殺したばかりの肉を食わせること。清いのは自分の身体を腐乱させてわいた蛆を食べる美食家」「マルキ・ド・サドの食欲版か」

 これまでに食べた生き物たちの遺影で埋め尽くされた部屋に通された。「君は、エコロジストにしてジャイナ教徒。大いなる矛盾だ。そしてグルメの欲望もある」「身体のシリコン化による食物連鎖からの離脱志向と生態系を肯定するエコロジー志向。私の中でいつも闘っている」「生かし合う関係というのは欺瞞だね。生かし合うのなら部分的に食べればいい。殺す必要はない。殺し合うことが地球型生命の基本だろう」「その果てに、今の自分がいる」

 アノマノカリス。三葉虫。チューブ・ワーム。毛深いテラノザウルス。ピテカントロプス・エレクトス。私はさまざまな食材になり幾度も生まれ変わった。友と身体を食べ合いながら、終りのない食事と会話が続いた。「君の身体は本当に美味しいよ」「自分が生き物を食べるのは嫌だが、皆に食べられるのは贅沢かな」「最高の贅沢だ」

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