パラレルワールド
ホテルという非日常空間が好きで、ひとりでゆったり過ごす目的で定期的に泊まりに行く。先日も仕事で松本に行く用事があったので、何度か利用しているブエナビスタ松本に宿泊した。
手頃な価格でサービスも良いのでいつも気持ち良く滞在させてもらうのだけれど、今回は「これはお試しだなー!」という体験が続いたので、ホテルでのエピソードを2つほど。
初日。新宿から特急あずさに乗り松本へ。松本駅まで迎えにきてもらい、シャトルバスでホテルへ直行。フロントで12階の部屋を案内されスーツケースを運び入れてもらうところまでは、滑らかに事が進んだ。
部屋のソファで一息ついた後、手を洗おうとバスルームの方へ向かうと何となく異臭がする。ん?と思ってドアを開けると、禁煙の部屋を予約したものの、かすかに喫煙所のような匂いが充満していた。
「フロントに連絡して部屋を変えてもらおう!」と直感的に思ったものの、嗅覚過敏なところがあるので気にしすぎかなと思い、窓を開けたり換気扇を回して15分ほど様子を見たものの、やっぱり気になる。
「電話しよう!」という自分と「面倒な客と思われたくない」自分を行ったり来たりしながら、思い切ってフロントに連絡したところ、丁寧な対応で別の部屋(最上階)へアップグレードしていただいた。
翌日。朝食のレストランで席を案内された際。いつも窓際の席に座るので、気分を変えて奥の半個室席を希望し通してもらった。他にお客さんがいなかったので、落ち着いてバイキングを楽しもうと思った矢先、目の前の席に4人家族が座り途端に賑やかになった。
この時も「やっぱり窓際に移らせてもらおう!」と「今さら気まずい。」を何往復かした後、思い切ってフロアスタッフに声を掛けると、スマートな対応で窓際の席に案内し直してもらえた。
どちらも些細な出来事だけど、「ちょっとのガマン」を選択しなくなったのは、かつての私といまの私の大きな違いだと思う。
私たちの目の前には、常に無数のパラレルワールド(並行世界)が存在している。未来は「いま」の地続きではなく、自分が想像した無数のパラレルの中から瞬間瞬間に選び取っている。
(同じ事象を体験しても、ひとりひとりの経験や感じ方がバラバラなのはそのため。)
同じ周波数同士は共鳴し合うので、ご機嫌なパラレルを選択すればご機嫌な未来を体験するし、我慢や怒りのパラレルを選択すればその未来を体験する。
「運の良い人」というのは、周囲との調和の中で自分がご機嫌でいられるパラレルを瞬間的に選び取っている人なのかもな、と思いながらホテルを後にした。
数日後、松本を発つ前に本屋さんに立ち寄ると、雑誌コーナーに並ぶ書籍の中から、「運を拓く」というananの表紙がどん!と目に飛び込んできた。
この世界はいつでも自分仕様に出来ているわけではないから、運は自分で切り拓く。軽快にパラレルワールドを移行しながら。
そんなメッセージをもらった気がして、うんうんとうなずきながら帰路に着いた。