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目を瞠る(みはる)ような輝かしい女優…ではない。
vol.1『バグダッド・カフェ』(1987年ドイツ)
この映画の魅力は、美しく、目を瞠る(みはる)ような輝かしい女優…
ではない。
ミニシアター映画の象徴とも言われる作品。1980年代一躍『バグダッド・カフェ』ブームを巻き起こした。
喧嘩をする二組の夫婦。ヨーロッパ映画らしく鬱々とした物語のはじまり。ドイツ映画の昔にあるような、前衛的な映画の雰囲気すらも感じるカットが続く…。
この映画は、ふたりのおばさんが主人公。太ったおばさん《ジャスミン》と不機嫌なおばさん《ブレンダ》。しかしなぜ、こんな太ったおばさんと、不機嫌なおばさんの映画が大ヒットに?!と冒頭では首を傾げてしまう…それも、ジャスミンが砂漠の中の道路をトボトボと歩くオープニングで吹っ飛ぶことになる。
主題歌《コーリング・ユー》がはじまる。
オープニングクレジットが挿入され、そのセンスの良さに引き込まれる。夫婦喧嘩を見せられているだけの冒頭シーンだったはずが、なぜかこの《コーリング・ユー》が流れると、おもしろそうな何かが、この映画に待っているような気にさせられる。
ジャスミンがひたすらに歩いているだけなのだが、だんだんとその姿に愛着が湧いてくるのは、この当たりから。主演、マリアンネ・ゼーゲブレヒトの存在感がとにかくすごい。掃除をする有名なシーンや、絵描きのキャンピングカーでモデルになるシーン。ふくよかな乳房を露わにして、恥ずかしそうに頬をピンクに染める…いつの間にかジャスミンから、目が離せなくなっている。
もうここまで来ると、マリアンネ・ゼーゲブレヒトの魅力にだいぶハマってきているので、汗をかこうが、髪が乱れようが、そんな姿さえも美しくてしょうがないから不思議だ。
モデルとなったジャスミンが徐々に服を脱いでいく…「バグダッド・カフェ」で打ち解けてゆき、彼女の心も開放されていく様子が、この一枚一枚かしこまったスーツを脱いでいくことで、うまく表現されているなぁ、と思う。
人種も価値観も違うふたりが、徐々に心を通わせてゆく…と言う『バグダッド・カフェ』のストーリー。偏見や、現状に囚われているだけかもしれない人生を、もっと自由に解き放つことの大切さについて、この映画は物語っている。
最後には、あれ、この映画ミュージカル映画だったっけ?!なんて思わせるほど、テンションマックスの後半に、心からこのふたりの物語を楽しんでいることに気付かされる。
輝かしい女優ではないけれど、くすっと笑わせてくれて、軽やかでユーモアに溢れるふたりがあまりにキュートで、いつしか彼女たちを愛さずにはいられない。
それが、映画『バグダッド・カフェ』の最大の魅力なのだ。
↓↓vol.2↓↓
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