キネ坊主の映画人生を紐解く⑬
関西の映画シーンを伝えるサイト「キネ坊主」を運営しているぐっちょんです。
本日、在宅ワーク後に丸善ジュンク堂書店に行ったら、私と同じく休み前の駆け込みさんがこれまでに見たことないぐらいに並んでいて、驚いた次第です。皆さん同じなんですね。
さて、ここ最近は2002年に観た作品を書いていますが、個人的に2002年ベスト作品を書いてみます。
それは『ハッシュ!』(2002)
[一組のゲイカップルと孤独な女性が、新しい家族の形を巡って繰り広げる騒動を描いたヒューマン・ドラマ。奔放なゲイライフを送るペットショップで働く直也、ゲイであることを周囲に悟られないように暮らしている土木研究所で働く勝裕。2丁目で出会い交際を始めたふたりの前に、ある日、歯科技工士をしている朝子と言う女が現れる。人と触れ合うことを諦め、愛の無いセックスを繰り返す日々を送っている彼女は、勝裕がゲイであることを知った上で、彼の子を妊娠したいと相談を持ちかけてきた。幼くして父親を亡くしていた勝裕は、自分が父親になれるかもしれないことに興味津々。一方、初めは激怒していた直也も彼女の真剣な態度に次第に理解を示し、やがて3人は子供を持つことに前向きに取り組んでいく。ところが、勝裕に想いを寄せる同僚のエミの密告でそれを知った勝裕の実家の嫂が、精神科に通院歴のある朝子の血を栗田家に入れる訳にはいかない、彼女は家族を、そして子育てを軽く考えていると猛反対し大騒ぎとなってしまう。しかし、その兄一家も兄の急死で敢えなく崩壊。こうして従来の家族の在り方の儚さを目の当たりにした3人は、新しい家族の可能性を探って新たな一歩を踏み出していくのであった。]
街で素敵な男性に出会い、たとえ彼がゲイのカップルの1人であったとしても、”あなたとの子供が欲しいの!”と告白する…しかも、直接的な性行為はしないで、スポイトって…
なんというシチュエーションの設定だろう…仮に自分自身が知らない女性からいきなりこんなことを云われたら、ヒくよなぁ…すぐにどこかに逃げそうだ…
でも、本作に登場する人間は皆どこか不器用な生き方をしている。不器用だからこそ相手の気持ちに応えようとする。もちろん反対する人間もいる。多様な意見を持った人達がいるからこそ、時にはぶつかり合いながら、共に生きていこうとする。ダイバーシティが謳われるようになる前から、本作を手掛けた橋口亮輔監督は、自身がゲイであることをカミングアウトしながら、こういった作品を作ってきた。寡作な方ではありますが、実におもしろく、素晴らしい作品を作り続けています。
個人的な見どころとしては、終盤でのメインの出演者達が直也のリビングに集うシーン。皆に言いたいことを云われ続け、今か今かと朝子が爆発するんじゃないかと盛り上がっていくので、観ていてワクワクしましたね。
あとは、最後のオチも好きですね。一件落着かと思ったら、今度もはそっちも!?なんて思わせて本作は終わっていく。実におもしろいヒューマンコメディドラマだと感じて、この年の個人的な年間ベストにした次第です
あ、2016年に公開された橋口監督の最新作『恋人たち』でテアトル梅田での舞台挨拶に伺ったんですが、サイン会で『ハッシュ!』の頃からのファンであることを告げると「え、おいくつですか?」と訊かれました…あぁ、そんなことを尋ねられるぐらいには映画を観続けてきたんだなぁ、と感慨深くなりました…