息子看護師になることを反対される
永住権も取れたことだし、カナダの大学に永住者として進学できる。
Secondaryでは毎日のように、Careerの授業がある。自分の興味関心や適性だとかを分析将来設計をしていくという、なかなか面白い科目だ。
母から電話がかかってきたので、息子が看護師を目指していることを伝えたら、
「だめ、それだけはやめて!看護師にいいイメージない」
と真っ向から反対された。
それは、我が家に伝わる、
「看護師、地位が低い。
看護師、頭が悪い。
看護師、常識ない。
看護師、下の世話。」
の固定観念からだ。
そうはいっても、私も私の妹も看護師であり、いとこの二人も看護師である。母の二人の叔母も看護師であった。看護師である自分の娘に向かって「頭が悪い」とは失礼極まりないが、母から私の時代は、看護師といえば大学に行けない学力の人や家が貧乏で子供を大学にやる経済力のない家庭出身の人が多かったのは事実だ。一部の国立大学の看護学校を除けば、昔は中程度の学力があれば看護師になれたし、公立の看護学校の学費は安く奨学金も充実していた。
中卒で入れる准看護師の学校もあったから高校に行かずに看護師になるというルートもあったため、余計勉強ができないというイメージがあったらしい。看護師は教養がない・・・これはよく言われる。でも、それは仕方がないのだ。専門学校の3年間で知識を詰め込まれ(120単位もあった)、実習と実習の間には休みがない。大学に進学し青春を謳歌している友人たちとはかけ離れた世界だ。看護学校は究極のスパルタ教育なので、本など読む暇もなければ、夜勤明け休日はぐったりして何か意義があることをやろうという気もおきない。医者には怒鳴られ、先輩は怖い。夜勤では1万6千歩歩いた。そんな生活だもの、教養など身につくはずがない。ブルーカラーなのだ。
ところが、実際に看護師になってみると、仕事の内容は准看護師だろうが、大学院卒だろうが全く同じだ。学歴によって給与体系に格差はあるが、学校で勉強してくることはほとんど同じ。むしろ、看護専門学校よりも大学の方が専門教育に関しては手ぬるさを感じた。(自分が新人や学生指導をした経験から)
看護師は女性が多いから、やっぱり地位が低いというのは否めない。
給与も全般的に低いし、カスハラ、モラハラ、セクハラの宝庫。
年配の男性患者の中には、
「おい」と呼んできたり、お手伝いさん扱いをしてくる人が多かった。
で、実際のところカナダではどうなの?
と、同僚に聞いてみた。
すると、カナダでは看護師は尊敬される職業の一つだという。
医師、弁護士、消防士、看護師、警察官が尊敬される職業として挙げられた。コロナ後は看護師への尊敬が特に上がったという。
そうなのか。
職業に貴賎はないはずだが、やはり技術や知識があって体を張って人命を救うという職業が尊敬されるのであろう。
私が考える看護師という職業のメリットは、安定、比較的高給、潰しが効く、日常生活で役に立つ。これに尽きる。
息子もこの点を鑑みて、看護師になりたいと考えているようだ。
いつでも仕事にありつけて、食いっぱぐれない仕事はなかなかないだろう。特に、ワーホリなどで海外に行ったら帰国後再就職に困るが看護師だったら問題ない。さらに、カナダで看護師免許を持っていれば、旧大英帝国圏で看護師として働くことができるだろう。グローバル社会においては、超便利である。これが、医師や他の医療専門職だと国を跨いでの免許移行は簡単ではない。
日常生活で役に立つ、というのは、病気や薬の知識があるからカナダのように簡単に病院を受診できなかったり薬を処方してもらえない国でサバイバルするのに助かるのだ。
さらに、経験が重視されるカナダにおいて、卒後正職員としてすぐに就職できるのは大メリットだ。苦労して名門大学を卒業してもアルバイトだなんて・・・リスクがありすぎる。知人の娘さんは、大学在学中からStudent Nurseとして循環器病棟で働いているという。これは、勉強できてお金ももらえる一石二鳥じゃないか!
というわけで、息子は「カナダでの安定、ピックアップトラックを買う、カナダの田舎でのんびり暮らす」を目標に粛々と日々暮らしているのであった。