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入院手術とアロマ

人生で初めての入院と手術。
病室の居心地がどんなものか全く分からなかったのだが、入院中はせめてもの華を用意しておきたいと思った。殺風景で殺伐とした部屋は苦手なので、不安は潰しておきたかった。

ということで、厳選した渾身の香りグッズを持ち込むことにした。選ばれしグッズは以下。

  1. アロマオイル5種類

  2. バラの香りのハンドジェル

  3. 香らせるためのアロマシール

  4. 香らせるためのアロマウッド(置型・カード型)

※なお、アロマオイルは厳密には「精油(=エッセンシャルオイル)」を使用しているが、分かりやすいよう「アロマオイル」と表記を統一する。


(1)選抜を勝ち抜いたアロマオイル5種類

私は35種ほどのアロマオイルを所持している。2つのポーチに分けて保管している。入院グッズのパッキングでてんやわんやだった私は、ポーチまるごとカバンに突っ込もうとした。いやいや待て、それもいいけど、ここは厳選してこそ入院中においてのアロマの有り難みをより感じることができるのではないか?いったん手を止めて、真剣に選ぶことにした。

さて、何を基準に選ぼうか。

真っ先に思い浮かんだのは、アロマセラピーの教科書という書籍に習うことだった。ありがたいことに今の状況にぴったりな“入院中のアロマ”のページがあった。そこで書かれていた内容を読みながら、自分なりに思いついた使い道として採用できそうだった内容が以下。

  • 時間意識を取り入れる(せん妄予防)

  • 術前の緊張緩和のため

  • 室内の抗菌、抗ウイルスのため

  • 足浴、手浴でリフレッシュ

使い道が大体想像できたら、次はアロマオイルの種類をどうするかだ。
使い道で一番ピンと来ていたのは、時間意識だ。

入院にあたっての説明で、使い慣れた時計を持ち込むことを勧められた。これは“せん妄”を防ぐためだ。昼夜が分からなくなったり、夜眠れないといったことがある、せん妄。昼夜の判別に取り入れるにはもってこいの使い道といえば、認知症予防アロマだ。鳥取大学の研究で、朝はレモンとローズマリー、夜はラベンダーとオレンジスイートのアロマオイルをブレンドして嗅ぐことで、昼間の脳活性化と夜の睡眠の質向上に繋がることが分かっている。この考え方をぜひ採用しよう。

これでアロマオイル4種は決まりだ。
だが少し物足りない気もした。誰かが作った説明書通りに習うだけでは少し味気ないなと、今の自分が一番好きなバーベナを1本追加することにした。

《決定した持ち込むアロマオイル5種》

  1. レモン

  2. ローズマリー

  3. ラベンダー

  4. オレンジスイート

  5. バーベナ

※持ち込んだアロマオイルをどのように使ったかの実践については、(3)に続く。

(2)バラの香りのハンドジェル

病棟の至るところにアルコール消毒液は置いてあるだろうと予測していたが、自分でも何らかの除菌グッズを一つくらい用意しておこうと思った。除菌の作業すらも楽しいものにしておきたかった。

ここでちょうどいい具合に思い出したグッズが、ハンドジェルだ。
茨城フラワーパークに訪れた際、ものすごく好みの香り立ちをしていて”ひと嗅ぎ惚れ”したハンドジェルを購入していた。

茨城フラワーパークのハンドジェル(ダマスクローズの香り)

商品名は『ジェル状ハンドローション ダマスクローズの香り』。これが大正解だった。ジェルというとろみのあるテクスチャがもともと好きだったこともあり、寝るか食べるか、痛みで悶絶するかの入院生活では、良い香り(しかもダマスクローズ!)のジェルを手に揉み込む作業は、自分をとても労ってあげているような気がした。その時間はとても有意義だった。
ジェルを揉み込んだ後も、ほのかにダマスクローズの香りが手のひらからふと漂う。ただ、ほとんど自然に近いローズの香りではあるが、少しだけしつこいと感じたのは香料で濃さを調節しているのだろう。

(3)香らせるためのアロマシール

アロマオイル(左)とアロマシール(右)

まずは術前の体が動く元気なうちに、アロマオイルを垂らして使えるシールにローズマリーを垂らして使用。この時、ローズマリーが選ばれた理由は、ハーバルなスッキリ感が心地よかったから。他の柑橘系は甘くて気分ではなく、ラベンダーとバーベナはお花特有の濃い香りが気分とリンクしなかった。

明日が手術ということもあり、かなり緊張していたのだろう。手術を控えた1週間ほど前からは、日々のやることに頭を巡らせ肩は強張り、ずっと頭痛がしていたのだ。

ラベンダーにはリラックス効果があるというが、不安からくるモヤモヤを抱えた状態ではあまり受け付けず、手術をする事実をスッキリと受け入れたくて、スースー感もあるローズマリーが鼻に合ったのかもしれない。

ベッドの枕元あたりにシールを貼付

シールは枕元のシーツに貼付した。たまにふわっと香るのが心地よかった。香りを認知して少し心が軽くなるのは、思考の渦にハマってしまう前に、良い香りが少しずつ沼からすくい上げていくような感覚だった。

術後から2日後くらいは、しばらくアロマには気が向かなかった。
単純にベッドから動けないのと、立てるようになっても、棚にしまっていたアロマをわざわざ取りに行く体力が湧かなかった。この時には、ベッドサイドのテーブルに置いていたハンドジェル1本で気分を満たしていた。

術後のアロマ気力が湧いたのは、看護士さんから「そろそろ動いて回復させましょうね」と言われるようになってからだった。何かしなくてはと、アロマに手を伸ばす。

選ばれたのはラベンダーだった。
元気になれるような気がしたのと、嗅ぎなれた匂いでリラックスした。手術も終わり、ひとつの不安が拭い去られたあとのラベンダーはとっても気持ちよかった。この時にはもう、多少の濃い匂いでも体は大丈夫だった。それならバーベナでも良かったのだが、普段使いしていたラベンダーのほうが、日常を感じられて気持ちが落ち着いた。バーベナは特別な時に使うイメージだった。これはあくまでも今の個人的なイメージ。

これもアロマシールに垂らして使った。シーツに貼ろうとしたが、洗濯屋さんが気づかずはがし忘れたら大変だと思い、たまに開いて読んでいた入院のしおりの表紙に貼った。これもなかなか良くて、しおりを読むたびに良い方に気分が触れた。

入院のしおりにアロマシールを貼付

(4)香らせるためのアロマウッド(置型・カード型)

アロマディフューザーとして持ち込んだのは、ウッドグッズ。病室に木のぬくもりがあると癒やされそうという単純な理由である。しかしこれらは出番なしだった。シンプルに置き場に迷った。

ベッドサイドのテーブルは、体温計やら、ちょっとしたら書類、痛み止めの薬等がてんこもりで、これ以上置物が増えると思考も増えて疲れそうだったのだ。
個室のため応接セットがあったのだが、そこには置型時計を既に配置しており、これ以上何かを増やすのは気が進まなかった。それに応接セットのテーブルに置いたとて、ベッドまで香りは届かなさそうだった。電源不要の垂らすだけのアロマウッドは、香る範囲が狭いこともメリットであるが、今回に限っては使用には至らなかった。
ただ、この入院では知人から差し入れをたくさんいただき、知人の激励が詰まったオブジェやタオルも色々置いていた。入院中の優先順位として脱落したが、普段使いといしてのアロマウッドグッズはこれからも活躍する見込みだ。


こうして入院アロマ記を書き起こしてみて思うが、色々と考えて準備したのだなぁ。自分自身のための入院アロマであるが、これをもしも他者に施す際には、やはり基礎知識を持っておくことが大事だと感じた。

入院を控えたお友達に、普段は薔薇の香りを好んでいるからといって、アロマ界では濃厚な香りとされるローズのアロマオイルを原液でボンッと渡しても、相手は困ってしまう可能性もある。
入院中は絶食したり傷が痛んだり、それに伴って気持ちも乱高下する。そんな時には無難な種類のアロマオイルが一番重宝するのかもしれない。無難とは、香りが軽めのもの、禁忌がないものを指す。

アロマを学ぶ真髄とは、こういう状況に活きるものなのかもしれない。

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