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祖父


「最初はグー」を初めてわたしに
教えてくれたのは、祖父だった。

初孫のわたしを誰よりも可愛がってくれて、
誰よりも遊んでくれた。


わたしのいちばん遠い記憶、たしか3歳頃。

いつも一緒にお風呂に入って、
白いタオルを湯船に浮かべてクラゲを作ってくれたのを、よく覚えている。
古い団地、風呂場のコンクリート壁に少しカビが生えていて、その独特の匂いが好きだった。
お風呂上がりには、アンパンマンのアイスキャンディーをくれた。

数年前まで、3歳のわたしが祖父に抱かれてアイスキャンディーを食べている写真が、
キッチンの窓ガラスに貼られていた。
いつの間にかなくなってしまっていたけど、
わたしはあの写真が大好きだった。

写真のことをふと思い出すだけで、
幼かった頃の記憶全てに繋がった。
庭の小さな畑で採れたイチゴを食べたことも、
ダイニングテーブルの下で、犬と猫と一緒におままごとをしたことも、
祖父の部屋にあった古いテレビも。

我ながら、
本当に愛おしい幼少期だったな、と思う。


わたしが今、言葉遊びが好きな理由に、
もしかしたら祖父が関わっているかもしれないな、と先日思った。

というのも、
祖父は昔からダジャレが大好きなのである。

物心つく前から、祖父のダジャレで笑うのはわたしだけだった。
母も祖母も「またくだらないこと言って」というような感じだったけれど、それでもわたしだけは、祖父がふざけるたびに、一緒に笑っていた。

ダジャレは今でも続いていて、
その度にわたしは嬉しくなる。

たしかに大人になったわたしを、
当たり前のように誰もが大人扱いするなかで、
祖父のおふざけだけは、わたしを孫として可愛がってくれている気がした。


祖父は、優しくて愉快な人だけど、
直接伝えるのは少し照れくさいので、
ここに祖父への言葉を書いて、終わろうと思う。


いつか本当に伝えられなくなってしまうその前に、ちゃんと直接言えたらいいなと思います。
わたしのおじいちゃんでいてくれてありがとう。
いつまでも元気でいてね。
そろそろ、ちゃんと入れ歯を買ってください。

歯がないなんて、ハナシにならないからね!


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