intro.
大切なことを忘れないように、と思う時によぎる言葉がある。
「忘れてしまうようなことは、忘れてもいいことだよ。」
本当にそうでしょうか、と、その瞬間言えなかったわたしを未だに抱きしめてあげることしかできないまま、なんとなく生きている。
善悪や損得、優劣や貧富。
そういった類のものから遠く離れた場所にこそ、忘れてしまうほど些細な、それでも忘れたくないと思うほど大切なことがあるはずで。
わたしが生きているこの家で起こる些細なことも、忘れたくなくて。
だから、言葉や音に触れて残す今の生活を、大切にしている。
誰かの何かの始まりになれたらいいな、といつも思っている。
わたしの言葉が、音が、心が、誰かの始まりになれば、と。
そこには貪欲や私怨などなくて、むしろ「終わり」にだってなり得ることも分かっている。仮にわたしがそのつもりでなかったとしても。
誰でもよくない誰かのノイズでありたい、とも同時に思っている。
わたしの言葉が、音が、心が、誰かのノイズであれば、と。
そこには貪欲や私怨があって、だからこそ良くも悪くも「ノイズ」として存在できてしまうだろうな、と自惚れている。
仮にあなたがそのつもりでなかったとしても。
そうやってわたしとあなたの世界に少しずつ言葉が、音が、色が増えて、いつか忘れてしまうような物事が増えて、混ざって、本当に忘れてしまっても、大丈夫です。
その時は、あなたのイントロでありノイズであるわたしを思い出してみてください。静かに耳を澄ませても聞こえないような、些細なわたしを。
忘れてしまうほど些細な一日が、素敵なイントロから始まったなら。
思い出せないほど些細なことを、良いノイズとして残せたなら。
こうして言葉を、音を、ほかの誰でもないわたしが紡ぎ続ける限り、
わたしはここにいて、もう忘れかけていたあなたを思い出して、また残します。
「誰かを説得するでも 認めさせたい訳でもなく」
「ただこれは僕の唄だよ 僕を好きな君の唄だよ」