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天秤

どうやら彼女は甘やかされたいらしくて、きっとその自覚は本人にもあるような気がしていて、だからこそわたしは何も言えなかったんだけど。
「そうじゃないんだよねえ。」という彼女に、どんな顔をして、どんな声色で、わたしは接していたのか、忘れられないほどに初めての感情だった。

そうじゃない、ってなんだろう。
なんだったら、そうなんだろう。


第三者にとっての彼女と、わたしにとっての彼女とでは見え方が違っていたはずなのに、どうやらわたしも「第三者」になってしまったような気がして、なんだかそれはつまり、わたしが彼女への通過儀礼を行うことにつながりそうな気がしていて。

今この話をわかりやすく具体的に言葉にできないのは、しないのは、わたしなりの葛藤であり彼女への敬意なんだろうな、と思う。

彼女の周りを取り巻く環境が、突然変わってしまったように見えている。変わってしまったというより、なんとなく彼女自身が変えたようにも見えている。
自由を愛するわたしなら彼女の気持ちがよくわかるはずなのに、今彼女が愛している、溺れている自由は、どこか薄黒く渦巻いていて、かつ輝き過ぎている。

それもまた彼女なんだよな、と受け入れようとしているわたしと、いやいやちょっと度が過ぎてるんじゃないの、と言いたいわたしがいて。でも、いやいやちょっと、とわたしから水を差すのはそれこそ「そうじゃない」んだと思うから。

だから、これを読み終えたら、わたしに声をかけてください。
あなたの自由を赦したいわたしからの、望みともいえる、お願いです。


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