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Robert Caldwell が語るシガーメイキングにまつわる興味深い話

日課である、葉巻に関する情報収集をYoutubeで漁っていた時に、中々面白いポッドキャストがあったので、ご紹介します。

葉巻愛好家の必需品であるBoveda(ボベダ)。そのBovedaのタバコ部門の顔であるRob Ganger(ロブ・ガーニェ)氏がホストを務め、絶大な人気を誇るBox Pressシリーズ。葉巻業界に携わる人を招いて、葉巻のことやパーソナルな部分についてもフォーカスを当てていくポッドキャストです。

そんなBox Pressに、Caldwell CigarのファウンダーであるRobert Caldwell(ロバート・コールドウェル)氏がゲストで登場しました。
彼の好きな旅行先の話から、目からウロコが落ちる葉巻にまつわる話まで、内容盛りだくさんの回でした。

ここで簡単に、 Robert Caldwellについて説明します。

https://www.cigarjournal.comより抜粋

Robert Caldwell

若いうちから葉巻に目覚め、レストラン、バー、ホテルなどに葉巻を販売するコンサルティング業を経験時、自身でブレンドを作ってみたいという想いからCaldwell Cigarを設立。ドミニカ共和国のTabacalera Ventura(タバカレラベンチュラ)工場とタッグを組み、Long Live The King, The King is Dead, Eastern Standard, Blind Man's Bluffといった人気銘柄を数多くリリース。また、Caldwellブランドの立ち上げと同じ時期に、Tony Bellatto(トニー・ベラット)率いるLa Barba Cigar(ラ・バルバ)とのタッグで、工場に眠れるビンテージタバコを使ってブレンドを作るプロジェクト Lost & Found(ロストアンドファウンド)も立ち上げる。

さて、どんな目からウロコ話が待っているのか、早速見ていきましょう!


リコリスのすゝめ

以下内容。33:58あたりから。

[Rob] 君は業界で唯一の男だと思うんだ。ブラックリコリスのストークがあるって。あ、ブラックリコリスのストークを見つけなきゃ!ここにあるのかな?
[Caldwell] キッチンに少しあるよ。
[Rob] マット、それをキャッチしないと。実際、私はUnboxed Liveでシガーとキャンディのペアリングエピソードをやったんだ。そして君が送ってくれたんだ。
[Caldwell] うまくいったんだろ?
[Rob] うまくいったよ。でも君はかなりこだわっていたな。私はAmazonで注文して、「ねえ、ロバート、これが手に入るやつだよ」と言ったら、君は「ああ、それらは全部砂糖だな」と言った。本当に深く掘り下げるなら、純粋なリコリスエキスが欲しいんだ。それ以外はいらないんだ。
[Caldwell] なぜなら、それが砂糖だったら、それはただのくそだよ。キャンディなんだ。そして、多くの場合、アニスやクローブやミントを入れるんだ。だけどそれだと風味が台無しになってしまうんだ。強化するどころか。
[Rob] それで、どんなシガーでも、キャンディを口に入れて、それから吸って、「ああ、それはいいな」あるいは「うわ、それはダメだな」と思うの?
[Caldwell] いいえ、どんなシガーにでも効果はある。ただ、軽いシガーには向いている。マイルドからミディアムボディのシガーだ。
[Rob] それが秘訣だ。
[Caldwell] そうだよ。フルボディのシガーには同じ効果はない。
[Rob] それは強さが競合しているからだと思うのか?
[Caldwell] リコリスは実際には君が味わっている天然の風味を増幅させる効果があるんだけど、それはマイルドからミディアムボディのシガーに対しては効果的だ。フルボディのシガーには同じ効果はないと思う。それらはすでに豊かな風味で、同じような増強効果はない。それほど豊かにはしない。
[Rob] 今、君は知っている。誰かがこの種類のリコリスを手に入れることができる場所はどこだろう?それはハードキャンディみたいなものだ。 [Caldwell] イタリアだ。
[Rob] でもオンラインで。
[Caldwell] 全然わからない。
[Rob] だから実際にはイタリアに行って手に入れるんだね。
[Caldwell]イタリアにいるときに買うんだよ。今度買っておくね。

1 Thing You Don't Know About Cigar Making Feat. Robert Caldwell | Miami Box Press Ep. 71

リコリスというと、北欧の世界一まずいグミを想像する方も多いと思います。筆者もその一人です。。
天然の甘味料でありながら、フレーバーが足りないマイルドからミディアムボディの葉巻のエンハンス的な役割も果たすとは、まさに目からウロコです。

Amazonなどで売っていないのかというRobの発言に対して、わからないと答えているあたり、日本でピュアなリコリスのエキスを手に入れることはできるんでしょうか。。手に入ったら、別途記事を書いてみます。

熟成プロセスのマル秘テク

以下内容。36:26あたりから

[Rob] 葉巻を作る工程において、人々が知らないことで、知ったら「わぁ」となるようなことは何かありますか?今まで誰も言ったことがない様な。
[Caldwell] そうだな、シガーを作った後、熟成室に入れるんだ。熟成室は必ずしも多くの湿度を持っているわけじゃないんだ。状況によるよ。湿度は高くなることもあれば低くなることもある。ただし、カビの問題が起こる可能性があるくらいの湿度は保っている。だからカビの発生を防ぐ必要があるんだ。だから棚にシガーを置く木材に処理をしないといけない。それに使うのは何か酸性のものなんだよね。
[Rob] 化学物質?
[Caldwell] それは解釈次第だね。酸性のもので木材を処理して、それがなんらかの風味をシガーに与えることができるのはどうだろう?
[Rob] レモンやライム?
[Caldwell] ワイン。
[Rob] ワイン!?
[Caldwell] これもまたみんなが秘密だと思っていることの一つなんだけど、多くの人たちはワインを希釈して使っていて、カビの発生からくる影響を抑えるためにワインとレモンジュースの希釈液を使用していると思うんだ。でもみんな、「ここで見たことを誰にも見せないで」と言うんだよね。私は、「うん、みんなそうやってるよ」と囁くんだ。それが必ずしもワインではないかもしれないけれど、同じ概念のいくつかのバリエーションがあるんだ。なぜなら、化学薬品は使えないから。シガーはそれを吸収してしまうからね。でもこれは興味深いことだ。だって、ある工場ではすべてのブレンドが似ているんだよ。なぜ?タバコではない。タバコは違う。それは熟成プロセスなんだ。彼らはその熟成室から少しだけ何かを吸収しているの。
[Rob] 同じく、一部の企業は、タバコを発酵させる際に、風味を高めるためにやや糖分の多い液体をスプレーすることを明言しています。それを「トッピング」と呼びますね。一般的ですか?
[Caldwell] それは比較的一般的だと思います。様々な段階で多くのことが行われると思います。
[Rob] タバコがトッピングされているのを見たことがありますか? [Caldwell] いいえ
[Rob] 本当に?

葉巻業界で行われている事を知らない人がいたら、確実にびっくりする内容ですね…😂
中南米は葉巻を寝かせるのにはうってつけの環境だから、特別何もしなくても大丈夫なんじゃないかなと思ってましたが、どうやら違ったようです。
湿度のムラがあり、なんなら若干過加湿気味。過加湿はエイジングのスピードが早くなるとは聞いたことはあるのですが、過加湿はカビの温床なので、それを対処するのに何か酸性のものをシダーに塗布するというのも初耳でした。

キューバの葉巻には酸性の果物のジュースを塗布しているなんて噂話を聞いたことがありますが、あながち間違いじゃないのかもですね。火がないところに煙は立たないとはまさに。明かされていない葉巻業界あるあるは衝撃的過ぎます。

そして、この話にはまだ続きがあります。

濃い色なのには秘密がある

以下内容。38:35あたりから。

[Caldwell] でも加熱処理や、タバコを煮沸したり蒸したりするのは見たことがあります。
[Rob] 煮沸する!?
[Caldwell] それは非常に一般的。
[Rob] タバコをお湯で煮る。それで、何が起こるの?
[Caldwell] ラッパーの色を均一で濃くするんだ。だから、その色のタバコがあって、それを本当に濃くしたいなら、それを煮沸するか蒸すんだよ。でも多くの人々が煮沸するか、蒸すんだよ。
[Rob] それは良いことなのか、悪いことなのか?私にとって、熟成プロセスを加熱して早めるなら…
[Caldwell] もし純粋主義者なら、おそらく良くないと思うよ。でも実際には、それほど大きな影響はないと思う。また、時々シガーを作って熟成が必要なのに、熟成させる時間がないので、それを焼いてしまうこともあるんです。
[Rob] 何を使って?
[Caldwell] 熱、乾燥した熱を使うんだ。チャンバーで乾燥した熱を作り出すんだ。
[Rob] それが熟成を助けるのですね。
[Caldwell] アンモニアの風味が抜けるのを早めます。新鮮なシガーから出るアンモニアの風味が失われるのを加速させるんです。
[Rob] だから、シガーを巻いたら、おおよそ7日目から酸っぱくなり始め、30日目くらいまで苦くなります。その後は、タバコがなじんできた感じになります。アンモニアが放出され、油分と糖分がどうやって作用するかが分かって落ち着いてきます。だから、熱を加えると、それが早くなるということですか?
[Caldwell] でもそれが認識できるの。時々シガーを見て、「ああ、こんなに濃い色だ。シガーはそこまで濃くならない。もちろん、超黒いタバコもあるけど、それはその色ではないよね。
[Rob] メキシカン・サン・アンドレスは超黒くない。あれは超黒い。
[Caldwell] それは濃い色だ。でも本当に濃い色のタバコもあるんだよ、ブラジリアンのラッパーの中には本当に濃い色のものもある。これはありえないくらいの色だよね、自然のままではそうはならない。だから何かが起こったってことだ。それが風味に影響しているとは限らないかもしれないけれど、影響があることはあると思う。ただ、そこまで濃くはならないんだ。

タバコ葉を茹でる…。確かに、Maduroなどの濃い色のラッパーを作る際は、蒸す工程だったり煮る工程があることはなんとなく聞いていました。
でも、実際には、本来持っている色味よりも、もっと強烈に黒くしたい時に使われる手法みたいですね。
メキシカンサンアンドレスネグロや、ブラジリアンマタフィナなんかは、ニューワールドシガーにおけるマデューロラッパーの代名詞的存在。元々濃い色であるものの、品質の一貫性の観点から、やはり茹でたり蒸したりするのは一般的な様です。味にさほど影響は出ないと言っていますが、これは是非吸い比べてみたいものですね。

さいごに

非常に興味深い内容でした。色んな工場を視察し、マスターブレンダーとして活動するCaldwellだからこそ聞ける話。
それだけではなく、インタビュワーとして、良い着眼点で興味深い内容を引き出せるRob Ganger、恐るべし。

Bovedaのタバコ部門では知らない人はいないと言っても過言ではないほど、業界内での認知度も造詣の深さもあるので、本当に優秀なインタビュワーだなぁと思っていた矢先…

Bovedaを離れて職を探しているだと…!?

残念…!でも、葉巻業界には残り続ける可能性を示唆しているので、二度と会えないというわけではなさそうで一安心です。
彼のこれからの動向に目が離せませんね。
ひとまず、お疲れ様でした。最高のコンテンツを生み出してくれて、本当にありがとう!

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