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中国で働くことになったわけー自己紹介をかねてー

中国で暮らし始めてはやくも3年が経とうとしている。もともとは日本の大学で働いていたので、まさに「思えば遠くに来たもんだ」である。

私は自分のことを話すのがそもそも得意ではないのだが、よくよく考えてみると「中国で中国文学を教える日本人」はあまり聞いたことがない。なので、これを機にこれまでの暮らしの振り返りができればいいかなと思い、noteを使ってみることにした。


🇨🇳中国で中国文学を教える日本人🇯🇵

私の今の属性を端的に示せば「中国で中国文学を教える日本人」となる。これが珍しいかどうかは「日本で日本文学を教える外国人」が一般的かどうかを考えるとわかりやすいかもしれない。もちろん、そういった教員もそれなりにはいるだろうが、その数は必ずしも多くはないと思う。

このことが話題になると中国でもかなりの割合で驚かれる。しかも、教えている内容が「中国古典文学(魏晋南北朝以前)」だということもあり、ほとんどの場合で「自分たちも文言文(中国語の古語)はよく読めないのに、それを中国人相手に教えるなんてすごいやん!」と、奇異と尊敬とが入り混じった眼差しを向けられる。

これは私が大学進学以降、学部・修士・博士と「中国古典文学」を専攻してきたからなだけだが、日本でもみんながみんな日本の「古文」が読めるとは限らないことを思えば、「古文」が読める外国人がいれば確かに驚くかもしれない。

なぜ中国で働くことに?

では、なぜ中国で働くことになったのかと言えば、「日本での職が見つからなかったから」である。私の業績が足らなかったと言えばそれまでだが、もともと自分の専門分野の「中国古典文学」は公募自体が少なく、応募の機会になかなか恵まれなかったのだ。

当時は中国語の教員をしていたのでそちらに応募することもできたが、「中国語学」をメインでしている研究者にはどうしても劣る部分があり、公募そのものに出せる機会が少なかった。

また、当時の職はいわゆる「任期付助教(5年)」で、任期が終われば次がみつかっていようとなかろうと辞めないといけない立場だった。年度が進むにつれて、就活がうまくいかない現状と任期が迫るプレッシャーでかなり神経がすり減らされた。任期が残り少なくなった年度初めの出勤日に、職場まで運転しながら動悸がしたのをまだ覚えている。

そんな状況の中、任期もそろそろ終わろうというタイミングで色々なご縁に恵まれ、いま働いている中国の大学からオファーを頂戴し、専門の「中国古典文学」で教える立場での職に就けたというところである。

中国で働くことへの葛藤

じゃあ、本場中国で「中国古典文学」の教育と研究ができることに最初から喜び100%だったのか。答えは「ノー」である。

むしろ日本での就職活動の辛さから逃げ出すといった気持ちが強かったこともあって、敗北感がそこそこ強かったのを覚えている。ここで「逃げ出す」という言葉を使ったのは、本来は「日本」で就職活動を続けて任期無しの職を得ることが私の中の本来的な目標だったことも大きく影響している。

なので、日本の就職活動に「敗れた」から中国で働くことになったという、ややマイナスな感情を抱いたままで中国の教壇に立ち始めることになった。もちろんこちらでの教育や研究活動を通じて、日本にいたままでは獲得できなかったであろうスキルや視野、研究上の視点なんかを手に入れることができたのは間違いない。

それでもやはり、最初の数年は(最近でもたまに)日本で職を見つけられなかったから、言わば「都落ち(実際にはそんなことはない)」のように中国に来ることになったんだと、悶々とすることも多かった。

折り合いをつけられた3年目

そんな感じでこちらでの教育と研究をスタートさせたが、中国に渡ったのが2022年3月(まだコロナ禍による渡航条件が厳しかった頃)なので、ようやく3年になろうかというくらいになる。なんとかやり切ることができたからというのもあるだろうが、最近になって少しずついまの状況を落ち着いて眺めることができるようになってきた。

最初の半年はコロナ禍のひどい時期、かつ入職したのがやや半端な時期(4月下旬)だったので授業担当などはなかったが、以降はコンスタントに授業担当、卒論指導、その他校務に携わってきたこともあり、ある程度は中国の大学の様子もわかってきたことも大きいように思う。

あとは今の所属先で自分の立ち位置のようなものが少しずつ固まってきたのも、いい方に作用したような気がする。自分の恩師が退職される時に「中にいること、いられること」とおっしゃっていたが、まさにその通りだなと思った。

たぶん100%吹っ切るというのは難しいだろうなと自覚しているが、それでもきっと前よりは前向きに捉えられるようになっていくんじゃないかと、少し期待している。

これから主にまとめてみたいこと

で、せっかくnoteとしてまとめて対外的に公開していくのだから、これからどんなことをまとめていきたいかを、ひとまずの予定として考えてみた。

まずはこれまでの中国での暮らしや、そこで気づいたことをいくつかまとめてみたいと思っている。授業での様子や学生との関わり(日本の大学生との違いなど)、あるいは教務関係なんかも日本とは違うなぁと思うことが多かったので紹介できればと思う。

ほかには、私自身の専門分野が主に「中国古典文学」なこともあるので、このあたりも紹介できることがあればいいなと思っている。ただ、これはそこまで専門的なことではなくて、雑感程度のものになるんじゃないかなと。

あとは中国に渡って以降、中国語をより学ばないといけないという必要があったこともあり、通訳や翻訳に興味が出てきた。最近は中国語音声+日本語字幕で中国産のゲームをやっていて、日本語の絶妙さに感動することが多い、というか学びがあるなと思うことが頻繁にあるので、こういった単純に面白いなと思ったことも共有したい。

あまり趣味と言えるものはないが、こういったことを自分の中で整理アウトプットしていく中で、その興味の幅がもっと広がってくれればいいなとひそかに期待している。

そして、せっかくなので世界にはこんなふうに働いている人もいるんだと、少しでも知ってもらえると、それはそれで嬉しく思う。

#大学教員 #海外の大学 #中国生活

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