"コネセンコ"「兵器開発編」の魅力 ~ PCとPLの乖離、"主体的"と"合理的"の背反 ~
"コネセンコ"シリーズとは?:
ゲーム実況グループ「○○の主役は我々だ!」様により制作された動画シリーズの1つ。
「偉大なる指導者"コネセンコ"のもとに彼の思想に賛同した者たち(すなわち"コネセンコ主義者")が集い、団結して様々な難題に取り組んでいく」……というのは表向きの姿。
実際はその内部に"反コネセンコ主義者"が数名存在しており、
・"コネセンコ主義者"は各課題のクリア(およびそれを円滑にするための裏切り者の発見)
・"反コネセンコ主義者"は各課題の失敗(シリーズ次第ではコネセンコの殺害が可能なPCが居る)
(・また、自身が生き残ることそのものを目的とする陣営も存在する)
を目指し、お互いの腹を探り合いつつ殺し合いつつ、といった要は内ゲバ系心理戦トークゲームである。
雰囲気としてはTRPGシステムのパラノイアに近いのではなかろうか。
本題:「兵器開発編」について
シリーズごとにちょっとずつルールが変わっており、今回は最新シリーズ「兵器開発編」について語る。
https://youtu.be/hlqYmX6droA
こちらが「兵器開発編」の1話目である。
本記事にはめちゃくちゃにネタバレが含まれるので出来れば通して一度見ていただきたい。
できれば2回見てほしい。
それぞれが腹の内を隠しつつ振る舞う様を推理しつつ視聴する1回目、
全部わかった上で「なるほどね」としたり顔をしつつ視聴する2回目である。
「兵器開発編」の何が面白いのか?
兵器開発編の特に面白い部分は、参加者(以下PL)の選択→結果のプロセスにある。
簡単に流れを記載すると以下の通りになる。
【1.選出】
コネセンコ(GM役)が開発担当キャラクター(以下PC)を3人選出する。
それぞれのPCを操るプレイヤー(以下PL)はその回の兵器開発について「全力を出す」「ごまかす」かをPL間で話し合ってそれぞれ決める。
【2.開発】
選択が揃わなければ開発は失敗。
選択が揃ったうえで、
・その兵器が"開発可能兵器"ならば「全力を出す」「ごまかす」どちらの選択であっても成功。
・その兵器が"開発不可能兵器"ならば「ごまかす」選択をした場合のみ成功。
【3.告発】
結果を見た後、開発担当として選出されたPLは"告発"を行うことができる。
他のPLの選択を予想して宣言し、見事に的中すればそのPCを処刑することができる。
一方で外れた場合は自身のPCが処刑される。
「2.開発」の部分に注目いただきたい。
開発成功の条件は
・3人で選択を一致させること
・「全力を出す」で一致させた場合、さらに対象の兵器が"開発可能兵器"であること
(担当の兵器がどちらであるかは当然PLは知らない)
の2つを満たす必要がある。
つまり、
せっかく3人が「全力を出す」と一致しても、それが"開発不可能兵器"があれば開発は失敗してしまう。
ならば"開発の成功"を勝利条件とする"コネセンコ主義者"はみんなで口裏を合わせて「ごまかす」を選び続けた方が勝利できる確率が高くなる。
一方で、"開発の失敗"を勝利条件とする"反コネセンコ主義者"は「全力を出す」選択をしたうえで、その兵器が"開発不可能兵器"である可能性にかけるのが現実的だろう。
(と言っても、メタ的には全部が全部"開発不可能"ではなかろうし、どこかで裏腹な選択を取って足並みを乱してやる必要はある。
「毒ガス開発」回のチーノ氏は命を賭してそれに成功した形となる)
……というのはPLの話である。
しかし。
それぞれ肩書を持った、コネセンコの賛同者である(として振舞っている)キャラクターたちにとってはそうではない。
そもそも偉大なるコネセンコから課せられた一大プロジェクトを「ごまかす」なんて選択肢は存在しないのだ――コネセンコに逆らう裏切り者でもなければ。
逆に、"反コネセンコ主義者"にとっては、唾棄すべきコネセンコから押し付けられた厄介事に「全力を出す」なんて、あまつさえそれで開発を成功させてしまうなんて選択肢はまずあり得ないのである。
ここにおいてPLとPCの意識は乖離する。
PLが勝利を目指す最適解と、PCとして正しい振る舞いが異なっているために。
その矛盾をいかに取り繕いつつ、口八丁と運とで上手いこと勝利条件に近づいていくか。
この点に"コネセンコ"「兵器開発編」の魅力を見ている。
これだけでも十分面白いが、物語にさらに深みを加えるのが"一般人"の存在だ。
単独陣営たる彼は自身の生存こそが目的であり、開発成否とかぶっちゃけどうでもいい。
しかし妙な疑いをかけられて殺されるのは絶対に避けたい。
疑い処刑すべき対象とは、この状況においては"反コネセンコ主義者"に他ならない。
つまり"一般人"は、できるだけ目立たぬように息を潜め――いざ矢面に立たされれば、誰よりも熱心な"コネセンコ主義者"として振舞うのであろう。
(恐らく「音撃砲」回はそのために失敗した。
真っ先に「全力を出す」と主張したエーミール氏が一般人枠だったのではないかと個人的には予測している)
総括
"周囲はすべて自分を陥れる敵だと疑い"ながら、"時にPCとしてふさわしくない選択を取り繕い"、"話術を駆使して生き残る"。
"コネセンコ"「兵器開発編」とは要はそんなゲームだ。
自身すら欺くような高度な心理戦は面白いに決まっている。
ということで、みんなコネセンコ見てください……そんなに長い動画でもないので……何卒……
――
以下、超蛇足。
ゲームとして見た場合、現状、コネセンコ主義者の勝利条件がやや厳しすぎる気がするので
「開発2回成功」もしくは「反コネセンコ主義者の全滅」とかの方がいいのでは……? などと感じていました。
(「兵器開発編」では後者が達成されたのでエピローグはコネセンコ失脚→再起ルートっぽい雰囲気で描かれたのかなとは思います)
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