https://note.com/cieletmer_clair/n/nc490850e6b94
これらの続きです。
7.獄中からの手紙(著:ローザ・ルクセンブルク、編訳:大島かおり、みすず書房)
獄中からの手紙【新装版】 | ゾフィー・リープクネヒトへ | みすず書房 (msz.co.jp)
ローザはポーランド生まれの革命家。スパルタクス団を母体にドイツ共産党を立て、指導的な立場にあったが、11月革命に続く1月蜂起の際に反革命義勇団により殺された。本書は、そのローザが年下の友人であるゾフィー・リープクネヒトに獄中から送った手紙を集めたものである。ゾフィー・リープクネヒトは、スパルタクス団→ドイツ共産党においてローザと同じく指導的立場にあった同志カール・リープクネヒトの妻。
マルクス主義者としての顔をのぞかせることもあるが、政治犯として捕えられている身であるからだろう、政治的なトーンは控え目で、数々の書簡に充満しているのは、年下の友人を気遣う心配り、植物や鳥など自然界に対する驚きと感動に満ちたまなざし、詩や音楽といった芸術への関心と感受性。そして何よりも、人間への、存在するものへの、世界へのまじりけのない愛と肯定。暗い時代にあって、希望を失わない楽天の意志。
私が一等好きな一節を、多少長くはなるが引用する。あらゆるものへの惜しみのない愛と、美しい楽天が表現されている。
8.レクイエム(著:アンナ・アフマートヴァ、編訳:木下晴世、群像社)
レクイエム (gunzosha.com)
世界への愛や希望の意志を語る文学もあれば、苦難を語り、受難の者たちに捧げられるものもある。「銀の時代」を代表する詩人、アンナ・アフマートヴァの代表作と目される『レクイエム』は後者に属する作品だ。自身も、夫と息子が収容所に送られた詩人が、「大粛清」に巻き込まれた者に差し入れすべくレニングラードの獄舎の前に列をなす妻や母に捧げるレクイエムである。
愛する者を不当に奪う力を「すっかり書く」ことにより、言葉は、祈りとともに慰藉を与え、時を超えて告発し続ける。詩人が響かせるのは、妻であり母である当事者として抱える個人的な愛と悲しみであると同時に、言葉に見出された者が背負う民族の嘆きである。