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【アフリカ・ジブチの日々】ラマダン明けのお祝いにイスラム教徒の女の子が楽しみにしていることは?

ジブチ共和国に行ったのは、今から20年前。

アフリカ大陸で、肌の色の違う人たちがいて、イスラム教で、世界一暑い国で、現地の人はソマリア語とアファル語を話すけど公用語はフランス語とアラビア語で…知らない事ばかりだった。

これは着いてから半年経った頃のこと。
結構いろいろなことを知ったつもりだったのに、まだわたし達の距離がとても遠いことに気付いた日のこと。

その日はラマダン(イスラム教徒の断食月)のお祝いで、わたしは親しくなったHIBOという女の子のうちに招待された。

HIBOと20年前のわたし

イスラム教のことはよく知らなかったけれど、友達になった人の宗教だ。
尊重したい。
失礼なことのないようにしよう、とちょっと気負って行った。

畳に土足で上がるようなことはないように。
お箸を食べ物に突き刺すようなことはしないように。

その日はわたしも断食していた。相手の文化をできるだけ尊重したい。

お母様。

HIBOの家に着いたら、彼女と妹たちがウキウキしている。
お祝いなのだ。いつもより良い服を着て、夕方からはご馳走を食べる。
夕食まで何時間もある昼間から招待されたということは、何か儀式があるのだろうか。
お祈りを一緒にしたりするのだろうか。
イスラムの伝統行事とはなんだろう。

興味津々。
異文化体験を味わう気満々のわたしに、HIBOは言ったのだ。

「今日はお祝いだから、一緒にマイケル・ジャクソンのビデオを見ましょう!ビデオデッキを借りてあるのよ!」って。

あらららら~。
わたしたちの意識に、まだ数千キロの距離があることを思い知った。
「断食までしてマイケル?」って。

だって、考えもしていなかったから。
イスラム教徒の女の子が、お祝いの日に見たいものがマイケル・ジャクソンだなんて。
イスラム教徒はイスラム教徒らしいところを見せてくれると勝手に思っていた。

イスラム教徒だからキリスト教徒だからこうあるはずって、決めつけ過ぎだ。
お正月に日本人がみんな百人一首をするわけではない。
アイドルのコンサートビデオを見る若者がいても「お正月だし、好きな物を見たいよね」って普通のことだと思う。

なのに、相手がイスラム教徒だと宗教行事をすると決めつけて、予想と違うとびっくりしてしまう。
「わたしの意識は、まだ日本から出ていなかったんだなあ」と力の抜けた笑いが起こった(心の中で)。

そして「これはこれですごい経験だ」と思い直し、一緒に座ったり寝転がってしながら、キャーキャー盛り上がってマイケルのビデオを見た。

今考えると、わたしはその日、実際のところ願いを叶えていた。

HIBOはわたしを家に招待し、家族を紹介してくれた。
とっておきのビデオを一緒に見て、おしゃべりして、笑って、写真を撮って、ご家族はお祝いのご馳走をふるまってくれた。
なんて楽しい時間だっただろうか。
「訪問者を思いきり歓待する」というイスラムの伝統を、その日のわたしはしっかり体験させてもらっていたのだ。

ワーマハッサンタハイ、
シュクラン、HIBO。




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