
『バーニング・アイス』
2019年・中国
製作総指揮:韓三平(ハン・サンピン)
演出:呂行(ルー・シン)
脚本:馬偽八(マー・ウェイバー)
原作:紫金陳(ズ・ジンチェン)
出演:秦昊(チン・ハオ)、鄧家佳(ドン・ジアジア)、代旭(ダイ・シュー)、姚櫓(ヤオ・ルー)
初めての中国ドラマです。
主演のチン・ハオはロウ・イエ監督の映画でよく観ていますが、ドラマにも出演しているんですね。
あらすじ等はこちらの公式サイトでどうぞ。
基本的にノワール系は好きなので、Netflixで本作を見つけて飛びつきました。
序盤はちょっとトントン行き過ぎじゃない?って思いかけました。
冒頭で起きた事件についての厳良(イェンリャン、チン・ハオ)の推理も現場を少し見てパパッとやっちゃうし、その事件の被害者の愛人だったために面倒なことに巻き込まれた朱慧茹(ジュー・フイルー、ドン・ジアジア)を助けようとした郭羽(グオ・ユー、ダイ・シュー)がとった行動も、いかにもクズ然としたチンピラに交渉の仲介を頼むだなんて、もう絶対まずい方向へ行くに決まってるじゃん、わざとなの?って……
けれども、たとえ序盤にトントン行っちゃったとしても、本作は事件の謎を解いていく類の作品じゃなく、むしろ色々わかってからがおもしろいというような作品だから別にいいんですよね。いかにも“ノワール”な感じです。(ノワールの正確な定義はよくわからないのですが)
一見実直そうなグオ・ユーは、最初からなんとなーくの違和感を視聴者に与えていて、ダイ・シューの演技は絶妙だなと思いました。親切そうにフイルーに近づいて行くのですが、なんとなーく嫌な感じなんですよね。フイルーの兄、朱福来(ジュー・フーライ)は彼を毛嫌いしています。最初はなんでそこまで嫌うのかな、と思っていましたが、見て行くうちに、なるほどな、と思って来ます。
先に書いたグオ・ユーの行動は作者的にはもちろんわざとですけど、そうでなくてグオ・ユーが作品世界の中でわざとやってるんじゃないか、と若干疑ってしまうくらい、振る舞いに違和感があるんです。でもまあ、そうするメリットは別にないので、これは単なる印象に過ぎませんが。
話もおもしろかったですが、建物もよかった。石造りのレトロモダンな建物が多く、特に警察署の捜査課?の部屋というかスペースがなんかよかったなあ。日本や韓国のドラマによくある警察署の中とは全然違ったおもしろい作りで。
ところで、グオ・ユーを見ていて思い出したのがルネ・クレマン監督『太陽がいっぱい』のアラン・ドロン。一見すると好青年だけど裏で危ういことをやっていて、徐々に破滅へと向かって行く…… まあグオ・ユーはトム・リプリーほど自信満々な感じではないですけれども。
本作では変わり者の刑事を演じたチン・ハオもロウ・イエ監督の『二重生活』では危うい方向へ行ってしまう役を演じていますね。これもおもしろい作品です。(どうやって撮ったんだろう、と思うようなシーンがあったりもする)
あ、そうそう、最後に、エンディングの曲もいいですね。悲しく重々しい感じで作品に合っています。