MIKUEC2021に行ってきたよ #日々音楽雑記
こんにちは、Luです。普段はボカロPとして活動しています。
今回は先週末に電気通信大学で行われたボカロファンメイドライブ「MIKUEC2021」の千秋楽の紹介と感想です。後日詳細なライブレポートをあげる予定ですが、フレッシュな感想もお伝えできるよう、印象に残った部分やライブを観ながら考えていたことを中心に雑記という形で短く書き留めておくことにしました。
MIKUECって何?ボカロファンメイドライブとは?
楽曲やイラスト、歌ってみた、踊ってみた等様々な二次創作が展開されているボーカロイドですが、近年ライブイベントを主催する有志団体が現れ始めました。マジカルミライやMIKUEXPOのようにキャラクターの映像を投影し楽曲を流すというスタイルを基本に、ボカロファンが集まって自分たちで運営・開催しているライブのことの総称として「ファンメイドライブ」という言葉が使われています。
MIKUECは電気通信大学バーチャルライブ研究会が2017年から開催しているボカロファンメイドライブ。オリジナルテーマソングを制作したり、コロナ禍ではオンライン開催のために配布するソフトウェアから自前で開発したりと毎公演進化が止まらないイベントです。まずは2019年の様子をみていただきましょう。
ちなみに読み方は「みくえっく」(ココ重要!)。来場された方でもよく「みく いーしー」と読み間違えているのですが、MIKUと電気通信大学の略称"UEC“をつなげているので切れ目はそこじゃありません!!(大声)
大幅アップデートされたステージとコンテンツ
MIKUEC2021は新型コロナウイルス感染拡大後初の対面開催ということで、実に2年ぶりに大学講堂に初音ミクが降り立ちました。コロナ禍での開催は試行錯誤のもと短時間の開催が多かったのですが、今回はその試行錯誤の成果とそれまでのリアルライブで培われたノウハウの蓄積が合わさって実を結び、公演時間1時間45分におよぶ充実したライブが行われました。
会場に入ってまず目を引いたのは大きなステージセットと機材席。透過スクリーンが以前の透明なシートを伸ばして張ったものから薄い透明シートに変わっていたり、ステージ横にバーを立てて歯車をモチーフにした装飾がされていたりと、本格的な舞台に期待が高まります。
今回はじめてステージ後ろにできた機材席にはたくさんのモニターやコントローラー、巨大なミキサーが並んでいました。画面にはMIKUEC2021の文字があるものも。一部ツールも自前で作っているのだろうかなどと考えながらあたりを見渡し開演を待ちます。
いざ公演がはじまってみると、舞台の変化以上にライブ内容の濃密さに驚かされます。マジカルミライをはじめ多くのライブにおいてメインの透過スクリーンにはキャラクターだけを映し人間のアーティストのライブに近い見た目にするのが定番になっていますが、5曲目の千本桜から3曲続けて透過スクリーンにも大胆に背景を映していました。曲ごとに大規模なセットを組み上げるように、千本桜では桜吹雪が舞い、フェンスとバリケードテープの前で劣等上等を踊り、遊郭の中で大江戸ジュリアナイトを歌います。また、上のスクリーンと下のスクリーンを合わせて一つの画面として映像が作られており、下のスクリーンにも歌詞を映したりキャラクターが上のスクリーンに移動して歌ったりと、情報量が多く変化に富んだ演出で観る人を飽きさせません。後半のKINGのGUMIが玉座ごと上のスクリーンに移動し、現れたポールですべり降りるシーンはあまりに予想外で思わず声が漏れました。
ライブ中盤で披露されたのはオリジナルのテーマソング、「シグネチア」。これが非常にライブ映えする曲でした。公演3週間前に公開された時は思ったよりも音数が少なくあっさりした印象だったのですが、会場で聴いてみると前後の曲と比べても音の良さが際立っていました。シンプルな構成も静かながら初音ミクの伸びやかな歌声がよく響き、歌詞を聴かせる良いアレンジになっています。まさにライブのために作られた楽曲で、あとから聴いた話では会場で曲を流しながらその場でマスタリングを行ったそうです。また、モーションキャプチャーで録ったと思われるモーションや綺麗なオリジナル衣装によって他の楽曲とは段違いの実在感があり、ビジュアル面でも最高の楽曲でした。
ファンメイドライブならではの良さが詰まった演出
ライブのクオリティの高さはもちろん注目すべきところですが、ファンメイドライブには他にも商業イベントとは違った良さがあります。
終演後、Twitter等で多くの人が触れていたのがセットリスト。全編21曲の中には多様な楽曲が選ばれていました。特に印象的だったのは10曲目のCITRUSから私の時間、KINGとつながっていくところ。まさかボーカロイド黎明期の名曲から最新曲までがこうして並ぶとは思いませんでした。(そして2021年にライブで私の時間を聴くことがあると誰が思ったでしょうか)また、IA&ONEと初音ミク、GUMIはそれぞれプロデュースしている会社が違うため各社が主催するイベントで共演することはありません。彼女たちが同じステージに立つことができるのもファンメイドだからこそなのです。
全体を通してみても「タイムトラベル」というテーマのもとにまとまった選曲がされています。前半の1925や千本桜など歴史をモチーフにした作品だけでなく、wowaka氏の裏表ラバーズやプロジェクトセカイへの提供曲であるステラ、セカイはまだ始まってすらいないといったボカロの歴史に刻まれた曲も意識して組み込まれているように思います。そして本編最後のタイムトラベルはまさにテーマに相応しい楽曲。作りかけのスカイツリーと2010年の文字を観ながらもう10年経ったのか……と思いつつMVで巨大なミクが持っていたピンセット(?)が映っているという芸の細かさに一人のボカロファンとして嬉しくなりました。歌詞や元のMVとリンクした表現は他にもたくさん細部に散りばめられています。制作者達自身が一番のファンでもあるからこそキャラクターや楽曲への愛がこもっていてファンが一番観たいライブを作ることができる、これがファンメイドライブ最大の魅力だと思います。
おわりに
MIKUEC2021は、充実した内容に大満足だったのはもちろんのこと、終始明るい気持ちで観ることができました。
まず、MIKUEC2019の頃からは世の中でのボカロの受け止められ方も大きく変わりました。当時はボカロといえばおじさん達の趣味になりつつあってニコニコ動画に思い入れのある人々の間にはやや悲観的な空気感があったように思います。それからこの2年で新しいヒット曲が生まれ、メジャーシーンに進出するボカロPが増え、プロジェクトセカイの躍進があり、ボカロは再び現役中高生が聴く文化に返り咲きました。きっとこんな状況でなければ、私の時間の「ニコニコ動画がなくなった~その時私はどうなるの~」なんてフレーズはとても受け止めきることができなかったんじゃないかと思います。
また、最近流行っている楽曲には陰鬱で厭世的ものも多いですが、今回のセットリストの後半では、「今は上手く行かなくてもちゃんと手を伸ばせば何かを変えていける」というメッセージが込められた明るい未来を予感させるような曲が多く選ばれていたように思います。そして、学生サークルでありながらこれだけの規模とクオリティのライブイベントを実現したという事自体が、そのメッセージを体現していたのではないでしょうか。観客として楽しみながら、自分も何か大きなものを作れるんじゃないかと思えるような、希望を感じさせてくれるライブでした。
最後に、ボカロファンメイドライブは増えてきているとはいえまだまだ発展途上の文化です。近くで開催される機会があれば足を運んでみてください。そして、興味を持った方がいればぜひライブ制作にも参加してみませんか。
バーチャルライブ研究会の皆様、素晴らしいライブをありがとうございました!!!
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